【読売新聞】 文部科学省は来年度から、国際共同研究を対象とする科学研究費助成事業(科研費)について、従来の10倍となる1件あたり最大5億円に拡充する方針を固めた。新型コロナウイルスの収束後を見据え、日本の研究者が世界トップレベルの共
理化学研究所(理研)生命医科学研究センターサイトカイン制御研究チームの久保允人チームリーダー(東京理科大学生命医科学研究所教授)らの共同研究グループは、インフルエンザウイルスに対する免疫反応がワクチン接種とウイルス感染では異なることを発見し、経鼻感染の方がワクチン接種よりも質の高い中和抗体である「広域中和抗体[1]」が産生されることを明らかにしました。 弱毒生ワクチン[2]の有効性を明らかにした本研究成果は、今後流行が予想されるインフルエンザウイルスだけでなく、感染拡大が懸念される変異型新型コロナウイルスに対しても有効なワクチンの開発に貢献すると期待できます。 今回、共同研究グループはマウスを用いて、インフルエンザウイルスの「不活化ワクチン[2]」接種と「弱毒生ワクチン」を模倣した経鼻感染において、生体内で産生される抗体の質的・量的比較を行いました。すると、不活化ワクチンではワクチン株に対
宇野 友里花(地球惑星科学専攻 博士課程) 平沢 達矢(地球惑星科学専攻 准教授) 発表のポイント 鳥類と爬虫類について、関節した状態で保存された化石骨格の前肢の関節角度を計測し、鳥類のように翼の前縁に「前翼膜」があると、肘関節の角度が低い範囲に収まって化石化することを明らかにしました。 鳥類の祖先系統である獣脚類恐竜について、関節した状態で保存された化石骨格の肘関節角度を計測すると、飛行生態が進化する以前(マニラプトル類)に、すでに前翼膜が進化していたことが分かりました。 これまで証拠が得られにくかった軟体部の進化過程についての成果であり、白亜紀末に絶滅した恐竜の生態や、鳥類の体の構造の成立過程についての理解に寄与することが期待されます。 飛行生態が進化する以前に恐竜系統で獲得された前翼膜 発表概要 東京大学大学院理学系研究科の宇野友里花大学院生と平沢達矢准教授は、世界各地の地層から産出
自分の専門分野について、その社会的な位置づけや意義を語っただけで、「どうして自分のことばかり言うのだ!」とか「上から目線!」「選民思想」と言うのなら、日本中の科学研究費の申請書は、すべて上から目線の選民思想ということになってしまう。 — 平田オリザ (@ORIZA_ERST_CF) May 7, 2020 この投稿にも失笑が。 コロナ自粛の中で、少なくともSNS上で最も話題を振りまいた一人が平田氏ではなかったか。演劇界への公的支援を求めるが主張もかなり迷走した印象だ。シンパからは「ネトウヨの攻撃」などとフォローされていた。しかし平田氏が語るところでは従来から左派の批判も少なくないようだ。特に政権参画してからは。 『週刊金曜日』(2016年11月11日)「民主党政権の内閣官房参与として働いた平田オリザが語る政治のリアリズムと演劇のリアル」で「民主党政権に参画した経験の意味は、今、どうとらえて
「全地球史アトラス」は、太陽系の誕生、地球の誕生を経て、生命の誕生、そして生命の進化を、Hadean Bioscience研究グループによる最新の研究成果に基づき再現した映像集です。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 第1章から第12章までを1本にまとめた、地球誕生、生命誕生から地球の未来までを一気に見ることができる映像です。 第1章「地球誕生」 第2章「プレートテクトニクス」 第3章「原始生命誕生」 第4章「生命進化の第1ステージ」 第5章「生命進化の第2ステージ」 第6章「生命進化の第3ステージ」 第7章「生命大進化の夜明け前」 第8章「カンブリア紀の生命大進化」 第9章「古生代」 第10章「中生代から人類の誕生まで」 第11章「人類代〜人類誕生と文明の構築」 第12章「地球の未来」 企画: 文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究「冥王代生命学の創成」
