2014-10-07 かえり道 道路にまっすぐに引かれた線の上を歩く。車道外側線と呼ぶらしいけども、わたしはただ白い線と呼んでいる。名前なんてどうでもいい。子どもの頃にも、よくこんな風にして歩いた。白い線は細い板でこの下は海なのだと想像しながら、うまく渡り終えたらきっとなにもかもうまくいくと思いながら。子どもはみんな無邪気で純粋だなんていうのはまるきり嘘っぱち、だってあの頃のわたしには悩みがたくさんあった。 お父さんとお兄ちゃんが喧嘩しませんように お母さんが泣きませんように 隣のお家のちかちゃんに明日は人形を取られませんように お風呂の壁に今夜はやもりがいませんように お弁当にほうれん草が入ってませんようにそれらが軽い悩みだと感じるのは既に大人だからで、小さな人が小さな心に抱えれば、それはたいへんな重さなのだった。 心は箱とおんなじで、たぶんあの頃のわたしはマッチ箱ぐらいだっ