「動かないコンピュータ」は、日経コンピュータが長期にわたって連載し続けている看板コラムである。IT業界に従事する人であれば、日経コンピュータを購読していなくても、「動かないコンピュータ」という言葉は聞いたことがあるかもしれない。 「動かないコンピュータ」では社会的に影響の大きいシステムダウンや情報漏洩、システムの稼働延期やユーザーとITベンダー間の訴訟など、さまざまな種類のITトラブルを取り上げ、発生原因や経緯、顛末をレポートしている。内容は決して明るいとはいえない。それだけに、このコラムをネガティブなイメージで捉える読者も多いだろう。 筆者も約2年前に日経コンピュータ編集部に異動する以前は、「動かないコンピュータ」みたいなコラムだけはやりたくないなあ、と思っていた。理由は至って単純。取材申し込みから、取材中、記事執筆、雑誌発行後と、どの過程を想像しても何か“重さ”ばかりがつきまとう気がし
岡崎市立中央図書館のコンピューターシステムに問題があり、自作プログラムでアクセスした男性がサイバー攻撃をしたと誤解されて逮捕され、起訴猶予になった問題で、この男性が岡崎市長と同図書館長に対し、市が岡崎署に出した被害届を取り下げるよう、市民団体を通じて書面で正式に申し入れたことがわかった。 市民団体は、同図書館を核とする交流プラザ「りぶら」をボランティアで支援している「りぶらサポータークラブ」。この問題のパネル討論会を18日に主催し、その場で明らかにした。山田美代子代表らが14日、男性の訴えを聞き、書面を受け取って市長らに提出、受理されたという。 男性は「別の人が自分のように逮捕されないか心配。市に被害届を取り下げてもらい、プログラムによるアクセスは犯罪でないと示したい」と話したという。山田代表は「市民の意見として伝えた。市にはこの問題を今後につなげてほしい」と話した。 パネル討論会には約6
「なぜ起訴猶予になったのか?」を聞きに検察庁へ行ってきました 朝日新聞 神田さんや岡崎市立中央図書館事件等 議論と検証のまとめの杉谷さんの取材では「私が罪を認めたので起訴猶予になった」とのことです。 朝日新聞 神田記者による検察への取材より 不起訴とした理由は「強い意図は証拠上認定できなかった。どれくらい業務に支障があったかという点でも、検索システムの障害になったのは比較的短時間だった。業務妨害罪としてそれほど悪質なものではない。本人も反省している。」 ”嫌疑不十分”でなく”起訴猶予”とした理由は「本人が罪を認めているから。」 杉谷氏の愛知県警への取材より 「攻撃ではない、と認識していながら、嫌疑なしではなく起訴猶予処分となった理由はなんですか」 との問いに対して、愛知県警は「故意が認められたということで、警察としてはそう判断している」 Librahackメモの通り、自分では罪を認めたつも
■ 検察は何を根拠に犯罪と判断したか 岡崎図書館事件(14) 中川氏が、自分がなぜ起訴猶予に(嫌疑なしでなく)されたのか、10月に検察庁に聞きに行ってきたとのことで、librahack.jp にその報告が出た。 検察庁で聞いてきました, Librahack:容疑者から見た岡崎図書館事件, 2010年12月17日 故意を認定した理由はこういうことのようです。 コンピュータに詳しい技術者なので、リクエストを大量に送りつけたら、図書館のサーバに影響が出ることを予想できた。事実、まったく予想しなかった訳ではなく、少しは影響が出ることを予想していたはずだ。それなのに、リクエストを大量に送りつけたので、「故意があった」ものと判断した。 「なぜ嫌疑不十分ではなく、起訴猶予としたか?」と問い質したの対し、検察は、 影響が出ることをまったく予想しなかった訳ではなかったから。 と回答。さらに「それは過失になり
■ やはり起きていた刑事的萎縮効果による技術停滞 岡崎図書館事件(13) 12月12日の夕方、Twitterの#librahack界隈で以下のサイトが発掘された。 杉並区立図書館 新着図書 更新情報 (非公式), http://www.naotaka.com/library/ 更新停止のお知らせ 突然ですが、2010年6月22日をもちまして、「杉並区立図書館 新着図書 更新情報 (非公式)」の更新を停止させていただきます。 当ページをご利用の皆様にはご迷惑をおかけしますが、ご理解のほど、よろしくお願いいたします。 6月22日といえば、librahack.jp が公開された翌々日だ。東京の杉並区立図書館といえば、使われている図書館システムは三菱電機ISのMELIL/CS(新型)だ。 このサイトの公開された当時に書かれたサービス説明が、以下にある。 杉並区立図書館の、「その日の新着図書」がわか