研究課題統合検索(GRANTS)は、国の政策等に基づき研究開発を推進する事業により行われている研究課題について、実施機関や事業の壁を越えて統合的に検索できるサービスです。現在は、JSTプロジェクトデータベース、および、科学研究費助成事業データベース(KAKEN)に収録されているデータを検索することができます。
ホタテの貝殻を焼いて粉末にしたものを家畜の糞に混ぜ込むことで、家畜が持つ薬剤耐性菌を減らせることを、酪農学園大学(北海道江別市)らのグループが発見した。家畜動物に使える抗生物質は種類が少ない上、ヒトと動物が同じ感染症を発症する「人獣共通感染症」が起こった場合に感染抑制できなくなるリスクがあり、家畜の薬剤耐性菌を環境中に放出しないことが求められていた。今後、産学連携で粉末の商用化を目指すという。 ホタテの貝殻を約700度で焼き、粉末状にしたものを家畜の糞便に混ぜ込む手法を採用した(右上の写真は臼井優教授提供) 薬剤耐性菌はヒトの場合も、院内感染など大きな社会問題となっており、一部の病院では抗生物質を減らすために薬剤師主導で投薬制御が実施されている。薬剤耐性菌はヒトだけでなく動物にとっても問題があるとされてきた。ヒトと動物はあまり同じ病気にかからないとされるものの、一度共通して感染すると、狂犬
新聞やテレビ、Twitterでも見かける「○○についての論文が発表されました」というニュースを見かけたことがあるだろう。しかしこのとき、研究者側が多額の掲載料を払っているという事実をご存じだろうか。 研究にも発表にもお金がかかるという、多くの研究者にとって悩ましい状況を描いた漫画がTwitterに投稿された。初めてこの事実を知った人たちからは「研究にもお金がかかるのに、論文を発表するのにもお金がかかるの!?」と驚く声が集まっている。 漫画を投稿したのは、医師で漫画家の永田礼路 (@nagatarj)さん。現在は臨床業務のみで論文を発表する研究業務には携わっていないとのことだが、今回なぜ研究者の苦悩を描いたのか詳しく話を聞いた。 論文に関わる費用についての漫画を投稿したのはなぜですか? 9月4日に開催のコミティア(自主制作漫画誌展示即売会)で何か新刊を出したいと思っていたのが先にありました。
研究成果公開の新たな国際標準に向けた筑波大学の取組 筑波大学人文社会系・池田潤(いけだじゅん) 筑波大学URA研究戦略推進室・新道真代(しんどうまさよ),森本行人(もりもとゆきひと) 2020年4月1日に,国立大学法人筑波大学とオープンアクセス(OA)出版プラットフォームの提供を行うF1000 Research社は,研究分野にとってより適した言語を英語・日本語から選び,研究成果を公開することが出来る,世界初の「オープンリサーチ出版ゲートウェイ」(以下「筑波大学ゲートウェイ」)の開発に向けた契約を締結した。2020年11月の公開を予定している。 日本のOAは着実に進んではいるが,諸外国と比較するとやや出遅れており,リーダーシップを発揮しているとは言い難い。また,過度に英語に依存した学術情報コミュニケーションにも問題がないとは言い切れない。そこで,本学が日本で初めて後述のF1000 Resea
以前、国際会議に呼ばれたときに、事務局から連絡が入った。 「あなたが提出してくれたパスポートの写しに基づいて、どうやっても航空券が買えないのです」 非常に焦った。というのも、パスポート本体のマイクロチップに入っている私の名前と、パスポートに表記されている私の名前が異なるからである。 私のパスポートは「旧姓併記」となっていて、「YUKI KOSEKISEI(SENDA)」となっているが、マイクロチップに入っている情報は、「YUKI KOSEKISEI」である。マイクロチップに入っている情報と航空券の名前が異なってはいけないといわれているので、もしもKOSEKISEI-SENDAなどというハイフンで結ばれて購入されていれば、そのチケットは無効だった。 旧姓をカッコに入れるという、世界的にも例を見ない表記のためにチケットが購入できなかったわけだが、非常に煩わしい。一歩間違えると、非常に取り返しの
