「アメリカにいると着眼点が自分とは違うと思うことが多い」 デビュー30年を《Blue Note》移籍第一弾作で飾るミシェル・ンデゲオチェロの“be”である強さ 今年2023年はミシェル・ンデゲオチェロがアルバム『Plantation Lullabies』でデビューしてちょうど30年にあたる。キャリアの前半はマドンナのレーベル《Marverick》から、近年はフランスの《Naïve》からコンスタントにアルバムをリリースしてきた彼女だが、節目の年となる今年、とうとう《Blue Note》から新作のアナウンスがもたらされことは大ニュースの一つだったと言ってもいいだろう。いや、ローリング・ストーンズ、チャカ・カーン、プリンス、ハービー・ハンコック……数々のビッグネームと共演を重ね、グラミー賞に10度もノミネートされてきた実績を鑑みるに、彼女のそのハイブリッドでしなやかな音楽性をもってすればむしろ《
向かって左から、今回取材に応じてくれたとペリン・モス(ドラムス)とサイモン・マーヴィン(キーボード)のふたり。つづいて右がネイ・パーム(ヴォーカル)とポール・ベンダー(ベース)。 オーストラリアのメルボルンから飛び出したハイエイタス・カイヨーテ。2011年に結成された彼らは、ネイ・パーム(ヴォーカル、ギター)、ポール・ベンダー(ベース)、サイモン・マーヴィン(キーボード)、ペリン・モス(ドラムス)という個性的で優れた才能を持つミュージシャンからなる4人組バンドで、2012年のデビュー・アルバム『Tawk Tomahawk』以降、つねにエネルギッシュな話題を振りまいてきた。デビュー当時はネオ・ソウルやR&Bの文脈からスポットが当てられ、フューチャー・ソウル・バンドといった形容が為されてきた彼らだが、その音楽的な振り幅は我々の予想の斜め上を行くもので、ジャズやヒップホップ、ファンクなどからオペ
Text by Yoshiaki “onnyk” Kinno 金野 “onnyk” 吉晃 NoBusiness Records NBCD 102 Midori Takada 高田みどり (marimba, perc) Kang Tae Hwan 姜泰煥 (as) Masahiko Satoh 佐藤允彦 (p) 1. Prophecy of Nue 2. Manifestation 3. Incantation Recorded live on the 27th May, 1995 at Design Plaza Hofu, Yamaguchi, Japan by Takeo Suetomi / Concert produced by Takeo Suetomi Mastered by Arūnas Zujus at MAMAstudios Photos by Akihiro Matsu
text & photo by Kazue Yokoi 横井一江 『姜泰煥+高田みどり/永遠の刹那 Kang Tae-Hwan+Midori Takata/An Eternal Moment』(NoBusiness Records)がリリースされた。1995年の姜泰煥と高田みどりとのデュオのライヴ録音である。今年4月来日時に姜泰煥の演奏を観ているだけに、90年代半ばの彼の姿を懐かしく思い起こしながら聴いた。 姜泰煥の初来日は1985年の「トーキョー・ミーティング」、サムルノリの金徳洙が渡韓した近藤等則に姜泰煥を推したことでこの来日が実現した。今世紀に入ってからの韓流ブームを考えると信じられないことかもしれないが、80年代に入るまでは韓国の音楽事情についてはほとんど知られておらず、また隣国でありながらもジャズを通した交流はなかった。1988年開催のソウル・オリンピックを招致し、1987年に
1960年代のジョン・コルトレーン、1970年代のファラオ・サンダースと、ジャズ・サックスの巨星たちの系譜を受け継ぐカマシ・ワシントン。もはや21世紀の最重要サックス奏者へと上り詰めた感のあるカマシは、2015年の『The Epic』で我々の前に鮮烈な印象を残し、2018年の『Heaven and Earth』で今後も朽ちることのない金字塔を打ち立てた。しかし、『Heaven and Earth』以降はしばらく作品が止まってしまう。もちろん音楽活動はおこなっていて、2020年にミシェル・オバマのドキュメンタリー映画『Becoming』のサントラを担当し、ロバート・グラスパー、テラス・マーティン、ナインス・ワンダーと組んだプロジェクトのディナー・パーティーで2枚のアルバムを作り、2021年にはメタリカのカヴァー・プロジェクトであるメタリカ・ブラックリストに参加して “My Friend of
躍動する肉体を通して己の精神を表現する強靭な〈ダンス・アルバム〉――ジャズをプログレッシヴに革新してきたカリスマが、豪華なゲスト陣を招聘した恐れ知らずの新作で見据える新たな地平とは? 強いリズムに包まれるような 21世紀のもっとも重要なジャズ・サックス奏者のひとりであるカマシ・ワシントン。2018年の『Heaven And Earth』以降は、ミシェル・オバマの伝記映画「Becoming」のサントラや、ロバート・グラスパーやテラス・マーティンらとのディナー・パーティーで2枚のアルバムを手掛け、そして6年ぶりのニュー・アルバム『Fearless Movement』と共に帰ってきた。サンダーキャット、テラス・マーティン、ブランドン・コールマンら旧知の仲間に加え、アウトキャストのアンドレ3000、BJ・ザ・シカゴ・キッド、Dスモーク、コースト・コントラのタジとラス・オースティンなど、ヒップホップ
