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○文学の検索結果361 - 400 件 / 2311件

  • ジョン・ガッテニョ「SF小説」(文庫クセジュ) SFは方法とテーマの文学。人間や社会にペシミスティック出会っても科学への信頼は揺るがない。 - odd_hatchの読書ノート

    これを読むと、ミステリ(探偵小説)は形式の文学だなあと思う。形式は犯罪→探偵→捜査(解決)で構成される。そこにはしばしばテーマはない。形式を踏まえていれば、何の内容もなくてかまわない。量産されるミステリ(探偵小説)はそういうものだ。また作品はしばしば超歴史的。どこでだれがどのような状態で書いたかというのは、形式を検討するときに問題にされない。なので、19世紀の短編は21世紀の短編と形式において比較可能になる。 一方、サイエンス・フィクション(SF)は方法とテーマの文学だ。方法は科学的思考(ここでは知識と推論で代表される。別のなにかでいえそうだが、自分には見つからない)。その方法でいくつかのテーマを扱う。無理やりに統合すると予測(仮説とか外挿とかでもいいような気がするがぴったりすることばが見つからない)。このふたつがとりあえずそろっていれば、形式なぞなくてもSFは可能になる。とはいえ、19世

      ジョン・ガッテニョ「SF小説」(文庫クセジュ) SFは方法とテーマの文学。人間や社会にペシミスティック出会っても科学への信頼は揺るがない。 - odd_hatchの読書ノート
    • 【大塚英志氏書評】もはや日本の文学は周回遅れになった

      【書評】『パチンコ 上・下』/ミン・ジン・リー・著/池田真紀子・訳/文藝春秋/各2400円+税 【評者】大塚英志(まんが原作者) 今年ならミン・ジン・リー『パチンコ』でもいいし、去年ならポン・ジュノの映画『パラサイト』、少し前ならゾンビアニメ『ソウル・ステーションパンデミック』と、韓国の小説や映像に触れる度に思うのは、韓国にはまだ描くべきものが歴然としてある、ということだ。 個人のミニマムな世界では描き得ない歴史やあるいは「格差」などという妙に社会学的な言い方に収めないで「階級」を、ゾンビアニメを以てさえ毅然と描く姿を見る時、「文学」や「映画」を社会が必要としているようでひどく懐かしい。 それは中国SFにも言える。しかもそれら東アジアの表現は怯むことなく、一周先の資本主義と結びつき、世界化している。『パラサイト』だけの話でなく、文革を描くSF『三体』が平然とNetflixと結びつく。そのこ

        【大塚英志氏書評】もはや日本の文学は周回遅れになった
      • ヘビをも倒す!三本足のカエル最強伝説!? その4 【再読】 ~『金玉ねじぶくさ』巻七の二より~ - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

        『金玉ねじぶくさ』巻七の二「蛙も蛇を取る事」の続きですヾ(๑╹◡╹)ノ" 霞亭文庫書誌詳細 ※この記事では霞亭文庫の画像を適宜改変して使用しています。 【原文】 余り、蛇に取られ、詮方《せんかた》無さに、中間《なかま》にて大勢 評議《へうぎ》し、一疋《いつぴき》智勇《ちゆう》備《そな》ハりたる蛙《かわづ》、此の謀《はかりごと》を用ひ、数多《あまた》の蛙《かへる》の命を救ふと見へたり。 国《くに》は国主《こくしゆ》のまま、天下は天子のまゝなれども、上《かミ》道《みち》を失ひ、餓《う》へたる民《たミ》を憐《あハ》れまず、強《し》い虐《せたぐ》る事強けれバ、疲馬《ひば》鞭箠《べんすい》を恐れずとて、痩《や》せた馬《むま》に重荷《おもに》を負《お》ふせて追えども行かぬ如く、民《たみ》も国の仕置《しおき》を用ひず、却《かへ》って法度《はつと》を背《そむ》き、右の馬《むま》の鞭《むち》を恐れざる様《や

          ヘビをも倒す!三本足のカエル最強伝説!? その4 【再読】 ~『金玉ねじぶくさ』巻七の二より~ - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
        • ノーベル文学賞2020年、裏読み解説 今年の授賞の謎ときに挑む(鴻巣友季子) - エキスパート - Yahoo!ニュース

          「いけず」な授賞? さて、2020年のノーベル文学賞の受賞者が発表された。アメリカの詩人ルイーズ・グリュック氏(77)だ。わたしの事前解説と予想の記事はこちらを読んでいただきたい。受賞者が日本人でない時点で、「なーんだ」と興味を失った方が大半かと思う。しかしこの授賞の裏にそこかはとなく感じられる”意図”を思うと、なかなか興味深いものがある。なにかのメッセージが遠まわしに伝えられている気がしてしまう。 どういうことか、順を追って説明していきたい。 まず、わたしの事前解説記事内の「予想」で当たったのは、この部分だけ。 「スウェーデンアカデミーというのは、狙いすましたように『人がいないところにボールを投げこむ』のが得意」 要するに、予想は当たらなかった。 ルイーズ・グリュックの詩を手に入れて読んだが、そのシンプルで澄明な言葉の紡ぎだす詩のすばらしさは間然するところがない。詩の伝統を打ち破る革新性

            ノーベル文学賞2020年、裏読み解説 今年の授賞の謎ときに挑む(鴻巣友季子) - エキスパート - Yahoo!ニュース
          • 数学を通してミステリの自由に触れる、華文青春本格ミステリの傑作──『文学少女対数学少女』 - 基本読書