松宮孝明・立命館大特任教授=京都市中京区で2021年10月14日午後4時53分、千葉紀和撮影(当時は教授) フェミニズム研究に携わる大学教授らが自民党の杉田水脈(みお)衆院議員にインターネット上で中傷されたとして損害賠償を求めた訴訟は、大阪高裁で5月30日に原告側が一部勝訴した。2020年、日本学術会議の会員への任命を菅義偉首相(当時)から拒否された立命館大の松宮孝明・特任教授は「政治家が詳しくない学問について根拠なく口を出すことは危険だ」と強調する。【聞き手・田畠広景】 立命館大・松宮孝明特任教授 ――杉田氏が研究者に対し、「研究費の不正使用」としたことに、大阪高裁は名誉毀損(きそん)を認めました。このような政治家の言及をどう考えますか。 ◆衆院議員の発言であり、科学研究費補助金(科研費)への政治介入と言えます。単なる不法行為では済まず、憲法問題になります。科研費の審査員は学者が務めます
髙橋 英彦 (たかはし ひでひこ) 大学院医歯学総合研究科 精神行動医科学分野 教授(右) 塩飽 裕紀 (しわく ひろき)大学院医歯学総合研究科 精神行動医科学分野 助教(左) 統合失調症の患者さんの血清や髄液からシナプス分子NCAM1※1に対する自己抗体を発見しました。 抗NCAM1自己抗体はNCAM1のシナプス接着分子機能を阻害することが分かりました。 患者さんから精製した抗NCAM1自己抗体をマウスの髄液中に投与すると、マウスのシナプスの減少や統合失調症関連行動を誘発しました。 抗NCAM1自己抗体陽性の統合失調症患者さんではこの自己抗体が病態の一部を形成している可能性があり、新しい治療ターゲットになる可能性があります。 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科精神行動医科学分野の塩飽裕紀助教と髙橋英彦教授の研究グループは、統合失調症患者さんの一部にシナプス分子NCAM1に対するこれま
プレスリリース 慢性活動性EBウイルス感染症の原因と、身近なウイルスががんを引き起こす仕組みを解明 名古屋大学医学部附属病院(病院長・石黒 直樹)先端医療開発部の 奥野 友介(おくの ゆうすけ)特任講師、同大学大学院医学系研究科(研究科長・門松 健治)ウイルス学の 木村 宏(きむら ひろし)教授、藤田医科大学ウイルス・寄生虫学の 村田 貴之(むらた たかゆき)教授、京都大学大学院医学研究科腫瘍生物学の 小川 誠司(おがわ せいし)教授、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターの 宮野 悟(みやの さとる)教授らの研究グループは、原因不明の難病である慢性活動性EBウイルス感染症※1,2の遺伝子解析※3を行い、その原因を解明しました。その過程で、ほとんどの人には感染しても大きな害のないEBウイルスが、ごく一部の人には血液がんを引き起こしてしまう仕組みが明らかになりました。本研究成果は、英国時
女性研究者4人が、慰安婦問題やジェンダーに関する研究について事実無根の非難をされ、名誉を傷つけられたとして、自民党の杉田水脈(みお)衆院議員に計1100万円の慰謝料などを求めた訴訟の控訴審判決が30日、大阪高裁であった。清水響裁判長は研究者側の請求を棄却した1審京都地裁判決を取り消し、杉田氏に33万円の賠償を命じた。 提訴したのは、大阪大の牟田(むた)和恵名誉教授ら4人で、清水裁判長は牟田氏の請求の一部を認めた一方、ほかの3人の請求は棄却した。 1審判決によると、牟田氏らの研究グループは平成26~29年度、日本学術振興会の科学研究費助成を受けて慰安婦問題やジェンダーなどに関する研究を実施。杉田氏は30年3~7月、自身のツイッターやインターネットテレビなどで研究について「捏造(ねつぞう)はダメ」「国益を損なう」などと発言した。 昨年5月の1審京都地裁判決は、杉田氏の発言は「批判的な意見や論評
発表者 佐藤 佳(東京大学医科学研究所 附属感染症国際研究センター システムウイルス学分野准教授) ※研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan)」(注1)メンバー 佐藤 佳(東京大学医科学研究所 附属感染症国際研究センター システムウイルス学分野准教授) 本園 千尋(熊本大学ヒトレトロウイルス学共同研究センター 感染予防部門感染免疫学分野 講師) 中川 草(東海大学 医学部医学科 基礎医学系分子生命科学 講師) 齊藤 暁(宮崎大学 農学部獣医学科 獣医微生物学研究室 准教授) 池田 輝政(熊本大学ヒトレトロウイルス学共同研究センター 国際先端研究部門分子ウイルス・遺伝学分野分野 准教授) 上野 貴将(熊本大学ヒトレトロウイルス学共同研究センター 感染予防部門感染免疫学分野 教授) 新型コロナウイルスのスパイクタンパク質(注2