カマシ・ワシントンの最新アルバム『Fearless Movement』は、これまでの延長線上にありつつ、明らかに趣が異なる作品でもある。愛する娘が生まれ、彼女と暮らす中で感じたことがインスピレーションになっていたり、概念としての「ダンスミュージック」をテーマにしていたりするのもそうだし、過去の作品にあったスケールの大きさやフィクション的な世界観とは違い、現実(≒生活)に根を下ろした視点から生まれた等身大で身近に感じられるサウンドになったようにも感じられる。 たとえば、これまでは壮大な世界観をクワイアやオーケストラと共に表現していたが、今回はほぼ自身のレギュラー・バンドで構成しており、外から加わっているのはほとんどがボーカリストやラッパーだ(カマシはこれまで、声にまつわる表現はバンドメンバーのパトリス・クィンに任せていた)。ここでは様々な声がそれぞれのメッセージを語っているのだが、その言葉か
米ヴァージニア州リッチモンドを拠点とする、ブッチャー・ブラウン(Butcher Brown)という5人組がいる。ヒップホップ/ネオソウル以降のジャズ系バンドである彼らは、サウンドの質感への徹底的なこだわりに加えて、そのインスピレーション源やカバー曲の選曲センスも高く評価されてきた。 アナログ機材やテープでの録音は当たり前。まるでマッドリブがバンドを結成したかのように敢えて音質を落としたり、ノイズ交じりで録音したり、ジャズ系のバンドはまずやらない手法を駆使している。そのこだわりからレコードだけでなく、カセットテープでのリリースをずいぶん前から行なっていた。 さらに彼らは、トム・ブラウン「Funkin' For Jamaica」、デヴィッド・アクセルロッド「Holy Thursday 」、ボブ・ジェイムス「Nautilus」、ワンネス・オブ・ジュジュ「African Rhythms」、タリカ・
text by Yoshiaki ONNYK Kinno 金野ONNYK吉晃 NoBusiness Records NBCD 135 Masayuki JoJo Takayanagi – guitar Nobuyoshi Ino – bass Masabumi PUU Kikuchi – piano 1. Trio III 18:04 2. Duo I (Takayanagi – Ino) 15:21 3. Duo II (Takayanagi – Ino) 11:53 4. Trio I 20:57 5. Trio II 11:10 Track 1,4 & 5 improvised and composed by M.Takayanagi, N.Ino and M.Kikuchi / Track 2 & 3 improvised and composed by M.Takayana
text by Yoshiaki ONNYK Kinno 金野Onnyk吉晃 photos: from Onnyk’s private collection(「ナムジュン・パイク展」の図版目録より)*口絵は、おそらくブレッツマンのデザインによるナムジュン・パイク展のポスター(’63) 「ブレない男の想い出」追悼 ペーター・ブレッツマン(享年82) 二十歳の私は「フリージャズとフリーミュージック」の差異さえわからず、彷徨していた。前衛、実験、ラディカル、即興、過激というのは同義に近かった。ヘンリー・カウもシュトックハウゼンも一緒くたになっていた。 当時はまだ「壁」によって分断されていた西ベルリンに拠点を置くFMP (Free Music Production)は、1969年に創設され、マイナーシーンの代表的レーベルだった。私はペーター・ブレッツマンはその創始者の一人、かつ欧州を代表するミュー
突然過ぎて意味がわからなかった。ギタリスト・笹久保伸が3月11日、Xにてジャズ評論家の柳樂光隆氏を名指しで批判し始めたのである。いわば音楽家から評論家へのカウンターだ。 ミーハーで口だけのクソみたいなやつに褒められても喜ぶフリをしないといけないんだから音楽家の人生も大変だよ。 若い人々は評価を無視して作品を作った方がいい。 近年自分の歩みの中で何か恥じることがあるとしたら、それは評論家・柳樂光隆みたいな中身のない人間に『良い』とか書かれたこと。 pic.twitter.com/2wvFFEJEPX — SHIN SASAKUBO (@shinsasakubo) March 11, 2024 私個人としては、柳樂氏が監修する『Jazz The New Chapter4』でディスクレビューを担当させてもらったし、主宰した『ネオホットクラブ13』にもゲスト出演してもらった。好意でインタビューさせ
