産業革命以来、近代史の原動力となった石炭は、おびただしい言葉を燃やす素(もと)ともなってきた。 本著で取り上げられる770余の作品や文献は、一つ残らず赤黒く焼ける石炭より暗い熱を帯びている。 なぜなら石炭を掘り出す労苦はすさまじく、本書にある明治後半の福岡・三池炭鉱における作業員の平均寿命は、わずか25年。日本の炭鉱は他国より事故の死傷率が高く、民族、性別、出自等、あらゆる差別をエネルギーに変えて掘り進むしかない、社会の底辺にある場所だった。 著者はその歴史に適(かな)う30年以上の労苦をもって、叙述を尽くした大著にまとめた。 米・シンクレア作『石炭王』を1925年に社会主義者の思想家、堺利彦が訳した直後から、中野重治、平林たい子ら日本のプロレタリア作家は、石炭で走る鉄道に従事する労働者を描き始めている。 大戦期に現れた小山いと子の産業小説『オイルシェール』、暉峻(てるおか)義等編『炭礦作
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