ある判決から沸いた「疑念」 いまや日本も中国も、新型コロナウイルスのニュース一色の感があるが、それと一見関係なさそうで、実は大いにあるかもしれない中国の話から始めたい。 先月3日、新型コロナウイルスの震源地である湖北省武漢市から2183kmも北上した吉林省松原市の中級人民法院(地方裁判所)で、「2015年第15号」と呼ばれる汚職事件の裁判の判決が出た。それは、李寧(リー・ニン)被告(57歳)に12年の実刑、及び罰金300万元(約4700万円)、かつ賄賂として得たすべてのものを国庫に上納させるという厳しい判決だった。 李寧被告は、中国の農業部門の最高学府である北京の中国農業大学の教授だった。私の友人に、中国農業大学の卒業生がいるが、確認したらクローン研究の第一線に立つスター教授だったという。 この判決文は、計20ページもある長文で、日本人の私からすれば、「まさか!」と思うようなことが縷々書き
法政大学の田中優子総長は、日本学術会議の新会員として推薦された研究者6人を菅義偉首相が任命しなかった問題をめぐり、「見過ごすことはできません」と抗議する姿勢を大学の公式サイトで示した。 法政大は菅首相の母校として知られ、菅氏の首相選出時に大学は「ご活躍を祈念いたします」とコメントしていた。 研究の質で任命判断は「不可能」 政府は2020年10月1日付で日本学術会議の新会員として99人を任命。しかし、会議側が新会員に推薦したのは105人だった。任命されなかった6人は安保法制や共謀罪法などで政府姿勢に反対の立場を取っていた学者だ。学術会議の新会員に任命されないケースが出たのは初だとされ、その是非が議論になっている。会議は3日に6人の任命を求める要望書を菅首相に提出した。 田中総長は5日、法政大学の公式サイトを通じ「日本学術会議会員任命拒否に関して」と題した声明を発表した。田中総長は、会議が戦時
杉田衆院議員に賠償命令 ネット上発言巡り逆転判決―大阪高裁 2023年05月30日18時51分配信 自民党の杉田水脈衆院議員 自民党の杉田水脈衆院議員によるインターネット上の発言などで名誉を傷つけられたとして、大阪大の牟田和恵名誉教授ら研究者4人が計1100万円の損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決が30日、大阪高裁であった。清水響裁判長は4人の訴えを退けた一審判決を一部変更、牟田氏に対する33万円の賠償支払いを杉田氏に命じた。残る3人の控訴は棄却した。 杉田氏、目立つ女性・少数派差別 判決によると、牟田氏らは2014~17年度、フェミニズムに関する研究で科学研究費補助金を受給し、論文発表のほか、シンポジウムを開催するなどした。杉田氏はツイッターで「税金を反日活動に使われることに納得いかない」と批判するなどした。 判決で清水裁判長は、批判に関しては杉田氏の意見、論評の表明の一部だとして、違
判決後に記者会見する、原告の(左から)古久保さくら・大阪公立大准教授、伊田久美子・同大学名誉教授、牟田和恵・大阪大名誉教授、岡野八代・同志社大教授=京都市中京区で2022年5月25日午後3時41分、千金良航太郎撮影 自民党の杉田水脈(みお)・衆院議員にインターネット上で中傷されて名誉を傷つけられたとして、牟田和恵・大阪大名誉教授ら4人が、杉田氏に計約1100万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が25日、京都地裁であった。長谷部幸弥裁判長(菊井一夫裁判長代読)は「研究者の社会的評価を低下させるものとは認められない」として、請求を棄却した。 原告は関西の女性研究者4人。日本学術振興会から科学研究費(科研費)助成を受け、女性の権利運動や慰安婦問題についての研究を行っていた。 原告側は、杉田氏が2018年3~7月、自身のツイッターやネット番組で、原告らが科研費を不正使用したように疑わせる発言をした