            文学少女対数学少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者:陸 秋槎発売日: 2020/12/03メディア: Kindle版この『文学少女対数学少女』は前漢時代の中国を舞台にした本格百合ミステリ『元年春之祭』や学園百合ミステリ『雪が白いとき、かつそのときに限り』の陸秋槎による最新の邦訳作品。推理小説大好きな文学少女と数学少女を軸にして、数学とミステリの相似を探りながら犯人当てゲームに興じていく、4篇から成る連作短篇集だ。 対、とついていると一つの事件に対して、別のアプローチを探る二人が推理合戦でもするようなイメージが湧いてくるが、タイトルは麻耶雄嵩の 『貴族探偵対女探偵』へのオマージュであって、対決というよりも協同して一つの事件や謎に別角度から向かっていく作品である。文学少女にして推理小説大好きな少女は著者と同じ陸秋槎という名前を冠され、自伝的な要素も盛り込まれているとあとがきでは語られている。

              数学を通してミステリの自由に触れる、華文青春本格ミステリの傑作──『文学少女対数学少女』 - 基本読書
            • 井原西鶴が描く明智光秀! その5 ~『武家義理物語』巻一の二「瘊子は昔の面影」~ - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

              ※下に現代語訳と解説があります。 武家義理物語 6巻. [1] - 国立国会図書館デジタルコレクション ※この記事では国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜加工して使用しております。 ※画像は拡大できます。 【原文】 其れより二度《ふたたび》皃《かほ》も見ずに隔て、里帰《さとがへ》りの時、段〻《だん/゛\》状通に記し、 「右《みぎ》貰いしハ姉《あね》なれバ、難病《なんびよう》ハ世に有る習《なら》ひ、たとへ昔の形《かたち》ハ無くとも、是非《ぜひ》に送らせ給へ。 一命《いちめい》に掛けても夫妻《ふさい》願《ねが》ひの所存《しよぞん》。 殊《こと》に此《こ》の度《たび》妹《いもと》の心入れ、女ながら道理《だうり》に詰まりける」 と、心中の程《ほど》言ひ遣りしに、親里《をやざと》にも此の事 満足《まんぞく》して、十兵衛 願《ねが》ひに任せ、また姉娘《あねむすめ》を遣ハしけるに、打ち解けて、

                井原西鶴が描く明智光秀! その5 ~『武家義理物語』巻一の二「瘊子は昔の面影」~ - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
              • 「ヘルパーの分際で」すばる文学賞作家を侮辱した医師、介護現場の闇:朝日新聞デジタル

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                  「ヘルパーの分際で」すばる文学賞作家を侮辱した医師、介護現場の闇:朝日新聞デジタル
                • 怠けていると火間虫入道になっちゃうぞ! 【再読】 ~鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』より~ - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

                  前回は山東京伝が妖怪化したヘマムショ入道を紹介しましたが、このブログでおなじみの妖怪画家鳥山石燕も、ヘマムショ入道を元にした妖怪を描いています。 百鬼夜行 3巻拾遺3巻. [2] - 国立国会図書館デジタルコレクション 鳥山石燕『今昔百鬼拾遺《こんじゃくひゃっきしゅうい》』(安永十[一七八一]年刊) ※この記事では国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しています。 【原文】 火間蟲入道《ひまむしにうだう》 「人生《じんせい》勤《つとむ》るに有り、勤る時ハ匱《とぼし》からず」と言えり。 生《い》きて時《とき》に益《えき》無く、うかり/\と、間《ひま》を盗ミて一生《いつしやう》を送る者ハ、死しても其の灵《れい》、火間虫夜《ひまむしよ》入道《にうだう》と成りて、燈《ともしび》の油《あぶら》を舐《ねぶ》り、人の夜作《よなべ》を妨《さまた》ぐるとなん。 今、訛《あやま》りて「ヘマ

                    怠けていると火間虫入道になっちゃうぞ! 【再読】 ~鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』より~ - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
                  • 『日本沈没』『復活の日』を手がけたSF作家・小松左京とは何者か。展覧会「小松左京展―D計画―」が世田谷文学館で開催

                    『日本沈没』『復活の日』を手がけたSF作家・小松左京とは何者か。展覧会「小松左京展―D計画―」が世田谷文学館で開催『日本沈没』『復活の日』など、壮大なスケールのSF小説の数々で人気を誇る作家・小松左京。SFの世界に希望を抱き、災害や世界の変化を描き続けたその活動の軌跡を、多彩な資料でたどる展覧会「小松左京展―D計画―」が世田谷文学館で開催される。会期は10月12日~12月22日。 「宇宙にとって知性とは何なのか。そしてその知性が虜になる「文学」とは何なのか。やはりこう言っておこう。SFとは文学の中の文学である。そして、SFとは希望である――と」。自著『SF魂』のなかでこう語るのは、小説家・小松左京(1931~2011)だ。 小松は京都大学でイタリア文学を学び、在学中から文学活動を開始。後に芥川賞を受賞する高橋和巳と出会い、親交を深める。卒業後は経済誌の記者や放送作家などを経て、1959年に

                      『日本沈没』『復活の日』を手がけたSF作家・小松左京とは何者か。展覧会「小松左京展―D計画―」が世田谷文学館で開催
                    • この世界の中で、この世界を超えて――伴名練とSF的想像力の帰趨 - “文学少女”と名前のない著者

                      ※この記事はネタバレを含みます。 幼い子供が小学校の図書室で出会った本の群れ。宇宙を旅し、時間さえも飛び越える人々の不思議な物語。それらを貪り読みながら、子供は登場人物たちとともに日常では決して味わうことのできない数々の冒険を経験する。けれども、夢のような冒険の時間には必ず終わりが来る。読書の余韻を感じながら本を閉じ、周囲を見渡せば、見えるのは夕闇に呑まれつつある図書室の風景。もう家に帰らなきゃ。晩ご飯を食べて宿題をやらなきゃ。本の中の冒険と比べて、現実の生活はなんて退屈で味気ないことだろう。本の中でなら自分はどんな人間にでもなれて、どんな世界にでも行けるのに。でも、自分の真の居場所は他ならぬこの現実の中にしかない。その事実を受け入れられずに、子供はかつて読んだ本を真似て自分で物語を書き始める。書くことを通して、退屈で味気ない自分の人生を夢のような冒険へと作り変えようとする。だが、そんな涙

