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昔、ソフトウェア開発のベテランの方に質問したことがある。 「どうしたら優れた開発者になれるのでしょうか?」 予想していた回答は「この本を読め」とか「あれを学べ」と言ったものだったのだけど、実際の回答は全然違っていた。 「自分の作業を箇条書きで表現出来るようになることだ」 これだけでは腑に落ちないので、その理由を聞いてみたところ、こんな説明が返ってきた。自分がやるべき範囲がどこまでなのか、何が必須項目の作業であり、何が見送り可能な項目なのか、作業に必要なものは何なのか等々を全て考えば、簡潔に箇条書きで表現できるはずだ。箇条書きで表現できないのなら、それは自分がやるべき事を自分自身で分かっていないことの証拠に他ならない。開発者は実際の作業の中でアレコレと疑問を持つはずなのに、それを確認しないまま勝手に作業を進めてしまい、後で予期せぬ問題を引き起こすことが多い。本当の開発者なら、その確認、検証、
<< 「セミIT」と選択肢の話 >> 「ねえ、そうすると、情報技術がいま説明してくれたようなものなら、利用者はもうデータの事は気にかけなくてもいいわけね?」 --とんでもない。その逆さ。 もちろん、データの事は気にかけずともITを利用する事はできる。たとえば女子高生の携帯メールみたいにね。一対一の情報糸電話だったらそれでも結構。 でもね、もしも情報技術をもっと上の次元で、うまく利用したければ、自分の情報をいかに機械の扱いやすい定型化した形式に持ち込めるか、が鍵となるわけだ。そしてまた、データから意味のある情報をくみ取るスキルがもう一つの鍵となる。 人間は情報をデータの形にして機械に処理させ、機械のもつデータから情報を取り出す。このサイクルをうまくつくることこそ、IT利用の最大の勘どころなんだ。 「なんだかまだ話が抽象的でよく分からないわね。“自分の情報をいかに機械の扱いやすい定型化した形式
その日、私は駐在先企業のキャンティーンで、一人で昼食をたべていた。何年か前のことだ。回りにはボソボソと、聞き取りにくいフランス語の響きが満ちている。その中にふと英語の音が聞こえたので、つい耳を傾けてしまった。鋭角な英語の音は、仏語の靄の中を通り抜けてくる。ちょうど穏やかな満ち潮の入江に磯が屹立するように。話の雰囲気からすると、一人は英国人、もう一人は米国人らしい。お互いは知りあいではなく、たまたま出張先のこのフランス企業で顔を合わせたにすぎないようだった。 「近頃は、出張の待遇がきつくなったよな。忙しい日程で、疲れるよ。」 そう一方が言えば、他方も同調する。 「ああ。まったくこの頃のボスときたら、二言目には、Bottom line, bottom line, だ。金のことばかりで、技術のことは二の次だ。」 「うちもだよ。昔はこんなじゃなかったのにな・・。」 エンジニア同士の話は、どこの国で
言葉の通じぬ、見知らぬ土地でタクシーに乗った。こちらの告げた目的地を、運転手は分かったんだか分からないんだか曖昧な態度のまま、車を発進させる。しばらく乗ったところでやはり不安になり、「もう半分くらいは進んだのかな?」と口にしてみる。すると、隣に乗っていた若い後輩が気楽そうに答えた。「もう、2/3くらいまで来ていますよ。」「なんでわかるの?」「だって、メーター見てください。空港からだいたい30ユーロくらいって、言われたじゃないですか。もう20ユーロ分、走ってますもん。」 進捗を把握するのは、簡単なように見えて、案外むずかしい。それは、私たちが『進捗とは何か』を、本当には良く理解していないからだ--こう言ったら驚かれるだろうか。無論、このタクシーの例のように、目的地に向かっているかどうか分からないときに、メーターだけ見て進捗を測るのが無意味な事は、誰でも分かるだろう。では、次の例はどうだろうか
金辰吉氏と言えば、ソニー中村研究所専務、ソニー・グローバル生産革新部門長を歴任されたのち、独立して、現在は㈱ワークセルコンサルティング代表取締役を務められる著名な論客である。また、'90年代における日本企業復活の原動力となった『セル生産方式』の命名者としても、よく知られている。その金氏が、先日の日本経営工学会春季大会で「日本メーカの生き残る途」と題した特別講演をされ、とても興味深い内容だったので、ここにその聞き書きを記しておきたい。 金氏とは以前、経営工学会の特別委員会で何度か同席させていただいたこともあるが、きわめて率直かつユーモアあふれる物言いをされる方だという印象がある。むろん、ここに記すことは私自身が聴衆として書きとったメモの内容であって、金氏の本来の発表原稿や主張と差違があるとしたら、その責は私にある。 金氏の講演は、何枚かの新聞の切り抜きから始まった。まずは直近の経済新聞から、