本稿は『現代思想』2019年9月号に執筆した論文の転載である(許可済)。掲載時のままであり、修正は行っていない。ただし、ブログの仕様上、ルビの削除など、表記に若干の変更が生じた箇所がある。 1. はじめに:将来は必要か? 私たちは次世代を生み育てなければならないのか。もしかしたらその必要はないのではないか。だとすると、将来世代との規範的関係をめぐる議論はどのように変わるだろうか。本稿はこの問いを念頭に置きながら、いまだ生まれざる将来世代との関係における「世代間正義(intergenerational justice)」論を考察する。 世代間正義論の基本的な問題設定は、私たち現在世代はいまだ存在せざる将来世代(ときにもはや存在しない過去世代)に対し、いかなる正義の関係にありうるか、というものである。地球環境問題が切迫したものとして叫ばれ始めた1960年代以降、この問題は日増しに強まる実践的重
経済財政運営と改革の基本方針2020 - 内閣府 令和2年7月17日、「経済財政運営と改革の基本方針2020~危機の克服、そして新しい未来へ~」(骨太方針2020)が経済財政諮問会議での答申を経て、閣議決定されました。 骨太の方針2020が閣議決定されました。すでに報道されている各論もありますが、今後の政策にも大きく影響を与えるため、大学に関連する箇所を抜粋して示します。 https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2020/2020_basicpolicies_ja.pdf 第1章 新型コロナウイルス感染症の下での危機克服と新しい未来に向けて 4.「新たな日常」の実現 (ⅲ)「人」・イノベーションへの投資の強化 「新たな日常」の実現に向けた社会変革の推進力となる人材が従来に増して必要となっていることから、教育の充実により、課題設定
「痛みがなければ母親になれないなんておかしい」という考えが浸透し、硬膜外麻酔による無痛分娩の希望者が増えている。 一方、2016年には日本産婦人科医会の妊産婦死亡症例検討評価委員会(厚生労働科学研究費補助金)が、麻酔が直接的な死因となった事例があったことを報告。2017年は無痛分娩をした女性が死亡したり重い障害を負ったりしたケースが相次いで報じられ、刑事訴訟も起きた。厚生労働省は研究班を組織して2018年に安全対策をまとめ、2020年春で2年になる。 今、日本の無痛分娩は安全になったのだろうか? 日本ではまだなじみが薄いが、麻酔科医の世界には帝王切開、無痛分娩、胎児・新生児などの麻酔に特化した「産科麻酔」という専門ジャンルがある。産科医が麻酔を行う施設が多い日本と違い、海外では麻酔は麻酔科医がかけるのが普通で、専門分化も進んでいる。2000年以降、日本にも産科麻酔の研修コースを持つ大学病院
I.科学者・小柴の特殊性 〜 古き良き時代の科学者と現代的な科学者の融合 〜 「研究の中の苦労?夢を追いかけさせてもらっているから、苦労なんて感じない。物理は楽しい。物理をやっていて苦しいと思ったことはない」 科学者と言われたとき、私たちはどんな人物像を思い描くだろうか。形振り構わず、一日中、研究室に引きこもり、研究に没頭している。頭脳明晰であるが、世情には疎く、人付き合いが苦手。周囲からは、「あの先生は偉いけれど、ちょっと世間知らずで・・・」と尊敬と苦笑を交えて語られる、といったところが一般的ではないか。ステレオタイプではあるが、「古き良き時代の科学者」は多かれ少なかれ、このような特徴を備えていたようである。例えば、夏目漱石の門下生でもあった物理学者の寺田寅彦(1878-1935)をモデルに、漱石が書いた『三四郎』の登場人物、野々宮宗八は、「理科大学(今の東大理学部)の穴倉で半年も光線の