                        この世界の中で、この世界を超えて――伴名練とSF的想像力の帰趨 - “文学少女”と名前のない著者
                      • 文学フリマ代表・望月倫彦が語る、リアルなイベントの価値 「文章を書く人の数は今が一番多い」

                        小説、評論、エッセイ、詩歌、ノンフィクションなど様々な作品の展示即売会である文学フリマ。そこには同人誌をはじめ、CD、電子書籍、Tシャツなどいろいろな形の「文学」が並び、多くの来場者を集めている。間もなく11月20日にも東京で開催されるこのイベントは、2002年の第1回以来、20年におよぶ歴史を持つ。初期からアマチュアに混じりプロの書き手が出店する一方、かつてアマだった参加者が商業デビューした例も少なくない。規模を拡大し続け、東京以外の各地でも即売会を開催するようになった文学フリマ事務局は今年、一般社団法人になった。望月倫彦代表に文学フリマのこれまでとこれからを聞いた。(円堂都司昭/10月31日取材・構成) 望月倫彦氏 ――文学フリマの歴史は、公式サイトにまとめられていますが、代表自身から始まりをあらためて話していただけますか。 望月:批評家・マンガ原作者の大塚英志さんが、作家の笙野頼子さ

                          文学フリマ代表・望月倫彦が語る、リアルなイベントの価値 「文章を書く人の数は今が一番多い」
                        • 宇佐見りんさん「推し、燃ゆ」インタビュー アイドル推しのリアル、文学で伝えたかった|好書好日

                          宇佐見りん(うさみ・りん)作家 1999年、静岡県生まれ、神奈川県育ち。現在大学生。2019年に『かか』で第56回文藝賞を受賞をしデビュー。同作は2020年、第33回三島由紀夫賞を受賞。 推しへの愛情、「一方通行」だからいい ――推しについて世の中で理解されていないと感じたのが、執筆の原動力のひとつだったそうですね。 まず、「推す」というのは、芸能的な活動をする人をファンが応援すること。そして「推し」は、ファンが応援している人を指し示すときによく使う言葉です。ジャニーズ、宝塚、地下アイドルに地上アイドル、今で言えばYouTuberもそうですね。「推し」という言葉も、その感覚も、私と同じ年代の子たちには通用することが多いのですが、世間的にはまだその実態が理解されていないように感じたのが、書いたきっかけのひとつです。たとえば、「推しを推すこと」が恋愛の下位互換や趣味の一環として捉えられている。

                            宇佐見りんさん「推し、燃ゆ」インタビュー アイドル推しのリアル、文学で伝えたかった|好書好日
                          • 湯島天神② ~『金草鞋』初編中巻~ - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

                            はい、『金草鞋』湯島天神の続きですヾ(๑╹◡╹)ノ" 【左右ページ全体】 【左ページ詳細】 ※この記事では国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しています。 金草鞋. 1編 - 国立国会図書館デジタルコレクション 諸国道中金の草鞋. 1 - 国立国会図書館デジタルコレクション ※画像は拡大できます。 ※落書きが酷かったので、可能な限り修正しています。 【原文】 千久羅 「見なさろ/\、向かふから出来たァ、御御《おごう》か童《わらし》か御洒落《おしやらく》さあでもなかんべい。 女だァか、男だァか、分から無い者《もん》が、出来たァ。 何《あん》だんべい、儂《わし》、聞いて見るべいか。 モイ/\、ちくと物さあ問ひますべい。 童《わらし》ハ、男だァか、女だァか、何《あん》で御座りヤす。 何《あに》、陰間《かげま》だァ。 陰間たァ、何《あん》の事《こん》だんべい。 放題《ほうだい

                              湯島天神② ~『金草鞋』初編中巻~ - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
                            • 『文学フリマ』に出店してきました。 - やれることだけやってみる

                              2020年1月19日。 第四回文学フリマ京都。 初参加+初出店のご報告です。 じゃ~ん☆ はい、お気づきの通り、私じゃないです。 キモノドレスに身を包んだ綺麗なお嬢さん。 ペンネームを朝梛実幻(みほろ)さんとおっしゃる。 《文学フリマ》のイメージガールにぴったりではありませんか。 お願いして撮影させてもらい、 ブログに載せる許可もいただきましたよ。 私がどんなふうだったかは、snow36さんから報告が…。 あるかな? 初めての参加が出店でした。 『コミケ』に比べますと、歴史も浅く、認知度も低いです。 運営スタッフさんが、 「SNSで告知を!」 と呼びかけるほどに。 初参加+初出店も珍しくありません。 お隣のブースの方もそうでした。 私のブース(°▽°; シンプルイズベスト。 あとは値札とブース番号を掲示して終わりです。 左隣には、可憐なお嬢さんがお二人。 右隣には、ウェブ小説家のお兄さんた

                                『文学フリマ』に出店してきました。 - やれることだけやってみる
                              • 人の花散る疱瘡の山 その5 ~井原西鶴『懐硯』巻一の五~ - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

