うちは多分、がん家系だ。父は珍しい腎臓がんに始まり、胃がん、皮膚がんの果てに88歳で末期の肺がんが見つかりこの世を去った。最近、弟に初期の胃がんが見つかり内視鏡で切除した。かなりまずい。 医師の告知が普通になり、インターネットで情報が簡単に手に入るようになった。命に関わるだけでなく生活の質(QOL)を向上させるためにも、正しい病気の知識を解説した本が欲しいと思う人は多いだろう。 著者の仲野徹は大阪大学大学院医系研究科教授で病理学を教えている。「エピジェネティクス」という最先端医学の泰斗であり『幹細胞システムにおける細胞分化機構の解明』という研究で日本医師会医学賞も受賞している立派な研究者なのだが、猛烈な読書家であり、趣味は義太夫語りという多趣味で多才な人でもある。 仕事柄、人から病気について尋ねられることも多く、一般の人の知識不足を嘆いていたある日、ふと気づく。「自分で書いてみよう」。 本