戦後60年、憲法をめぐる論議が声高に言われるようになってきた。憲法が改正されれば自衛軍が海外で戦争行為ができるようになるという。戦争というのは国論をなにがなんでも戦争遂行にもっていこうとするから、どうしても国家総動員や言論弾圧・逮捕弾圧が行われる。そんな風潮に警鐘を鳴らすかのように、あるいはあの時代を忘れるなというかのように、治安維持法弾圧事件である「横浜事件」の再審裁判が行われている。戦前のあの時代、言論と結社と人身の自由を侵害した治安維持法が、なお問われ続けているのである。近年の日弁連のニュースでも、治安維持法による被害者の名誉回復を行っているという(日弁連人権ニュース「人権を守る」第23号)。 そんななかで、この小論で取り上げるのは、1人の弁護士、歌人である。 いつの間にか/裁判所の仕事にも、少し慣れ/木々のこずえは若葉みづみづし 被告人はさっきから/ずっと調べられ、/残暑の光/窓