                                ※下に現代語訳と解説があります。 懐硯. 第1 - 国立国会図書館デジタルコレクション ※この記事では、国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しております。 ※画像は拡大できます。 【翻刻】 専九良、露《つゆ》程も是に心を掛けず、たゞ此の三十日の間の對面《たいめん》無き恋《こひ》しさのミ胸《むね》に迫り、幾度《いくたび》此の者を見廻すれども突き戻《もど》し、 「今一度 逢《あ》ふて、思ひを晴れ度《た》き」 と、ばかり言ひしに、左馬之丞、 「扨《さ》てハ道《ミち》立てたる男、我《ワ》が今の容《かたち》を見給はゞ、年比《としごろ》の執心《しうしん》も冷むべし。 されども、それ程に思い沈《しづ》まれるハ、逢《あ》ふべし」 と、密かに屋敷に呼《よ》びて、此の有様を見するに、専九良、涙を流し、 「かくも姿《すがた》の変はる物か。 夫《そ》れ故《ゆへ》、色有る者を我に召し仕へ」 と

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                                • 「いま・ここ」から離れる『世界文学アンソロジー』

                                  日ごろ「自分」を機械的にやっていると、外面の「自分」が当たり前になる。仕事上の立場だとか、SNSで被っているキャラといった、日常的に使い分けている「自分」が、内面のわたしを乗っ取りはじめる。 そんな「自分」を異化するため、他人の物語を聞く。しかも、できるだけ「いま・ここ」の自分から離れたものがいい。異なる言葉、違う文化の物語を聞くことで、自分にとっての当たり前が、当たり前でないことを思い知る。 『世界文学アンソロジー』を手にすると、このアタリマエじゃ無い感が浮彫りにされてくる。 固まった「自分」に一撃を加える たとえば、フランツ・カフカの「夏の暑い日のこと」がそう。 わずか2頁の掌編なのに、常識が丸ごと壊される感覚を味わえる。何も悪いことをした覚えがないのに、突然逮捕される『訴訟(審判)』を思い出させる。あるいは、自分の身の上に、何か重要な間違いが起きつつあるのに、それに関わらせてもらえな

                                    「いま・ここ」から離れる『世界文学アンソロジー』
                                  • 物語はどれほどこの世界に影響を及ぼしているのか──『物語創世──聖書から<ハリー・ポッター>まで、文学の偉大なる力』 - 基本読書

                                    物語創世:聖書から〈ハリー・ポッター〉まで、文学の偉大なる力 作者: マーティンプフナー,塩原通緒,田沢恭子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/06/20メディア: 単行本この商品を含むブログを見るフィクション、物語とは言ってみれば架空の存在なわけだが、どういうわけだが我々人類は何千年もの間絶えず物語を語り続けてきた。つまるところ、物語にはそれだけ人を惹きつけてやまない力があり、ギルガメッシュ叙事詩や『イリアス』のように、時に偉大な物語は人々の文化の基盤となって、行動や思考に大きな影響を与えることがある。そうであるならば、物語とは、いったいどれほどの力を持っているのか? 基盤テキストとはなにか 本書は、そのような世界に対して強い影響力を持つ物語を「基盤テキスト」と呼称している。その格好の例は聖書だ。たとえば、有人宇宙飛行ミッションのアポロ8号が月の周回軌道を回っている時に、聖書

                                      物語はどれほどこの世界に影響を及ぼしているのか──『物語創世──聖書から<ハリー・ポッター>まで、文学の偉大なる力』 - 基本読書
                                    • 定番の昔話が江戸時代にはどう書かれていたか? 【まとめリンク】 - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

                                      「定番の昔話が江戸時代にはどう書かれていたか?」シリーズヾ(๑╹◡╹)ノ" これまでに以下の作品を取り上げましたヾ(๑╹◡╹)ノ" 更新が停滞中なので、まだお読みでない方は、今のうちにwぜひご覧くださいませヾ(๑╹◡╹)ノ" 桃太郎 kihiminhamame.hatenablog.com 浦島太郎 kihiminhamame.hatenablog.com 金太郎 kihiminhamame.hatenablog.com 三年寝太郎 kihiminhamame.hatenablog.com 猿蟹合戦 kihiminhamame.hatenablog.com カチカチ山 kihiminhamame.hatenablog.com kihiminhamame.hatenablog.com 舌切り雀 kihiminhamame.hatenablog.com このシリーズを再開しようかなと思ったので

                                        定番の昔話が江戸時代にはどう書かれていたか? 【まとめリンク】 - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
                                      • 2021年ノーベル文学賞の行方は?(鴻巣友季子) - エキスパート - Yahoo!ニュース

                                        ノーベル文学賞授賞式の晩餐会。 騒ぎも少し落ち着いてきたこの頃今年もノーベル賞発表の時期がやってきた。ノーベル文学賞の発表は10月の初旬の木曜日と決まっており、今年は7日(木)すなわち明日だ。日本時間では午後8時に発表となる。 わたしはノーベル文学賞受賞者への解説待機要員としてこの25年ほど、毎年この賞の動向を眺めてきた。最初のうちはノーベル文学賞といっても、国内での関心は薄く、淡々とウォッチしていた。ところが、2005年、村上春樹の『海辺のカフカ』が米国「ニューヨークタイムズ」の年間ベスト10に選ばれ、2006年にチェコの国際文学賞フランツ・カフカ賞を受賞した頃から、にわかに受賞有力説が浮上し、前報道も過熱していった。 それを後押ししたのが、ネットのブックメイカー(賭け屋)が発表するオッズだった。村上氏はつねに上位に位置し、それが期待を煽ることになった。ハルキストたちが発表当日夜(日本時

                                          2021年ノーベル文学賞の行方は?(鴻巣友季子) - エキスパート - Yahoo!ニュース
                                        • ハイブリッド妖怪「アマビエ」 - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

