性と暴力のアメリカ―理念先行国家の矛盾と苦悶posted with amazlet on 07.04.16鈴木 透 中央公論新社 (2006/09) 売り上げランキング: 22825 Amazon.co.jp で詳細を見る 「完全なる統合の実現」と「自由と平等という崇高な理念の実現」という目標をもって出発したアメリカという“実験国家”が、どうして今「性と暴力の特異国」になってしまったのか?――こんな素朴な疑問から筆者はアメリカという国を精神分析にかける。そのような方法の妥当性はさておき、筆者が語るアメリカのライフヒストリーには些細だが驚きに満ちた事実が多くあり、とても興味深い本だった。 この本のなかでアメリカの矛盾した姿は、近代が生み出した畸形児、という風にも読める。例えば初期のアメリカ移入者たちのなかに存在したピューリタンにおける厳格な性道徳――性を抑圧するのではなく、性と対峙し、それを