南部陽一郎先生は、1921年に東京でお生まれになり、2歳のとき関東大震災で壊滅した東京から父の吉郎氏の故郷である福井市に移り、17歳まで過ごされました。福井市立進放小(現・松本小)、旧制福井中学(現・藤島高)、旧制一高を経て、1942年東京帝国大学の理学部物理学科を卒業されました。卒業後直ちに陸軍に召集されレーダー研究所などに配属された後、終戦を経て、1946年からは東大理学部物理学科の嘱託、助手を務められました。1949年には、新設の大阪市立大学へ移られ、1952年に米国プリンストン高等研究所の研究員として渡米されました。1956年からはシカゴ大学に奉職され、1970年に米国国籍を取得されています。 南部先生は、その温厚で謙虚なお人柄で良く知られていますが、世界中の物理学者から尊敬されている一番の理由は、誰にも真似することのできない南部先生独自の理論的アイデアの数々です。相対論的場の量子