                                          こないだ、アマビエについて書いたんですけど、 kihiminhamame.hatenablog.com この特徴的なアマビエの姿は、一体、何が元になっているんだろう?と気になったので、少し考察してみることにしました。 ちなみに、流行りのアマビエの記事でアクセス数激増だぜ!と思っていたのですが、その目論見は見事に外れ、大撃沈でしたヾ(๑╹◡╹)ノ" 「海彦《あまびこ》」※『越前国主記』より 「アマビエ」は「アマビコ」の誤記であることは、ほぼ間違いないです。 「アマビコ」は漢字で書くと「海彦」です。 ふと、「海彦」と対になる妖怪は「山彦《ヤマビコ》」だなあと、何となく思いましたヾ(๑╹◡╹)ノ" で、その「アマビコ」はこちら。 ※元の画像を使っていいか分からなかったので、模写で失礼します。 オリジナルの画像は、こちらのリンク先にある論文(pdfのリンクをクリック)に掲載されています。https

                                            ハイブリッド妖怪「アマビエ」 - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
                                          • ぶんぶく茶釜⑥[完] ~江戸時代の絵本~ - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

                                            ※この記事では、国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜加工して使用しています。 ぶんぶくちやがま - 国立国会図書館デジタルコレクション 【原文】 形を見つけられ、終に生け取りとなつて、「是を土産《みやげ》に参上せん」と、貉《むじな》を先に帆つ立て、東山殿の屋敷へ帰りける。 東山殿、「彼所《あそこ》、我が前へ貉を連れける褒美《ほうび》や」と御褒美《ごほうび》を下され、件《くだん》の貉ハ、御家中の疝気《せんき》持ち共に下されける。 有り難し共、中/\何に喩《たと》へんしる[知る?]も無し。 ふくさい「苦労のたん[嘆?談?]かな、冷や飯まで食べた」 ぶんぶく「あゝ、此の狸め故《ゆへ》に苦労した」 「褒美を取らせい」 「今より前の如く勤めい」 「坊主が散らし髪で働きました」 「即《すなわ》ち生け捕りました」 井筒屋板 【現代語訳】 [本文] しかし、さすがにこれは神も許しがたく、ムジナ(タヌ

                                              ぶんぶく茶釜⑥[完] ~江戸時代の絵本~ - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
                                            • 韓国文学を読んで「性差別に怒ることを知った」日本人女性たち | 「他の国の物語とは思えない」

                                              近年、K-POPのみならず、韓国文学が日本で女性を中心に人気を博している。若者の経済不安や性差別など、両国に共通する社会課題を取り上げていることが背景にあると英誌は分析する。

                                                韓国文学を読んで「性差別に怒ることを知った」日本人女性たち | 「他の国の物語とは思えない」
                                              • 北海道・市立小樽文学館にてゲームの本にスポットをあてた企画展が3月5日より開催。「ゼビウス1000万点への解法」やゲーム雑誌のバックナンバーなどが展示

                                                本展は「誕生!ゲームの本」、「最新情報はまかせろ!ゲーム雑誌」、「プレイヤーをサポートした攻略本の数々」、「キーワード展示」の全4章で構成されており、1996年の部屋を再現したスペースも展示されるほか、「Beep」や「ファミコン通信」といった雑誌のバックナンバーがすべて常設展示されている。なお、すべての展示資料は個人のコレクションから提供されたものとなっている。 展示資料はそれぞれ詳細な解説が楽しめるほか、ゲーム書籍やゲームのアーカイブ活動にゆかりのある人々によるエッセーを収録した図録も販売される。なお、図録は小樽文学館の通信販売でも購入できるとのことだ。 第1章「誕生!ゲームの本」では、『スペースインベーダー』の攻略本などビデオゲームに関する書籍の黎明期のものにフォーカスし、“うる星あんず”こと大堀康祐氏が制作した「ゼビウス1000万点への解法」も展示される。 続く「最新情報はまかせろ!

                                                  北海道・市立小樽文学館にてゲームの本にスポットをあてた企画展が3月5日より開催。「ゼビウス1000万点への解法」やゲーム雑誌のバックナンバーなどが展示
                                                • 角川ミュージアムと第2回角川武蔵野文学賞 - アメリッシュガーデン改

                                                  昨年のことですが、角川武蔵野文学賞という公募に短編を応募して、最終候補として、一応、私の作品が残りました。 その時の応募作834。 残った作品は20作品で、そのうちの1作品が大賞として選ばれたのです。 この公募の興味ふかい点は、賞金が角川ミュージアムの入場券であり、作品がそのミュージアムにずっと展示されることです。 角川ミュージアム 『角川武蔵野ミュージアム』 ミュージアム内は本であふれています。 建物内部にある本棚、まるでハリーポッターの世界のようで、とてもファンタジックです。 本好きには、よだれが出そうなアミューズメントパークは、隈研吾氏のデザイン。 隈研吾氏といえば、自然と共存する木を使った建築デザインが多い印象でしたが、こちらの建築は、まるで巨大な石が落ちてきて、そこに突き刺さっているようなイメージで、迫力があります。 さて、『第2回角川武蔵野文学賞』 この賞の賞金が、こちらの入場

                                                    角川ミュージアムと第2回角川武蔵野文学賞 - アメリッシュガーデン改
                                                  • 海外文学・ガイブン Advent Calendar 2020 - Adventar

