網野善彦「日本の歴史をよみなおす」(ちくま学芸文庫)-1 後半は「続・日本の歴史をよみなおす」というタイトルで出版されたもの。ちくま学芸文庫版は二つの本の合本。「日本中世の民衆像」(岩波新書)から10年を経ての講義なので、前著の内容を覆す発言も含まれる。 日本の社会は農業社会か ・・・ 「日本中世の民衆像」(岩波新書)の主張のさらなる追及。これまでの歴史の見方は農本主義的。それは奈良時代のころからの政権が土地を税金のもととし、農をこの国の主要産業とする政策をとってきた(1300年間も)。その強い影響が江戸時代にあって、たとえば城下町と古い町以外には「町」の名は使えない。そのために、港湾都市や貿易都市はそれだけの規模をもっていても「村」と呼ばれた。百姓はもともとは「普通の人」くらいの意味だったが、「農家」とされてきた。でも古文書をみると、農以外の生業を持っている人が百姓とされていた。「頭振」