フランスのパリにあるフラゴナール博物館に、「人体標本の最高傑作」といわれる《世紀末の騎士》が現存する――。 これは18世紀に解剖学者オノレ・フラゴナールによって作られた皮剥標本(エコルシェ)で、内臓剥き出しとなった人体が、剥き身の馬に跨がっているというもの。本物の死体の心臓部分から全身の血管に熱した蝋を注入して膨らませ、着色して仕上げたものなのである。 標本製作に飛び抜けた才能を発揮したオノレ・フラゴナール 18世紀、近代到来の象徴ともいうべきフランス革命(1789年)の時代――。オノレ・フラゴナールは、標本製作において飛び抜けた才能を発揮した人物である。 1732年にグラースで生まれたオノレ・フラゴナールは、有名なフランスの画家ジャン・オノレ・フラゴナールの従兄弟にあたり、解剖学の世界において、その芸術的な才能を大いに開花させたといえる。 当時、フランス王室はリヨンに世界最初の獣医学校を