本連載は加筆・修正の上、中公新書『現代日本を読む―ノンフィクションの名作・問題作』として2020年9月に刊行されました。現在、好評発売中です。連載第3回以降の記事は書籍でお楽しみください。 ■大宅壮一ノンフィクション賞の誕生 1970年4月8日、大宅壮一ノンフィクション賞の授賞式が新橋の第一ホテルで催された。 受賞者は『極限のなかの人間』を著した尾川正二(おかわ・まさつぐ)。もう一人の受賞者となるはずだった『苦海浄土(くがいじょうど)』の著者・石牟礼道子(いしむれ・みちこ)は受賞を辞退したため欠席。会場に現れた受賞者は尾川一人だけだった。 日本のノンフィクション界を牽引してきた大宅壮一ノンフィクション賞は、このときが第1回だ。賞を創設することが発表されたのは前年の『文藝春秋』誌上であった。 《「事実は小説より奇なり」という言葉があるが、現代は、ある意味では「ノンフィクションの時代」といえる
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