慈恵病院の新館外壁に設置された「こうのとりのゆりかご」。扉を開けると保育器がある 写真を見る 開設10年を前に記者会見する蓮田太二理事長=9日午後、熊本市西区の慈恵病院 写真を見る 写真を見る 熊本市の慈恵病院が「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」を開設して10年。親が育てられない子を匿名で受け入れる異例の取り組みは、幼い125人の命を未来へつないだ。思春期を迎え、出自を知らずに育つ人権上の課題に直面しつつあるが、対応は現場任せで国や自治体の制度的検討は手つかずのままだ。妊娠に関する電話相談は増え続け、母子の孤立や貧困などの現実も浮かび上がる。 年間十数件のペースで院内に響く突然のブザーは、ゆりかごに乳幼児が預けられた合図だ。看護師らは階段を駆け降り、保育器へ向かう。竹部智子看護部長(49)は「赤ちゃんの無事を確かめるまでの緊張感は慣れることがない」と明かす。 ある元職員は、育て