岡崎図書館未来企画フォーラム「図書館戦争」最前線!? ネット時代の情報拠点としての図書館─ “Librahack” 事件から考える─ 12/18(土) 13:30-16:00 Libra(りぶら) 岡崎市図書館交流プラザ 開催要項: http://www.libra-sc.jp/news/2010111109565031.html で、パネリストをやってきました。 60人の会場がほぼ満員になりました。参加者の割合は、冒頭に挙手をしてもらって数えたところ SEやプログラマなどIT関係:13 公共図書館:9 大学図書館:2 その他図書館:4 岡崎市民:のこり半数 という感じでした(両方に手を挙げた人もいたみたいです)。 会場が半地下で、SoftBankの電波が入りにくかったからかTwitterでもたいしてつぶやかれなかったようですね。*1主催のりぶらサポータークラブ(以降はLSCと呼ぶ)が詳細
■ 三菱電機ISに求められているものは何か 岡崎図書館事件(10) 今日の読売新聞朝刊社会面に次の記事が出ていた。 図書館システム不具合…三菱電機系 情報流出・蔵書検索が「サイバー攻撃」か?, 読売新聞2010年11月29日朝刊社会面 図書館利用者100人以上の個人情報が流出したほか、蔵書を検索しただけで「サイバー攻撃」と誤解された男性が偽計業務妨害容疑で逮捕され、その後、システムに原因があったことも分かった。同社は近く調査結果を公表し、関係者に謝罪する。 (略)MDISは06年には不具合を改良し、その後に納入した図書館には改良版を提供していたが、今回、岡崎市から障害の相談を受けた際には「システムに原因はない」と回答。このため図書館は警察に被害届を出していた。MDISは「保守担当者がシステムをよく理解していなかった」として、逮捕された男性への謝罪の意を表明する方針。 三菱電機ISが近く発表
朝日新聞名古屋本社版2010年12月1日朝刊30面「逮捕の男性に業者側が謝罪 岡崎図書館問題「不便かけた」」 朝日新聞社データベース事業センターの許諾のもと転載(承認番号:2-2096) ※朝日新聞社に無断で転載することを禁止する また、日経新聞は「図書館システムに不具合」の見出しで、次のように報じている。 (略) 岡崎市の図書館では今年3〜5月にシステム障害も発生。これを巡り、自作の検索プログラムで繰り返しアクセスした愛知県の男性が、「サイバー攻撃」と誤解され、愛知県警に業務妨害容疑で逮捕され、その後起訴猶予処分となった。同社はこの件も「システム仕様が原因だった」とした。 男性は新着図書情報を取得するためアクセスしただけだった。同社は当初、「システムに問題はない」と市側に説明していた。門脇三雄社長は「対応が早ければ(男性に)不快な思いをさせることはなかった。誠意をもって対応したい」と謝罪
■ 三菱電機IS曰く「2005年に想定した設計・構築、製品に欠陥とは考えていない」 8月11日の日記に書いた件がその後どうなったか確認してみた。 いくつかの図書館では、/robots.txt が修正されたことにより、検索サイトで正常に閲覧できるようになった。 以前は、8月11日の日記に書いたように、三菱電機ISの図書館システム採用の図書館の多くが、/robots.txt によってすべてのクローラを排除していたため、図1の「ビフォー」のように異常な検索結果になっていた。 なぜそんな設定をしていたのかは、このシステムでは以前からアクセス障害が発生していたためであり、朝日新聞が次のように伝えている。 ソフト会社、図書館側に不具合伝えず アクセス障害問題, 朝日新聞, 2010年8月21日 MDISは06年、不具合を解消した新ソフトを開発。東京都渋谷区など全国約45カ所に納入した。しかし、一部では
図書館問題研究会(ともんけん)がお送りするイベント情報や緊急ニュース、そして会員のリレーエッセイ。 大地震によって被災されたみなさんに心からお見舞い申し上げます。 図書館問題研究会一同 岡崎市立図書館のウェブサイトに自作プログラムでアクセスした利用者が逮捕・勾留された事件-通称Librahack事件(*1)-は、インターネット上で衝撃をもって受け止められ、現在も活発な議論が続いています。ここでは、主に図書館と図書館員の対応について問題点を考えます。 既にまとめサイトが作られ、詳細な情報が集積されています。 岡崎市立中央図書館事件 議論と検証のまとめ 逮捕されたLibrahack氏もこの件についてのサイトを作成しています。 Librahack 岡崎図書館事件の真実を検証 また、朝日新聞の神田大介記者が精力的に取材を行い、8月21日に図書館システムに問題があったとの記事が報道されました。 図書
