〈リュウミン〉という書体のストーリーは、この約30年に日本の本づくりが歩んできたDTP化の歴史と重なる。 モリサワから写植文字盤として登場したのが1982年。そして1993年に、パソコン用の「フォント」として発売された。 私にとって最初の記憶は、小学生のころ、夏休みの読書感想文で読んだ新潮文庫の『火垂るの墓』(野坂昭如)だ。 正直にいって、当時はこの文字でかかれた本があまり好きになれなかった。学校の課題図書に選ばれるような文芸作品や、社会派の小説や、ノンフィクションに使われる、まじめな書体のイメージが強かったように思う。 それがいまや日本で最も有名な印刷用書体といっても過言ではない。 小説も、ノンフィクションも、専門書も参考書も問題集も〈リュウミン〉。 直木賞受賞作も、塾や学校のパンフレットも、マンションの広告にも〈リュウミン〉。 まるで安全・安心のシンボルのように、いたるところ〈リュウミ