text by Kazue Yokoi 横井一江 hitorri 964 John Butcher (tenor/soprano saxophones, feedback tenor on # 4) 1. Shimmers of Connect i 2. Shimmers of Connect ii 3. Shimmers of Connect iii 4. Sympathetic Magic (concrete) 5. Elusive Sidestep 6. Signs and Symptoms 7. Far Flung 8. Summer Incantation 9. Very Hush-Hush 10. Laval 11. On Springs Recorded in the Brønshøj Water Tower, Copenhagen, Denmark, June 17, 2
text by Kazue Yokoi 横井一江 Nomart Editions NOMART-126 sara (.es) (piano, percussion) 大友良英 Otomo Yoshihide (guitar) 磯端伸一 Shin’ichi Isohata (guitar) HUMANKIND #1 Otomo Yoshihide& Shin’ichi Isohata HUMANKIND #2 sara (.es)& Otomo Yoshihide HUMANKIND #3 sara (.es), Otomo Yoshihide, Shin’ichi Isohata Recorded live at Gallery Nomart in Osaka on 30 June 2023 during group exhibition HUMANKIND ギャラリーノマルのグル
当店の中古レコードの一部を担当している置石が「バビバビ」言うからやっとで入荷させました!そりゃ、ESP-DISK'からリリースのミルフォード・グレイヴスの名盤「PERCUSSION ENSEMBLE」なんてずーーーっと売ってるし、好き過ぎてミルフォードのTシャツを作ってもらって(手描きで2枚も)着ていた時期もあったりで、再発されたのは知っていたのですが、はてさてフリージャズの真髄(バビ)を今どんな感じで再プレゼンしようかと考えていたら。。。ということで「バビ」、やっぱエグいです! 誰かがSNS上で「今ガバが必要だ!ガバをくれ!」みたいなこと書いてましたが、言い換えできそうなのが、これ「今バビが必要だ!バビらせろ!」ではなかろうかと。。。血湧き肉踊るとは正に「バビる」ことだと思います。メタ(aka メタメタ)人間の証明! 同じくアーサー・ドイル/ヒュー・グローヴァーとのトリオで1969年に録
90年代に端を発する音楽ジャンルの無効化 ここ15年、音楽のカテゴリーについて、 細分化しすぎて逆に統合されていっている 少し離れていた存在として認識されていたものがくっつく 全然違う方向性のものが結果同じような形態になる という現象があるように見える。 もはやジャズじゃないかというポストロックとその逆パターン、ヘヴィメタルのようなテクノ…書き出し始めるとキリが無い。 別に全く問題ないし、その分、複雑なパターンで音楽を楽しめてむしろ歓迎している。 あえて言えばリスナーとしては売り場障壁があって探すのが大変ってことくらい。 それでそうした境界線のグレーゾーンにいる音楽は一時期はジャズが引き受けたり、クラブミュージックが引き受けたりって感じだった。今は大きく看板をあげてジャズが引き受けている時代。 そうした流れの中で、日本のミュージシャンたちも含めて大きく影響を与えている人物について今一度再考
ミシェル・ンデゲオチェロ(Meshell Ndegeocello)の『The Ominichord Real Book』は2023年を代表するアルバムになったのと同時に、長いキャリアの中で数多くの傑作を発表してきたミシェルにとっての新たな代表作にもなった。 ジャズの名門ブルーノートからリリースされた同作には数多くのジャズミュージシャンが参加し、素晴らしい演奏を聴かせている。だが、このアルバムの凄さはそれだけではない。ミシェルはここに収められた曲に様々な文脈を込めている。それは曲名や歌詞、サウンドに様々な形で埋め込まれている。宇宙観や死生観を含めて、ミシェルの哲学のようなものが詰まっているとも言えそうなくらい壮大なものだ。 近年、両親を亡くしたことをきっかけにミシェルはアフリカ系アメリカ人としての自身と祖先への思いを強めていた。そんな思考を、彼女は音楽による壮大な物語の制作に向かわせた。そし
“演歌の女王”八代亜紀によるジャズのアルバムが完成した。プロデュースおよびアレンジを手がけたのは小西康陽。この意外な組み合わせで制作された「夜のアルバム」には、これまでの双方の作品にはなかった独特のムードが流れている。 相思相愛とも言える見事なコンビネーションを見せた2人。この対談では、レコーディング時の貴重なエピソードから、八代のキュートな一面が垣間見える裏話まで、たっぷりと語り合ってもらった。 取材・文 / 松永良平(リズム&ペンシル) 撮影 / 佐藤類 「例えば八代亜紀さんみたいな」が現実に ──「八代亜紀さんが小西康陽さんのプロデュースでジャズアルバムをリリースする!」。そのニュースにはリスナーとして僕も驚きましたけど、まず最初にこの企画が出てきた時点でのご本人同士が一番驚かれたと思うんです。 八代亜紀 ジャズっていうのは10代の頃クラブで歌っていた私にとって、歌手としての原点なん
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