「北欧には、寝たきり老人がいない」-----そんな話を初めて聞いたのは、私が財団法人・松下政経塾の研究員として、日本全国の老人ホームを実習して回っていた、12年ほど前のことになります。1988年当時のデータでスウェーデンでは長期ケア施設における「寝たきり老人」の割合は4.2%であるのに対し、日本は33.8%。これは先進国の中で、最悪の数字でした。 一度自分の目でそれを確かめようと、世界7カ国を約8か月かけて回り、そのときの経験を『体験ルポ・世界の高齢者福祉』(岩波新書)にまとめました。このときに私は、『寝たきり老人』はむしろ「寝かせきり老人」、つまり福祉やケアが行き届かないための人災であると痛感しました。あれから10年以上経ちますが、残念ながら、日本の老人介護の実態に関して言えば、まだまだ問題が深刻です。 世界の中で「寝たきり問題」が大きいのならわかりますが、なぜ日本だけが突出してこの問題