                                                    今年に読んだ海外文学、読んでみたかった海外文学、復刊してほしい海外文学、読めそうにない海外文学、海外文学を読もうとしたらなにも読まずに終わりそう、海外文学を読める気がしない、今年の海外文学ベスト、今年のガイブン仕事、告知など、「海外文学」のアトモスフィアをふんわり感じるURLならなんでもOKです。 書く内容は後から決められる&変更できます。また、URLならなんでもいいので、Webサイト、ブログはもちろん、読書メーター、ブクログ、TwitterなどのURLが可能です。のちのち「今年はこうだったなー」と振り返る日記みたいな気分でゆるくどうぞ。 ■参加方法 ・参加する日を決めて、カレンダーに登録する ・書く(ブログ、読書メーター、Twitterなんでも) ・URLを公開(参加日の当日公開、事前公開どちらでもOK) ・URLをカレンダーの「URL」欄に貼りつける(参加日当日までは当人以外には非公開

                                                      海外文学・ガイブン Advent Calendar 2020 - Adventar
                                                    • 謎の毒鳥「チン」! ~『和漢三才図会』より~ - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

                                                      昨年末に読んだ『金玉ねじぶくさ』巻七の二の冒頭で出てきた、「チン」という鳥にみなさま興味津々なようでヾ(๑╹◡╹)ノ" kihiminhamame.hatenablog.com 「チン」がどういう鳥か知るには、百科事典で調べればいいわけですが、このブログで現代の百科事典を紹介するわけがありませんwヾ(๑╹◡╹)ノ" 江戸時代にどう考えられていたかを知るには、現代とは解釈が異なる場合も多々ありますが。江戸時代の百科事典を調べた方がいいわけでヾ(๑╹◡╹)ノ" わからない動物が出てきた時に便利な江戸時代の百科事典は、はい、『和漢三才図会《わかんさんさいずえ》』ですヾ(๑╹◡╹)ノ" あ、『和漢三才図会』と『三才図会』、よく混同されますが、『三才図会』は中国の百科事典で、『和漢三才図会』は『三才図会』の日本版と言った感じで作られた別の本なのでご注意をヾ(๑╹◡╹)ノ" 倭漢三才図会 : 105巻

                                                        謎の毒鳥「チン」! ~『和漢三才図会』より~ - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
                                                      • 児童文学者 松岡享子さん死去 86歳「くまのパディントン」翻訳 | NHKニュース

                                                        「くまのパディントン」や「うさこちゃん」のシリーズの翻訳などで知られる児童文学者の松岡享子さんが今月25日、亡くなりました。86歳でした。 松岡享子さんは神戸市出身で、大学を卒業後、アメリカに渡り現地の大学院で学んだあと、帰国して大阪市の図書館で勤務しました。 1967年に東京 中野区の自宅で、地域の子どもたちに向けた語りや読み聞かせなどの活動を始め、1974年には「東京子ども図書館」を設立して児童書の普及や人材育成などに尽力しました。 また児童文学者として、みずから創作を行うとともに、子ぐまが主人公のイギリスの児童文学「くまのパディントン」シリーズや「ミッフィー」の名前で知られる「うさこちゃん」シリーズなどの翻訳を手がけ、子どもたちに広く親しまれました。 さらに「絵本のノーベル賞」と言われる「国際アンデルセン賞」の選考委員を務めるなど国際的な文化交流にも貢献し、去年、文化功労者に選ばれま

                                                          児童文学者 松岡享子さん死去 86歳「くまのパディントン」翻訳 | NHKニュース
                                                        • 【独占インタビュー】「女性の性生活の自由をめぐるたたかい」映画『あのこと』監督・主演俳優 | ノーベル文学賞受賞アニー・エルノーの『事件』が原作

                                                          2022年にノーベル文学賞を受賞したフランスの作家、アニー・エルノーの自伝的フィクション『事件』を基にした映画『あのこと』が、12月2日より日本で順次公開されている。 人工妊娠中絶が法律で禁じられていた1960年代のフランスで、大学生のアンヌは予期せぬ妊娠にうろたえながらも、たった独りで命がけのたたかいに挑んでいく──。観る者にそのたたかいを体感させるリアリティで、本作は2021年ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞。 日本公開を機に来日した監督オードレイ・ディヴァンと、アンヌを演じたアナマリア・ヴァルトロメイに独占インタビューした。 中絶が沈黙に包まれている本当の理由 ──監督はご自身の堕胎経験を経て『事件』を読まれたとのことですが、フランスでこの短編はどのような位置づけなのでしょうか? 『事件』はアニー・エルノーの著作のなかで出版時、最も注目されなかったものです。フランスではいまは中絶

                                                            【独占インタビュー】「女性の性生活の自由をめぐるたたかい」映画『あのこと』監督・主演俳優 | ノーベル文学賞受賞アニー・エルノーの『事件』が原作
                                                          • お正月は北見花芽版妖怪カルタで遊ぼう!ヾ(๑╹◡╹)ノ" - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

                                                            みなさまお忘れでしょうが、北見花芽版妖怪カルタというものを前に作りましたヾ(๑╹◡╹)ノ" kihiminhamame.hatenablog.com kihiminhamame.hatenablog.com kihiminhamame.hatenablog.com kihiminhamame.hatenablog.com kihiminhamame.hatenablog.com kihiminhamame.hatenablog.com kihiminhamame.hatenablog.com kihiminhamame.hatenablog.com 全画像をグーグルドライブにあげてありますので、下記のリンクからどうぞヾ(๑╹◡╹)ノ"(001と002に分かれています) 妖怪カルタ001 - Google ドライブ 妖怪カルタ002 - Google ドライブ 私的利用の範囲ならご自由にお使

                                                              お正月は北見花芽版妖怪カルタで遊ぼう!ヾ(๑╹◡╹)ノ" - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
                                                            • 十七日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

