「チベット人の焼身抗議は世界の歴史上もっとも激しい政治的焼身である」と言われることがある。チベットの焼身抗議は現在進行形であり、まだ歴史となった訳ではないが、ここでこれまで世界で行われた他の政治的焼身抗議について概観することも、チベットの焼身抗議を相対化し、客観視するために意味があると思われる。世界と言っても、今回は特にインド、イスラム圏、ベトナム、中国、日本の一般的焼身自殺を含む焼身について報告する。 幸い、2012年12月にフランスのパリで発行された「Revue d’Etudes Tibetaines」と題された雑誌(注1)の中にチベットの焼身だけではなく世界中のこれまでの焼身に関する各学者の論文が集められているので、これを主に参考しながら、以下、特にチベットの焼身に関係すると思われる近代以降の焼身の歴史を中心に概観することにする。 インド 世界的に見ると、政治的抗議の意味を含まない、