約150年前の東京はどんな町だったのか。歴史家の安藤優一郎さんは「大名屋敷は荒れ果て、東京は草原になった。地価は大暴落し、都心一等地は1坪200~300円ほどになった」という――。 ※本稿は、安藤優一郎『教科書には載っていない 維新直後の日本』(彩図社)の一部を再編集したものです。 明治維新で経済危機に陥った東京 明治天皇の東幸とうこうを受けて東京は天皇のお膝元に生まれ変わったが、太政官だじょうかんをはじめ政府機能が移されたばかりの東京は荒れ野原が目立った。人口が減り続けたことを背景に、極度の経済不況に陥っていたのである。 まったく活気がなく、放置されて荒れ果てた土地も多かった。そうした事実はほとんど知られていないだろう。 維新直後の東京の姿を後世に書き残した女性がいる。近代日本の女性解放運動のシンボルの一人として知られる山川菊栄である。菊栄の母は青山千世ちせといい、安政4年(1857)に