10年にわたる係争 『東村山の闇』第9章は「他殺の決定打『司法解剖鑑定書』の衝撃――やはり他殺だった」との見出しで始まる(P251)。なぜ司法解剖鑑定書が「他殺の決定打」といえるのかといえば、司法解剖鑑定書には明代の上腕内側部に皮下出血の痕があることが記載されているからだという。 法医学では一般論として「体の外側部分は……外傷がつきやすいのに比較して、上腕内側部分は、両手を広げたままでなければ外傷がつかないから、故意に人為的な力をこの部分に加えなければ、傷がつきにくい」とされている(P252)。よって、司法解剖鑑定書に記載された上腕内側部の皮下出血の痕は第三者(=犯人)から掴まれた痕であり、すなわち「他殺」の証拠だというのである。 司法解剖鑑定書には上腕内側部に皮下出血の痕があることが記載されているものの、第三者が関与した形跡があるとの記載はない。しかし、「他殺」を主張する矢野はこの部分に