「ジェンダーからの解放」と一口に言っても、その内実は女性に対しては素直に「欲望を解放せよ」である一方で、男性に対してはむしろ「欲望を捨て去れ」なので、意味が真逆なんですよね。
「女性の目線」で報じられる戦争はまだ少ない ウクライナ難民に関する報道を生中継で伝えていた際、米「CNN」のクラリッサ・ウォード記者は話を中断し、疲れ切っている避難民に手を貸し歩いた。「人々は疲れて、歩くのもやっとです」とウォードは視聴者に語る。「ひどい、ひどい光景です。そしてそれでも、彼らは幸運な人たちなのです」 その翌日、米紙「ニューヨーク・タイムズ」のフォトグラファー、リンゼイ・アダリオはある悲惨な光景をカメラでとらえた。ロシア軍による砲撃にあい、道に崩れ落ちる母親と子供たちの遺体の写真である。 ベトナム戦争を取材した3人の女性ジャーナリストを紹介した書籍『あなたはここにいるべきではない』(未邦訳)の著者であるエリザベス・ベッカーは、こうした女性ジャーナリストたちの報道を「戦争の人間的側面を見つめた、より人道的と呼べる報道であることは絶対に間違いありません」と語る。 戦争報道に必要な
テレビの「いじめ、決めつけ、ジェンダー差別、ステマに抵抗」 モーリー・ロバートソンさんの意見表明に大反響 テレビでの、いじめ、決めつけ、ステレオタイプ、ジェンダー差別、ステマ、ファクトチェックされていない情報流布になるべく抵抗します――。ジャーナリスト、ラジオDJなどとして幅広く活動するモーリー・ロバートソンさんのそんなツイートが大きな話題となっている。 ロバートソンさんは2020年9月2日未明、「唐突ですが意見表明をします」と自身のTwitterで連続ツイート。「今後のテレビ出演ではいじめ、決めつけ、ステレオタイプ、ジェンダー差別、ステマ、ファクトチェックされていない情報流布になるべく抵抗することにしました」と投稿した。 コロナ禍とネット浸透で「テレビ業態が圧迫」と指摘 続いて、新型コロナウイルス拡大の影響で広告収益が減り、経営にも大きな影響が出ている民放各局が今後、制作費圧縮などが避け
2022年11月24日の朝日新聞に掲載された「新興宗教と女性」と題した時評で、東京大学大学院の林香里教授はこの年の夏から注目されだした「宗教2世問題」にジェンダーの視点をとりいれて論じた。宗教2世をテーマにした菊池真理子さんのマンガを読んだ林さんは、まず次のようなことに気づく。 「それは、ほとんどの場合、母親が信仰を主導し、子どもたちに強引に活動に参加させていることだ。父親はいないか、見て見ぬふりをするか、アルコール依存症の者もいた。」 そしてこう続ける。「統計的な把握は難しいが、菊池の描く漫画を通して、一部のいわゆる新興宗教団体は、日本の女性たちの生きづらさの受け皿になりながら、彼女たちを巧妙に利用していると感じる。」 このあとは論壇時評として数冊の本の内容を紹介しつつ論がすすめられるが、その内容をまとめると次のようになる。いわく、日本社会にはいまだ構造的なジェンダー不平等が存在しており
約2年前、就活をしていてよくされる質問があった。 「あなたはなぜジェンダーを専攻したのですか?何かきっかけがあったんですか?」 就活生の考えやきっかけから紡ぎ出される言葉を聞くため、どんな分野を選んでいようと、尋ねることになっているのだろう。しかし、この質問に対する最適な答えは持ち合わせていない。毎度戸惑ってしまい、ネットで見た適当な言葉を並べる。 太っていた私を見下した彼女たちは、変わった私を「ビッチ」と噂した 勉強している「理由」って話さなくちゃいけないの? ジェンダーやセクシュアリティの勉強をしていることを語る時、自分の過去の経験やセクシュアリティを半強制的にカミングアウトさせられているような、そんな少し傷ついたような気持ちになる。 自分が当事者であることが、専攻を決めた大きなきっかけになっている人もいるだろう。また、過去に傷ついた経験があったり、自分が違和感を感じたり理不尽な経験を
俺は価値観をあっぷでぇとできてないっぽいので、すげー混乱するんだよ。だから手伝って。優しくね。 男らしさ、女らしさをなくそう、って話あるよね?(ジェンダーフリーでいいよね?)これはすごくいいと思ってんの。 だけど一方で、性自認を認めようって話あるよね?これがすごい混乱してるの。 ここで一言注意なんだけど、トランスジェンダーの人を貶そうとか、障碍者だとか、そういうことを言いたいわけじゃない。そういうのは誹謗中傷だし、そういうことをする奴は俺は大嫌いだし、やるべきではないと思う。(誹謗中傷する人々が生きていては駄目だというのではない。生は誰も否定されるべきでない。俺は誹謗中傷が嫌い、それだけ。) さて、何に混乱しているかというと。 性自認(ジェンダーアイデンティティ)ってのは、非常に強固なジェンダーありきの概念じゃない?なにせジェンダーアイデンティティというくらいだし。「私は体は女ですが中身は
