吉見俊哉、『博覧会の政治学 まなざしの近代』、中公新書、1992年 引用にあたって、原文にある注番号はすべて省略した。 博覧会と植民地主義について。 博覧会の時代とは、同時に帝国主義の時代であった。これは決して偶然ではない。一九世紀半ばから二〇世紀初頭に至るまで、地球規模で増殖し続けたこの資本主義のスペクタクルは、なによりも帝国主義の巨大なディスプレイ装置であったのだ。博覧会は、テクノロジーの発展を国家の発展、つまりは帝国の拡張に一体化させ、そのなかに大衆の欲望を包み込んでいったのである。このような博覧会と帝国主義の結びつきは、すでに一八五一年のロンドン万博のときから現れてはいた。ロンドン万博を開催するに当たり、主催者側が最初に着手したのは、大英帝国の植民地や自治領からの出品全体を帝国の展示としてまとめあげることであった。それらの植民地には、東インド、セイロン、マルタ、アフリカ西海岸、喜望