那覇地裁 琉球大学医学部・同大医学研究科の男性教授2人が男性講師に対して退職を迫るなどのパワーハラスメントを繰り返していたとして、男性講師が教授2人と琉大を相手に損害賠償計730万円を求めた訴訟で、那覇地裁(平山馨裁判長)が琉大に100万円の支払いを命じていたことが21日までに分かった。 教授2人に対する請求は国家賠償法上の対象とならないとして退けた。原告は教授2人も責任を負うべきなどとして福岡高裁那覇支部に控訴した。琉大側も判決を不服として控訴した。初回期日は4月15日に開かれる。 判決によると、教授が無断で講師の研究データを論文などで使用して発表したため不和になっていたところ、講師の科学研究費補助金(科研費)の申請に不備が見つかった。これに乗じて原告を退職に追い込むため、原告や家族に害悪が及ぶことをにおわせるようなどう喝を含んだ発言があったと事実認定した。平山裁判長は「正規の人事上の手
現在地 Home > 分類でさがす > お知らせ・ご案内 > プレスリリース > 生命科学 > > プレスリリース > 心に描いた風景を脳信号から復元!~生成系AIと数理的手法を用いた新たな技術を開発~ ポイント 画像の線や色、質感、概念などの視覚的な特徴を、人の脳信号1)から読み出す「脳信号翻訳機」を構築。 この「脳信号翻訳機」を用いて、被験者が画像を心に思い浮かべた時の脳信号から視覚的特徴を割り出し、その特徴をとらえた自然な画像に徐々に近づくよう生成系AI2)に描画させることで、心に描いた画像を復元することに世界で初めて成功。 医療・福祉分野への応用が進むブレイン・マシン・インターフェース3)技術への貢献に期待。 概要 量子科学技術研究開発機構(理事長 小安重夫、以下「QST」)量子生命・医学部門 量子生命科学研究所 量子生命情報科学研究チームの間島慶研究員、情報通信研究機構((NIC
神戸大学大学院人間発達環境学研究科の林 創 (はやし はじむ) 教授らは、大人だけでなく、小学生においても、あえて何も言わない「不作為の嘘」は、偽の情報を伝える「作為の嘘」よりも道徳的に甘く判断してしまう傾向が強いことを明らかにしました。この知見は、子どもの道徳性を高めていく指導を行う上で、見逃しやすい点であり、有用な情報となると考えられます。 この研究成果は、11月22日 (現地時間) に、国際学術雑誌「Journal of Experimental Child Psychology」に掲載されました。 ポイント私たちは、作為による悪いことを、不作為による悪いことよりもネガティブにとらえる (不作為の方が気にならない) 傾向がある。これを「不作為バイアス (omission bias)」と呼ぶ。小学生と大人の両方で、嘘の道徳的判断において不作為バイアスが生じ、作為の方を不作為よりも道徳的
スーパーコンピュータ「富岳」で太陽の自転の謎、解ける世界最高解像度計算で太陽の自転分布を世界で初めて再現 千葉大学大学院理学研究院の堀田英之准教授と名古屋大学宇宙地球環境研究所長の草野完也教授は、スーパーコンピュータ「富岳」(注1)による超高解像度計算によって、太陽内部の熱対流・磁場を精密に再現しました。それにより、太陽では赤道が北極・南極(極地方)よりも速く自転するという基本自転構造を、世界で初めて人工的な仮説を用いずに再現することに成功しました。 本成果では、「富岳」の計算力を用いることで太陽と同じ状況をコンピューター上に再現することが達成できたと考えられます。今後、更なる高解像度計算を引き続き実行していくことで、太陽物理学最大の謎「太陽活動11年周期(注2)」の解明に近づくことが期待できます。 本研究成果は、英科学誌『Nature Astronomy』(13 September 20
理論と実践が融合した経営・マネジメントの最新知見を学ぶ会員制サービス「CULTIBASE Lab」は、6月4日(火)より無料提供を開始しました。これまで月額2980円の有料会員限定で公開していた動画コンテンツを含む、延べ900本以上のコンテンツを簡単な会員登録をするだけで無料でご覧いただけます。 CULTIBASE Labのこれまで「CULTIBASE Lab」は、人と組織に対する深い洞察と専門知を有する経営コンサルティングファームである株式会社MIMIGURIが、経営・マネジメントに関する独自の最新知見をお届けするサービスです。 MIMIGURIは文科省認定研究機関*であり、経営・マネジメントに関する研究と実践を往復する中で編み合わせた独自の知見をCULTIBASE Labを通して社会に発信してきました。 CULTIBASE Labは、前身のワークショップデザインの専門知を学ぶ会員制コミ
