◎描くことで想いを実写化する JR九州の旅客をはじめ、さいたまスーパーアリーナや和歌山のたま電車など、数々の工業デザインを手がける水戸岡鋭治さんは、今もすべての仕事を手描きで行なっている。 「手描きは頭に浮かんだイメージを瞬時に表現できます。例えば(さらさらと列車の内観を描く)椅子はこうですね。照明も欲しいですよね。窓はいくつ? サイドテーブルは? といったふうに、相手と話をしながら具体的に内容を詰めていける。工業デザイナーの仕事は、アーティストみたいに己を表現することではありません。こういうものが欲しいというクライアントの声を聞き、よりよく形にしていくことが仕事です」 例えば橋を造りたいという依頼があるとする。どんな橋がいいのか、意見を交わしながら水戸岡さんはその場でプロットタイプを描いていく。言葉と同時に可視化することで、クライアントも「そうそう」だとか「ここはこう」とピンポイントでリ