ブードゥー。日本では馴染みのない言葉だが、「丑の刻参り」といえば察しがつくだろうか。つまり、相手に呪いをかける秘密裏の儀式である。 イルコモンズという人類学者兼活動家の名を初めて耳にしたのは、1年半ほど前の「怒りの日日」というパフォーマンスだった。改造ならぬ悪造した管楽器で安倍首相に呪いをかけようとする演奏は、政治的な活動、アクティビズムの枠を超え、アートの領域に達していた。3・11から5年目を向える今、デモ以下、テロ未満という反戦反核のブードゥー・アクティビズムの真相を確かめるべく本人の元を訪ねた。 各地の大学で非常勤講師を務めるイルコモンズ氏だが、近い将来起こるであろう首都直下型地震から身を守るべく、西東京の僻地、武蔵陵墓地に引っ越したそうだ。彼いわく、昭和天皇のお墓が安全なら自分も安全だろうと。