コストダウンが会社をダメにする 本間峰一著 副題は「スループットで全体最適」。著者は、みずほ総合研究所(株)の主席コンサルタントである。金融系のシンクタンクだが、主に中堅企業の経営改善分野を得意としている。 「企業が生き残るためには徹底的なコストダウンに邁進するしかない」というのが、今日の日本企業における主要なテーゼである。そのためには、経費節減・給与カット・外注化・海外調達・海外生産等をどんどん進めるべし、さもなければ企業は不況のどん底で赤字にあえぐしかないだろう--そんな合意が産業界で成立しているかのようだ。 ところが、経営の指示の下、会社ぐるみでコストダウンに邁進した結果、儲かるどころかかえって減益になってしまう例が少なくない、と著者は言う。なにも、無理なコストダウンのための製品偽装、などといった違法行為の話ではない。適法な範囲で努力に励んだ結果、かえって業績が落ちてしまうのである。
トラブル事例からのLessons & Learnsを蓄積しようとしても、技術系ナレッジは多く集まるがマネジメント系の知見が出てきにくいのはなぜか--私の質問に対して、R先生は話を続ける。 「トラブル事象が起きた。そこから何かの教訓を学ぼうとする。これ自体は健全なことだ。誰でも、どんな組織でも失敗は経験する。組織に知性があるとすれば、それは自分の経験から学ぼうとする態度だからな。ところが、君はここで勘違いをしている。たとえば、何か例を挙げて説明しようか。最近のよく知られた問題事象を挙げてみたまえ。」 --そうですね、たとえばメキシコ湾で発生した油田の事故はどうでしょう。日本ではあまり報道されていないようですが、深海から原油を掘り出す海上基地(リグ)が爆発して沈没、原油が流出している事故です。4月20日に事故が起きて以来、2週間ですでに100万リッター近い原油が海底から漏出したと言われています
『週刊ダイヤモンド』特別レポート ダイヤモンド編集部による取材レポートと編集部厳選の特別寄稿を掲載。『週刊ダイヤモンド』と連動した様々なテーマで、経済・世相の「いま」を掘り下げていきます。 バックナンバー一覧 ドラッカーは、マネジメントとは「企業をはじめとする個々の組織の使命にとどまることなく、1人ひとりの人間、コミュニティ、社会に関わるものであり、1人ひとりの位置づけ、役割、秩序に関わるものである」とした。“日本での分身”といわれた上田氏に、その要諦を聞いた。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁) 上田惇生(うえだ・あつお) 翻訳家/ドラッカー学会代表 1938年、埼玉県生まれ。翻訳家。ものつくり大学名誉教授。立命館大学客員教授。ドラッカー学会代表。渡米時代を経て慶應義塾大学卒業。長く経済団体連合会に勤務。ドラッカーから最も信頼された日本人で、主要作品すべての翻訳を手がける。
1月。誰もがおめでたい正月気分の残る中、マネージャーは多忙な仕事を始める。会社を出て、新年の得意先回りに出かけるのだ。本年もよろしくお願いします。昨年はお世話になり、とくに某の件ではいろいろご迷惑もおかけしましたが、今年は気を引き締めて進めますので、是非またよろしくお願いいたします。営業部員も同行するが、品質トラブルで嫌みを言われるのは技術屋の方だ。いずれにせよこの不況の中、一社でも顧客を逃したら今期の目標達成はあり得ない。もっとも訪問先の2人に1人は、業界の新年会に出かけていて不在だが。それでも名刺を置いてくるのが大事な仕事だ。 2月。昨年から続いていた仕事が製作段階に入って火を吹いた。基本設計にミスがあったのだ。誰が設計書をチェックしたんだ! と叫びたい声をぐっと飲み込む。後ろ向きのことを言っても仕方がない。部下の責任はいずれ自分の責任だ。とにかく人を追加する算段を考えなければならない
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