水は、原子力発電に欠かせない物質だ。だが、東京電力福島第一原子力発電所の事故は、その水を制御できなくなったことで引き起こされた。そればかりでなく9年たった今も、水との闘いは続いている。炉心溶融(メルトダウン)を起こした原子炉内に残る、溶け固まった燃料(デブリ)を冷やす水と、建物内に流れ込む地下水による汚染水が発生し続けているためだ。事故で何が起き、どうして作業は遅れているのか。福島第一原発事故と水との闘いを、振り返る。(編集委員 吉田典之) 過熱した燃料による化学反応で水素が作られ、爆発が起きた 3号機が水素爆発を起こしたことを伝える3月14日の号外 2011年3月11日に東日本大震災が発生した時、原発は揺れを検知して発電を停止し、原子炉の冷却が始まった。だがその後、堤防を越えて発電所を襲った津波で、施設内の電気設備は浸水して全ての電源が失われ、電気で動かしていた冷却水の循環も止まってしま