大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。ノンフィクション作品はこれまでに、講談社ノンフィクション賞受賞作を中心にけっこう読んできたのだが、本書はノンフィクションとしては、かなり異色作だと感じた。というのは本書は、きわめてエッセイ的なのである。 筆者は、9歳から14歳までのあいだ、チェコスロバキアの在プラハ・ソビエト学校に通っていた。1960年から1964年のことである。本書は3つの短編からなっているが、それぞれ、当時の同級生との思い出話が書かれ、1990年前後になって、再びその同級生に会い、当時のことや、筆者がプラハを離れた後のこと、今のことについて語り合う、という内容なのである。この要約をみても分かるとおり、きわめてエッセイ的なのである。 しかし本書を最後まで読み、(さらには解説に目を通し)、読書記録を書くために改めて本書全体を眺めなおして思うことは、やはり本書はすぐれてノンフィクション的だと