2018年ごろ、女子大学へのトランスジェンダー(出生時に割り当てられた性が男性で、性自認が女性の人。トランスジェンダー女性)学生の入学が話題になった時期から、トランスジェンダーと「女性専用スペース」の使用をめぐっての議論が、主としてツイッター上で交わされ、一部論争に発展しています。 この問題の背景には、日本社会における様々な遅れ――性暴力被害者の心情に寄り添い性暴力をなくす取り組みの遅れ、女性や性的マイノリティが恐怖心なく安全に生きられる環境整備の遅れ、国際水準に基づいて女性やトランスジェンダーの人権を保障していく取り組みの遅れなど――が横たわっており、この間の議論には、現状に対する多様な当事者の苦痛の深さがあらわれています。 その根源にあるのは、政治的社会的に形成された日本社会の非常に厳しいジェンダー規範です。構造的な性差別のもとで、性暴力が温存され、多くの性的マイノリティが排除・分断さ
電通総研は、「クオリティ・オブ・ソサエティ」の活動の基盤として、「人びとの意識の変化がどのような社会を形づくっていくのか」を捉えるため、「電通総研コンパス」と称した定量調査を実施しています。今回の第6回調査では、国連が定めた3月8日の国際女性デーに向けて、社会・経済・メディアなどの観点からジェンダーに関する人びとの意識に焦点を当て、全国18~79歳の男女計3,000名を対象に調査をおこないました。 *グラフ内の各割合は全体に占める回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しています。また、各割合を合算した回答者割合も、全体に占める合算部分の回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しているため、各割合の単純合算数値と必ずしも一致しない場合があります。(例:下記図1の女性の場合、単純合算では25.8%+49.1%=74.9%となりますが、全体に占める合算部分の回答者実数で算出し四捨五入表記した場
2013年に刊行されると、その後、世界各国で100万部以上を売り上げ、“今世紀で最も売れた経済専門書”ともいわれる『21世紀の資本』。 膨大な統計データをもとに、経済成長を期待して資本主義を放置すれば、世界に広がる「貧富の差」はますます拡大することを明らかにし、著者のトマ・ピケティは“21世紀のマルクス”とも評されました。 あれから10年、気候変動、ジェンダー格差、巨大テック企業への富の集中など、世界が抱える喫緊の課題を受けて、『21世紀の資本』で提案したグローバル資本課税にとどまらず、政治や社会運動によって、平等を勝ち取る必要性を、ピケティは主張しました。その論考が最新刊『自然、文化、そして不平等――国際比較と歴史の視点から』(文藝春秋・7月11日発売)です。ピケティの最新思想の中でも注目すべき「ジェンダー格差」論を、『週刊文春WOMAN2023夏号』より先行公開します。 ◆◆◆ ピケテ
発売中止から復活「トランスジェンダー本」 監訳者岩波明氏も驚く米国の「ジェンダー肯定ケア」 リベラルによるリベラル批判 第4回 アメリカのジャーナリスト、アビゲイル・シュライアー氏の “Irreversible Damage : The Transgender Craze Seducing our Daughters”の翻訳書が今月3日、『トランスジェンダーになりたい少女たち SNS・学校・医療が煽る流行の悲劇』のタイトルで、産経新聞出版から刊行された。昭和大学医学部の岩波明教授(精神医学、1959年生まれ)が監訳を担当している。 もともとはこの1月に、『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』の邦題で、KADOKAWAが出版する予定だったが、予約注文の受付開始直後の昨年12月、発売中止に追い込まれていた。「トランス差別だ」と憤った活動家らの攻撃に屈した格