特集「本当に強い大学」の他の記事を読む 竹内洋氏はこれまでの大学改革の問題点を指摘している。実際この30年間にどんな改革が行われてきたのか。国立大学を中心に振り返りたい。 現在まで続く大学改革の出発点は1991年の大学設置基準の大綱化だ。これにより、画一的だった教育カリキュラムが柔軟化され、各大学が自主的に改革に取り組みやすくなった。それとともに、大学の自律的な変革を求める政策がじわじわと増加していく。 科学技術政策に詳しい広島大学の小林信一副学長は「2000年以降の改革の本質は経費削減と放任だ」と言う。 負のスパイラル 04年の国立大学法人化では運営上の制約を解消し、各大学が自由に改革を進められるようにするとうたわれた。 一方で、人件費など経営の基盤的な経費を賄う補助金である運営費交付金は年1%ずつ減少、その代わりに科学研究費補助金といった競争的資金が増やされる。大学を拡充させるために、
サービス案内としての大学図書館バーチャルツアー 日本大学芸術学部文芸学科:髙野和彰(たかのかずあき) 筑波大学図書館情報メディア系:小野永貴(おのはるき) 1. はじめに 2020年初頭より、新型コロナウイルス感染症の影響により多数の図書館が一時的閉館を余儀なくされ、再開後もサービスを縮小せざるを得ないなど、多くの利用制限が生じた。このような制限のある状況下でも、いかに利用者へのサービス提供を継続し、図書館の持つ社会的機能を維持し続けるかということが、検討されてきた。実際に各地の図書館では、郵送貸出・宅配貸出や遠隔レファレンス、司書による読み聞かせ動画の配信といった、代替サービスの取り組みが迅速に行われ、機能的な補完が目指された。さらに、館外からでも図書館空間を体感できる「バーチャルツアー」のコンテンツを開発・公開する大学図書館も複数登場した。 本稿では、このバーチャルツアーの公開事例を概
注:この記事は、有識者個人の意見です。COVID-19有識者会議の見解ではないことに留意ください。 本論説は、2022年5月から6月にかけて内閣官房で開催された「新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議」(座長永井良三)の報告書とりまとめに先行して、2022年5月25日に事務局に提出した個人的意見書である。感染症法・特措法と運用、情報の基盤・収集・公開、保健所、研究、専門家助言組織、有事の法整備、司令塔のあり方に関する問題点をまとめた。なおこの意見書は、6月21日の座長会見で記者に配布され、約1時間にわたり説明が行われた。 最近のCOVID-19感染状況 概要 わが国の新型コロナウイルス感染者数と死亡者数は主要国よりも少なく、対策は成功したように思われる。しかし、これは現場の努力と国民の高い公衆衛生意識によるところが大きい。その一方で、医療提供体制の逼迫、感染予防の現場や医療現場への
発表者 野尻 太郎 (東京大学大学院農学生命科学研究科 博士課程2年) 福井 大 (東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林 助教) 遠藤 秀紀 (東京大学総合研究博物館 教授) 東山 大毅 (東京大学大学院医学系研究科 特任研究員) 小薮 大輔 (筑波大学プレシジョン・メディスン開発研究センター 准教授) 発表のポイント コウモリの進化過程は長らく論争が続いてきましたが、「共通祖先が飛行能力の獲得→3つの大系統に分岐→2つの大系統が個別に超音波利用能力を獲得」という進化シナリオを突き止めました。 世界各国のコウモリの稀少な胎児標本を大規模に3D解析することで、今回の発見に至りました。 コウモリは新型コロナウイルスを含むさまざまなウイルスの自然宿主とされます。生態や進化に関する研究を進めることは、防疫の観点からも極めて重要です。 発表概要 ハリウッド映画などの影響で獰猛で吸血のイメージ
