関曠野氏の最新著『福島以後―エネルギー・通貨・主権』(青土社)を読んだ。関氏と言えば、数々の独創的な思想史的著作や政治哲学的論考で既によく知られている。本編でも氏の主張は、期待を裏切らない氏独自の洞察で満ちたものだ。 時事的発言も重要だが、何といっても注目すべきなのは、氏の思想史家としての大胆な見通しや解釈の見直しである。たとえば、家族の法がローマ教会のイデオロギー闘争の結果であったこと、そこで確立した両性の自由で平等な契約という観念が、後のロックの社会契約説の基礎を与えていること(ただしロックは、それを首尾一貫した形で展開したわけではない)。あるいは、天皇制と皇室についての見方においても、氏は深い思想史的教養に基づく独自な見解を示している。明治維新を、公的法理を欠いた権力の私的略奪として解釈する一方、近代天皇制がそもそものはじめから欠いていた理念的正統性に、人民の統合という内実を初めて与