藤木久志『雑兵たちの戦場』 初めに 朝日新聞社より1995年に発行された。副題は、「中世の傭兵と奴隷狩り」である。基本的に、読後雑感で紹介している本や論考は、私が大いに感銘を受けたものばかりだが(怠惰な私には、読んでつまらなかった本の雑感をわざわざ書くような気力はない)、『雑兵たちの戦場』は実に興味深く、教えられるところの多い本で、これまで取り上げた本や論考の中では最も強い感銘を受けた。戦国時代に関心のある人にはお勧めである。 雑兵とは、身分の低い兵卒のことである。戦国大名の軍隊で騎乗の武士は大体1割程度で、残りの9割は次の3種類から成っていた。 (1)騎乗の武士に奉公し、悴者・若党・足軽などと呼ばれる、主人と共に戦う侍 (2)中間・小者・あらしこなどと呼ばれる、戦場で主人を助け、馬を引いたり槍を持ったりする下人 (3)夫・夫丸などと呼ばれる、村々から駆り出されて物を運ぶ百姓。 (1)は