前回まで、少子化対策について考えてきた。東京大学の赤川学教授、そして中央大学の山田昌弘教授はインタビューで、これまでの少子化対策にはほとんど有効性がなかったと指摘。それを踏まえ、どのような政策が望ましいか、読者の皆さんにコメント欄で議論していただいた。 今回は、少子化対策から「女性活躍(ジェンダーギャップ解消)」にテーマを移す。インタビューしたのは、ジェンダー問題の第一人者である社会学者、上野千鶴子氏。菅義偉政権は、安倍晋三前政権から「女性活躍」を目指す政策を引き続き推進する姿勢を打ち出している。上野氏は、日本の現状と対策について、どのように考えているのか。2回に分けて掲載する。 2019年末に世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数ランキングでは日本は153カ国中、過去最低の121位となっています。「女性活躍」の現状をどのように見ていますか。 上野千鶴子氏(以下、上野氏):ぼう
文在寅政権の発足と軌を一にして燃え上がる韓国のフェミニズム運動「Kフェミニズム」。だが、女性運動家の中心は「反米・反日・自主統一運動」を基調とするNL系であり、これとラディカルフェミニズムを結合したものが「Kフェミニズム」の本質だ。女性の生活向上ではなく、上層部のエリート女性の権力と権限を強化する手段に過ぎない。韓国の作家でコラムニストのオセラビ氏がKフェミニズムを斬る。 (オセラビ:作家・コラムニスト) ソウルと釜山(プサン)の市長補欠選挙が4月7日に行われた。結果は、巨大与党である「共に民主党」の惨敗。この結果を巡り、韓国社会は大きく揺れ動いている。一つの事件とも言えるほど、社会に大きな波紋を投げかけたのだ。 今回の投票における特徴は、20代男性と20代女性の投票行動が対照的だった点が挙げられる。注目すべきは20代男性だ。前回の記事(韓国社会を引き裂く「Kフェミニズム旋風」の病理)で書
日赤は3年前、献血キャンペーンに人気漫画の胸の大きな女性キャラクターを使った。献血会場でそのポスターを見た人が「この場にふさわしくない」と、SNSに写真付きで投稿したことをきっかけに、是非を問う論争になった。 「炎上CMでよみとくジェンダー論」の著者、瀬地山角東京大教授(58)=ジェンダー論=は、この漫画のファンに献血への関心を持ってもらおうとしたこと自体は「問題ではなかった」とする。その上で「性表現をどう受け止めるかは、個人の感覚の違いもある。不快と思う人がいる以上、皆が見る場所には置かないほうが良い」と指摘する。 ジェンダーを巡る「炎上」は古くからある。1975年には食品会社のCMで、女性が「私作る人」、男性が「僕食べる人」と言って批判された。瀬地山さんは「女性を応援したつもりだったが、性役割の押し付けになっていた例だ」と分析する。広告などで批判を受けるケースは、こうした性的役割分担の
先の衆院選では自民党が絶対安定多数を確保し、ジェンダー平等の実現を掲げた野党が敗北しました。そのことから国民はジェンダー平等に無関心だったと結論づけるような報道も。しかし、ジェンダー問題を研究する大正大学准教授の田中俊之さんは「それは真っ赤なウソ」と指摘します──。 野党は政策のアピールに失敗した 先の衆院選では、野党の中に政策としてジェンダー平等を大きく掲げたところもありました。僕としてはこれを国民がどう判断するか注目していたのですが、結局はジェンダー平等を打ち出していなかった自民党の勝利に終わりました。 これを受けて、ニュースでは「ジェンダー平等は国民の間であまり争点にならなかった」などと言われました。しかし、僕は野党の打ち出し方が悪かっただけだと思っています。彼らは、ジェンダー平等を票につなげるためのアピール方法を間違えたのです。野党の政策ブレーンは何をしているのかとさえ思いました。
『月曜日のたわわ』という青年マンガの広告が日経新聞に一面で掲載されたらしく、それについての議論が炎上しているようです。特にハフポストの以下の記事が焦点になってますね。すでに論評がいろいろ出ているのでそれに加えて私が書くべきことはそんなにないのですが、発見もあったのでちょっとだけ。今日は前おきだけ。 ハフィントンポスト「「月曜日のたわわ」全面広告を日経新聞が掲載。専門家が指摘する3つの問題点とは?」 https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_624f8d37e4b066ecde03f5b7 これの一つ目の問題の「見たくない表現に触れない権利」ですが、これは法的な権利ではなくまあ道徳的な権利としてはありだと思います。我々は不快なものを見たくないので、たとえば公の場で誰かが多くの人が見て不快に思う行為をしていたら警察につかまえてもらうようにしていま
