インダストリアル・ミュージック史観によるノイズ・ミュージック史 「どこにいようと、聞こえてくるのはほとんどノイズだ」とケージが言ったように、あらゆる音を〈音楽〉とみなすならば、裏返せば、あらゆる音楽もまた〈音〉である。本書のタイトルが「ノイズ/ミュージック」であることに表わされているように、本書はそもそも対立概念であるとみなされてきた両者が、これまでの歴史的、社会的、思想的背景によっていかなる関係を結んできたかを論じたものであり、また現代の音楽文化の中のノイズを要素とした音楽の意味、それらがもたらした意味を考察したものである。 1967年生まれのへガティは、ちょうど本書の中心に位置する第七章〈インダストリアル〉を同時代的に体験した世代にちがいない。そこを起点として、ノイズと音楽の邂逅、ノイズの起源へと遡行し、ルッソロの〈騒音芸術〉、ケージの“4分33秒”を端緒としながら、さらに記録再生メデ