私は耳鳴りをコントロールできる。 時にはクラシック音楽、時にはジャズだったり、ロックだったり、ほのぼのとした童謡であったり、バラエティ豊かな耳鳴りは、まるで耳の中でオーケストラが在中しているかのよう。 聴力を失ってから、唯一の音楽。 それが耳鳴り。 耳鳴りとの付き合いは長い。 高校生のころから始まり、それはたとえようのない騒音だった。 俗に言う「キーン」とか「ジージー」とか、そんな単純な音だけではなく、さまざまな楽器が不協和音を奏でていたり、聞いたこともないような不快な機械音だったり、人の叫び声のようだったり、単調なリズムから頭が狂ったのではないかと思うくらいの大音響。 まるで地獄耳。 当時は、手にしている鉛筆を耳の中に突っ込みたい衝動に駆られるくらい本当にひどかった。 高校三年になり、大学進学を決め、デザインの受験勉強に励む中でも耳鳴りはやまない。集中力が落ち、気が狂わんばかりだった私が