岩田温氏世界中で奇妙な現象が見られる。「リベラル」を自称する人々が自分たちとは反対の意見を封じようとするポリティカルコレクトネス運動が多発しているのだ。自由主義(リベラリズム)に立つ者が、その原則である価値観の多様性を執拗(しつよう)に攻撃するとは実に奇妙だ。 自由民主主義社会は多様性の擁護を基盤とする。一人一人の価値観が異なることを前提とし、暴力や抑圧による価値観の強制を拒絶する。表現の自由、思想信条の自由は最大限尊重されなければならない。古典的自由主義思想家ミルは名著「自由論」の中で次のように指摘している。 「一人の人間を除いて全人類が同じ意見で、一人だけ意見がみんなと異なるとき、その一人を黙らせることは、一人の権力者が力ずくで全体を黙らせるのと同じくらい不当である」
作品紹介・あらすじ 「日本に経済格差はあるが、文化的には平等である」――戦後、こういった神話が語られてきたが、はたして本当に平等と言えるだろうか。平等だと言うことで、どういう現実が覆い隠されてきたのだろうか。 ピエール・ブルデューの『ディスタンクシオン』の問題意識と方法を共有しながら、社会調査や計量分析を基に、日本の文化資本の機能を読み解く。 芸術・音楽・読書などの趣味とジェンダー/ライフスタイルの関係、趣味を通じた友人のネットワーク形成、家庭の文化資本が学歴や地位の形成に及ぼす効果とその男女差などの分析を通して、日本における文化的オムニボア(文化的雑食性)という特性とジェンダーによる文化の差異を浮き彫りにする。そして、日本で文化の再生産が隠蔽されてきたメカニズムを解き明かす。 目次 序章 文化的平等神話 第1章 趣味の社会学の成立と展開 第2章 文化資本、ハビトゥス、実践 第3章 階級・
各国の男女格差を比較する「ジェンダーギャップ指数」で13年連続1位のアイスランド。グズニ・ヨハネソン大統領(54)は、5回の育休を取得した父親でもある。ジェンダー平等“世界一”のアイスランドも以前は男性優位な社会だったという。どのようにして男女平等は実現したのか。ジェンダーギャップ指数で146か国中116位と低迷する日本が変わるために必要なこととは――。『news every.』の鈴江奈々キャスターが単独インタビューした。 【映像】育休5回取得した大統領に単独インタビュー 世界一“男女平等”アイスランドの「秘訣」 ――男女平等が世界一進むアイスランドから学ばせていただきたいと思います。 男女平等は経済的な面でも賢明です。誰もが公平にチャンスを与えられ、誰もが平等に自分の能力を発揮し、夢を実現できる社会であれば、社会全体が恩恵を受けるのです。つまり、男女平等とは、女性にとっての正義や公正だけ
「自分の息子には、間違ってもこうはなってほしくない」。 セクハラ事件や離婚裁判に多く関わり、訴訟で毎日のように問題のある男性を見るたびに、そんな思いを募らせてきたという弁護士の太田啓子さん。裁判と二人の男児の子育てから得た見地から、社会が男の子に強いる「男らしさ」の抑圧と、その先に生まれる女性差別について書いた著書『これからの男の子たちへ:「男らしさ」から自由になるためのレッスン』が大きな話題を呼んでいます。 母親が経験として知らない男の子の成長過程、「性教育」をはじめ、なかなか踏み込みにくいもの。そんな中で息子さんと「何でも話せる関係」を作りあげた太田さんが大事にしていることとは?そして「これからの男の子たち」に、母親が伝えてゆくべきこととは、一体どんなことでしょうか? 太田啓子(おおた けいこ) 弁護士。2002年弁護士登録、離婚・相続等の家事事件、セクシュアルハラスメント・性被害、各
「異性愛で子どもを産んで当たり前みたいな考えが、根強く残っている。しんどいなと思う」。Xジェンダーのアーティストで活動家のmisaneさん(32)は、そう話す。Xジェンダーとは、男性か女性、どちらか一方に限定しない性別の立場を取る人たちのことだ。misaneさんは女性として育ち、男性に性転換し、女性と結婚していた過去を持つ。現在、再婚を考えている男性がいるが、自分の戸籍をどうするかで悩んでいる。 ●性転換、結婚の後、Xジェンダーではないかと気付いた 「自分の名前を、昔の名前でも今の名前でも呼んでもらいたくないということに気付いた。 本当に大切な人にだけ、自分の名前が知られている状態だったらいいな」 イラストレーターの仕事をしながら、三重県で同性パートナーシップ制度の導入のために活動しているmisaneさん。兵庫県尼崎市で生まれ、3人きょうだいの長女として育った。 生まれた時の名前はミサ。幼
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