                                                              (賤の女に襲い掛かるタライ) (串刺しになった童子の首) ※この挿絵には串が描かれていない。 新日本古典籍総合データベース ※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0) ※画像は拡大できます。 【原文】 十七日昼頃、平太郎が家に前方より立ち入りし賤《しづ》の女《め》有り。 今日《けふ》訪《と》ひ来たりしに、互ひに物語せし処《ところ》に、何処《いづく》とも無く盥《たらひ》転び出で、彼《か》の女を追う程に、門の外迄出せしに、女ハ平太郎が投げ打ちせしと思ひし由《よし》にて、急ぎ帰りけると也。 此の夜ハ眼《め》丸《まろ》き童《わらべ》なる首、十一弐ばかり串刺しにて、田楽《でんがく》の如く成るが、串を足として飛び〻出でツヽ彼方此方《あちこち》と廻りけると也。 疎《うと》ましき様《さま》なりとぞ。 【現代語訳】 七月十七日の昼ごろ、この

                                                                十七日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
                                                              • 三十日目その2『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

                                                                (平太郎の氏神) 新日本古典籍総合データベース ※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0) ※画像は拡大できます。 【原文】 扨、其れより前に出し上下着たる男、ふと立ち出て申す様《やう》は、 「某《それがし》の名ハ山本《サンモト》五郎左衛門《ごろうざえもん》と申して、天下の魔王にて候《さふら》ふ也。 三界《さんがい》の國〻を廻りて、勇氣強き人の歳十六になるを誑《たぶら》かす事、打ち續きて、百の数を積もり候へバ、魔王の頭《かしら》と成《な》り申す也。 然るに、當時、我と同じく、其の業《わざ》を為《な》しける真野悪五郎《しんのあくごろう》と申す者有り。 是と共に彼の頭と成るの争ひを為し候ふ也。 然《さ》れバ、此の五郎左衛門ハ此の度《たび》、追《つい》に八十五人を續け申せども、八十六人に當たる其許《そのもと》を誑かす事能《あた》

                                                                  三十日目その2『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
                                                                • 挫折した海外文学選手権

                                                                  多様で思い出深い、挫折した海外文学の記録。 元記事 https://owlman.hateblo.jp/entry/2020/12/01/140700 海外文学を読む歴史は、海外文学に挫折してきた歴史であり、挫折なくして、海外文学の読書はありえない。私たちはなんどでも挫折し、なんどでも読み始め、また挫折しては、読みとおし、読み返し、読み返したあとにまた挫折する。森羅万象がめぐり、死と再生がめぐるように、挫折と再読もずっとめぐり続ける。

                                                                    挫折した海外文学選手権
                                                                  • 上野公園 ~『金草鞋』番外編~ - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

                                                                    『金草鞋』に登場した上野東叡山寛永寺。 当時の寛永寺の境内は、現在はほぼ上野公園の敷地になっています。 私は上野公園には2009年8月と2016年8月の二回訪れています。 そこで、江戸切絵図に書かれた寛永寺の建物の中で、現在も面影をとどめているものを、写真とともに紹介したいと思います。 〔江戸切絵図〕 - 国立国会図書館デジタルコレクション ちなみに、『金草鞋』の挿絵で描かれているのは、黒門・吉祥閣・中堂ですかね。 金草鞋. 1編 - 国立国会図書館デジタルコレクション 諸国道中金の草鞋. 1 - 国立国会図書館デジタルコレクション 寛永寺はかなり縮小されたものの、現在も上野公園の北に存在します。 今の寛永寺の写真、こんなのしか撮ってませんでした、すいません。 (2009年) ①慈眼堂(開山堂・両大師堂) 慈眼大師とは、天海僧正のことです。 『金草鞋』で酔っ払いがケンカしていたのは、この建

                                                                      上野公園 ~『金草鞋』番外編~ - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
                                                                    • [3]江戸時代に読まれた一寸法師 ~一寸法師、お椀の舟で都へ~ - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

                                                                      御伽草子. 第19冊 (一寸法師) - 国立国会図書館デジタルコレクション ※この記事では、国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜加工して使用しています。 【原文】 夫婦、思ひける様《やう》ハ、 「あの一寸法師めを、何方《いづかた》へも遣《や》らバやと思ひける」 と申せバ、やがて一寸法師、此由《このよし》承《うけたまは》り、 「親にも斯様《かやう》に思ハるゝも、口惜しき次第かな。 何方へも行《ゆ》かバや」 と思ひ、 「刀無くてハ如何《いかゞ》」 と思ひ、針を一ッ姥に乞い給へバ、取り出し給《た》びにける。 即《すなハ》ち麦藁《むぎハら》にて柄《つか》鞘《さや》を拵《こしら》へ、 「都《ミヤこ》へ上らばや」 と思ひしが、 「自然、舟無くてハ如何あるべき」 とて、又姥に、 「御器《ごき》と箸《はし》を給べ」 と申し受け、名残惜しく止むれども、立ち出《い》でにけり。 住吉の浦より、御器を舟とし

                                                                        [3]江戸時代に読まれた一寸法師 ~一寸法師、お椀の舟で都へ~ - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
                                                                      • 作家・大江健三郎さん死去 88歳 ノーベル文学賞、護憲活動も | 毎日新聞

                                                                        現代人の苦悩と希望を描く小説でノーベル文学賞を受賞し、核兵器廃絶や反原発などの行動も続けた作家の大江健三郎(おおえ・けんざぶろう)さんが3日、老衰のため死去した。88歳。葬儀は近親者で営んだ。喪主は妻ゆかりさん。 1935年、愛媛県生まれ。54年、東京大入学。仏文科に進み、サルトルに傾倒した。在学中に短編小説「奇妙な仕事」で文壇デビュー。57年「死者の奢(おご)り」を発表、58年に短編「飼育」で芥川賞を受賞した。いずれも敗戦後の占領下で日本人が行き詰まって監禁状態にあるとの見方がモチーフとなっていた。 59年東京大卒。60年安保反対闘争にも参加した。61年に発表した「セヴンティーン」「政治少年死す」は実際の社会党委員長刺殺事件を連想させるとして物議を醸した。

