「いかなる接触も前向きな効果があるか事前に考える必要がある。実際の効果を必ず考えなければならない」—。 ボルネオ島の北側に位置する王国・ブルネイで6月29日~7月2日まで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)をめぐる一連の会議で、中国の外相・王毅は日本人記者団に何回かこう語った。岸田文雄外相との接触の可能性を聞かれての答えだった。 結論から言うと、両外相は接触どころか、挨拶もしなかった。安倍晋三首相はそれに先立つ6月28日夜、「尖閣の問題で一定の条件を日本がのまなければ首脳会談をしないと(中国側は)言ってきている」と反発したが、中国政府は尖閣諸島をめぐる領土問題の存在や領有権「棚上げ」を認めない日本政府に対し、これらの柔軟化を首脳会談の条件としていたのだ。 「外相会談」準備を進めた外交当局 王毅はブルネイ出発前、ある日本の要人と会談し、こう語ったという。「もう日本側では会談はないことにな