主に、 岡崎市中央図書館向けクローラの件落ち穂拾い から、上原哲太郎氏および高木浩光氏、朝日新聞記者 神田大介氏の取材をもとにした Tweet をもとにしています。 時系列には可能な限り具体的な Tweet 等へのリンクを添えています。Tweet の前後関係について詳しくは 岡崎市中央図書館向けクローラの件落ち穂拾い 等、リンクページから先のソースを参照してください。 なお、重要と思われる点については強調表示を行っています。 2009年以前の出来事 時系列-2009年以前を参照ください。 2010年以降の出来事 前年から1月にかけて、貝塚市民図書館のシステムを三菱電機インフォメーションシステムズがメンテナンス。その内容は「利用者からの同時接続数を100に制限」「セッションタイムアウトを300秒に変更」「クローラー対策 クローラー閲覧抑止対応の強化 (新着案内に追加)」「インターネットサービ
今日は、何かあった際に恥をさらすような受け答えをしてしまわないための、Webに携わる人間としての心得を、不出来なシステムを棚に上げて逮捕者まで出した岡崎市立図書館の事件から考えてみましょう。 2010年5月に、愛知県の岡崎市立図書館のホームページに対して自作のプログラムでアクセスしていた男性が、サイバー攻撃を仕掛けたとして愛知県警に逮捕されたという前代未聞の出来事がありました。 ご存じない方のために何があったかを簡単に説明しましょう(この部分に関しては、朝日新聞の神田大介記者が取材して書かれた記事や、逮捕された男性による説明を参考にしています)。 男性は、岡崎市立図書館のホームページが使いにくいことから、新着図書の情報を集めるためのプログラムを作って動作させていました。ところが、岡崎市立図書館のホームページで使用していたシステムに不具合があったためにホームページにつながらなくなる現象が起き
2010年7月12日にゆうちょ銀行で起こったシステム障害の原因は、2重化していたディスク装置のうち、本番系が故障した際に待機系に切り替わらなかったためであることが分かった。本番系のディスクが故障したとしても、待機系への切り替えに成功していれば、ダウンは起きないはずだった。 ゆうちょ銀はシステム障害が起こった理由を公表していないが、本誌の独自取材で判明した。ディスク装置が待機系に切り替わらなかった理由は調査中だ。ディスク装置は日本IBM製である。 今回のシステム障害によって、同行のすべてのATM約2万6000台で多くの取引ができなくなった。完全復旧までに要した時間は約17時間半。ゆうちょ銀によると、最大1万件程度の取引ができなかった可能性があるという。 ディスク装置の故障の影響が、これだけの規模に広がった理由は、障害が二つのシステムで連鎖して起こったことによる(図)。 一つめのシステムは「全
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のmixi(ミクシィ)のウェブサイトで、2010年8月10日から12日未明にかけて断続的に、ほぼ全利用者がサービスを利用できなくなるアクセス障害が発生した。 8月10日17時ごろからmixiのサービスを利用しにくい状況が発生。同日23時30分ごろまでにいったん復旧した。 その後もシステムは不安定なままで、ミクシィ社は復旧作業を続けた。しかし翌11日11時ごろからアクセスしにくい状況が再度発生。終日、パソコン・携帯電話ともにほぼアクセスできない状況が続いた。11日深夜から利用者数を限定して復旧。12日1時50分ごろまでに全ユーザーが利用できるようにしたが、12日2時30分時点の発表では「復旧状況を確認している」(ミクシィ)としている。 ミクシィ社の発表によると、障害の原因は特定できており、「キャッシュサーバーの負荷が高まった際に、一定の条件で異
災害時のシステム障害対策として、従来はデータをバックアップしたテープを遠隔地に保管する方法が主流だった。しかし、最近のネットワークのコスト低下により、新しい遠隔バックアップの技法が利用されるようになった。今回は、これらの遠隔バックアップについて説明する。 近年、企業の事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)への関心が高まり、その中でコンピュータシステムの災害復旧(Disaster Recovery:DR)が注目されるようになった。日本では過去の2つの大事件が、この分野に関する教訓となっている。 1つは、1984年11月の「電電公社世田谷ケーブル火災」である。これは、電電公社(現:NTTグループ)の世田谷電話局前の共同溝内で発生した火災により、共同溝内の通信ケーブルが損傷したため、現場近くに事務センター(今でいうデータセンター)を設置していた2つの大手都市銀行
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