                                                                          作家・大江健三郎さん死去 88歳 ノーベル文学賞、護憲活動も | 毎日新聞
                                                                        • 幾原邦彦『さらざんまい』(2019) - 海外文学読書録

                                                                          さらざんまい 1(完全生産限定版) [Blu-ray] 村瀬歩 Amazon ★★★★ 浅草。中学2年生の矢逆一稀・久慈悠・陣内燕太が、カッパ王国第1王位継承者ケッピと出会う。ケッピに尻子玉を抜かれた3人はカッパに変身し、カパゾンビから尻子玉を抜くことを課せられる。カパゾンビの尻子玉をケッピに転送することで、何でも願いの叶う希望の皿が生まれるのだった。3人にはそれぞれ叶えたい欲望があって……。 第1話からして鮮烈な印象を残すアニメで、一見して「これは今期(2019年春)の覇権じゃないか」と思ったほどだ。だって少年たちが尻子玉を抜かれて河童になって、ミュージカルみたいに歌いながら今度はカパゾンビの尻子玉を抜くんだもん。しかも、肛門から直腸に入る場面がばっちり描写されていてめっちゃえぐい。尻子玉を抜いたあとは、カパゾンビのケツから体液がブシューって出ている。他にも、警官2人組がこれまたミュージ

                                                                            幾原邦彦『さらざんまい』(2019) - 海外文学読書録
                                                                          • [9]江戸時代に読まれた一寸法師 ~一寸法師の鬼退治?~ - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

                                                                            御伽草子. 第19冊 (一寸法師) - 国立国会図書館デジタルコレクション ※この記事では、国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜加工して使用しています。 【原文】 何処《いづく》とも無く、鬼二人 来《きた》りて、一人は打ち出の小槌《こづち》を持ち、今一人が申す様《やう》ハ、 「呑《の》ミて、あの女房《ねうばう》は取り候ハん」 と申す。 口より呑ミ候へバ、目の中《うち》より出にけり。 鬼申す様ハ、 「是《これ》は曲者《くせもの》かな。 口を塞《ふさ》げば、目より出る」 一寸法師ハ鬼ゝに呑まれてハ、目より出でゝ、飛び歩《あり》きけれバ、鬼も怖《お》じ慄《おのゝ》きて、 「是ハ只者《たゞもの》ならず。 只、地獄に乱こそ出來《いでき》たれ。 只逃げよ」 と言ふまゝに、 【現代語訳】 どこからともなく、鬼が二人やって来ました。 一人は打ち出の小槌《こづち》を持っており、もう一人が、 「この小さ

                                                                              [9]江戸時代に読まれた一寸法師 ~一寸法師の鬼退治?~ - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
                                                                            • ノーベル文学賞 2年分発表 ポーランドとオーストリアの2人 | NHKニュース

                                                                              ノーベル文学賞の選考を行うスウェーデン・アカデミーは日本時間の10日夜、発表が見送られた去年と、ことしの2年分の受賞者を同時に発表し、去年の受賞者にポーランドの女性作家オルガ・トカルチュク氏(57)が、ことしの受賞者にはオーストリアの男性作家ペーター・ハントケ氏(76)がそれぞれ選ばれました。 このうち去年の賞に選ばれたポーランドの作家、オルガ・トカルチュク氏は、1962年にポーランド西部で生まれ、ワルシャワ大学で心理学を学んだあと、執筆活動を始めました。 2007年に発表した代表作の小説「逃亡派」は、異なる時代や場所を舞台に起きるエピソードを集めた作品で、読者がさまざまな旅を経験した気持ちになれる「斬新な紀行文学」だと評価されています。 翌2008年にはポーランドで最も権威がある文学賞「ニケ賞」を受賞し、日本語にも翻訳されています。 ノーベル賞の選考委員会は「彼女の作品は、1989年以降

                                                                                ノーベル文学賞 2年分発表 ポーランドとオーストリアの2人 | NHKニュース
                                                                              • 韓国文学ブーム引っ張る「女性作家たち」の凄み

                                                                                コンテンツブロックが有効であることを検知しました。 このサイトを利用するには、コンテンツブロック機能(広告ブロック機能を持つ拡張機能等)を無効にしてページを再読み込みしてください。 ✕

                                                                                  韓国文学ブーム引っ張る「女性作家たち」の凄み
                                                                                • 楠多門丸正行 ~『和漢百物語』より~ - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

                                                                                  前回と前々回の続きです、まだの方は先にご覧くださいヾ(๑╹◡╹)ノ" kihiminhamame.hatenablog.com kihiminhamame.hatenablog.com 今回は、月岡芳年の浮世絵、『和漢百物語』(慶応元[1865]年刊)の中の一枚、「楠多門丸正行《くすのきたもんまるまさつら》」を紹介します。 和漢百物語 楠多門丸正行 - 国立国会図書館デジタルコレクション ※この記事では、国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜加工して使用しています。 【原文】 橘正成《たちばなのまさしげ》が男《なん》、南朝無二《なんちやうむに》の良将《りやうしやう》たり正行《まさつら》、未だ幼《いちけな》き頃《ころ》、有《あ》る夜《よ》、庭上《ていじやう》に下《お》り立《た》ちつ、木馬《もくば》を試《こゝろ》ミ居《ゐ》給ひしに、嗚呼《あら》、怪しむべし、忽然《こつぜん》と一個《いつ

                                                                                    楠多門丸正行 ~『和漢百物語』より~ - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~