2018年6月にシンガポールで開かれたトランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長による初の米朝首脳会談を前に、安倍晋三首相は重要な役割を果たしていた。 米側から説得要請 「大統領は板門店(パンムンジョム)で会談したがっている。第三国で会談するよう言ってほしい」 米政府高官は会談前、首相がトランプ氏を説得するよう日本側に要請した。朝鮮戦争を戦った米朝の首脳が南北軍事境界線がある板門店で握手すれば歴史的場面を演出できる。だが、板門店で会談すれば、現在の休戦状態ではなく終戦を求める北朝鮮のペースに乗せられる恐れがあった。そこで頼ったのが首相とトランプ氏の特別な関係だ。 過去の日米首脳も個人的な信頼関係を築き、日米同盟の維持・強化を図ってきた。しかし、安倍、トランプ両氏の関係が異色なのは、米政権内の調整が難航した際、安倍首相が影響力を行使した点にある。 両首脳が初めて会談