資金と情報を独占する「感染症ムラ」 新型コロナウイルスと臨床研究 2020年07月26日18時30分 〔図1〕人口10万人当たりのCOVID-19関係論文数(国・地域別) 新型コロナウイルス流行の第1波がほぼ収束し、検証が進んでいる。安倍晋三首相は「わが国の人口当たりの感染者数や死亡者数は、G7、主要先進国の中でも圧倒的に少なく抑え込むことができている。これは数字上明らかな客観的事実です」と日本の対応を誇る。強制力を伴わない要請にもかかわらず、国民の自粛によって感染拡大が収束したことを「日本モデル」と胸を張る。(NPO法人医療ガバナンス研究所理事長・上 昌広) 【新型コロナ】抗体検査は信頼できるか 調査対象と目的を明確に ◇低い国民の評価 ところが、国民の評価は低い。世論調査では、新型コロナに対する安倍政権の対応を60%の人が「評価しない」と回答している。 なぜ、こうした乖離(かいり)が生
国際誌に論文を掲載したいあなたへ。 国際誌に論文が掲載されないのは、 英語力が足りないからでも、 努力が足りないからでもありません。 やり方を間違えていたからです。 全ての悩める研究者へ、 どんな学問分野にも通用する 秘訣を本書で伝授します。 本書の助言に従えば、必ず、国際誌に論文を掲載できます! ●著者紹介 加藤 司(かとう・つかさ) 関西学院大学文学研究科心理学専攻修了(心理学)博士 現在,東洋大学社会学部社会心理学科教授。 著者によるサポートページはこちら http://katolabo.web.fc2.com/support.html ■努力篇 第1部 努力の源泉を作る 1 努力し続ける精神的頑強さ 2 研究者としての誇り 3 凡人であることの認識 4 このままではダメだという危機感 5 目標の設定 6 それでも研究者になりますか 第2部 継続する努力 1 努力を習慣化する 2 無
【連載】松本俊彦「身近な薬物のはなし」(7) はじめに――市販薬乱用・依存の現状 本連載ではここまで、身近な薬物としてビッグスリーのうちの2つ――アルコールとカフェイン――をとりあげてきました。ここでいったんビッグスリーから離れて、別の意味での身近な薬物といえる処方薬や市販薬といった医薬品に寄り道してみます。 今回はまず市販薬です。 第1回で述べたように、今日、精神科医療現場で年々深刻さを増している薬物は、医薬品です。そのなかでも、10代、20代といった若年層で特に問題となっているのが市販薬なのです。 いまから10年あまり前、「脱法ハーブ」などの危険ドラッグ乱用禍が社会を席巻しました。規制強化と新たな脱法的薬物の登場というイタチごっこをくりかえしながら、薬物による健康被害や、薬物使用下での自動車運転による交通事故などの弊害がますます深刻化していく、あの悪夢のような一時期を、私はいまでも鮮明
研究会は1100人を超える登録者にYouTube配信を行い,盛会のうちに終了しました.ご参加ありがとうございました. 日程: 2020年11月21日,22日 【招待講演】 合原一幸,甘利俊一,池上高志,伊庭幸人,蔵本由紀,篠本滋,土屋和雄,西浦廉政 【戦略提案】 石井信,郡宏,寺前順之介,引原隆士,深井朋樹 【特別出演】 塚田稔,設楽宗孝 【討論参加】 青柳富誌生,大泉匡史,樺島祥介,唐木田亮,小山慎介,酒井裕,中尾裕也,中江健 趣旨: 数理モデル解析には高度な解析技術が必要とされてきましたが,現代では様々なアプリケーションが開発され,誰もが手軽に利用できるようになりました.このような変化のなかで,理論研究者はどういう方向を目指せば良いのでしょうか.本研究会では,数理モデリング研究の開拓者たちをお呼びして,彼らがこれまで研究を進めた背景の哲学を語っていただきます.また現在最前線で活躍中の研
目次 要 約 1章 HPV感染とがん 1.1 HPV感染 1.2 HPV関連疾患 1.3 子宮頸がんの症状・診断・治療 1章 引用文献 2章 HPV関連がんの疫学 2.1 日本のHPV関連がんの罹患・死亡の動向:子宮頸がん 2.2 日本のHPV関連がんの罹患・死亡の動向:子宮頸がん以外のがん 2章 引用文献 3章 HPVワクチンによるHPV関連がんの1次予防 3.1 HPVワクチン 3.2 HPVワクチンによるHPV関連がん予防の有効性と安全性 3.2.1 HPVワクチンによる感染予防効果 3.2.2 HPVワクチンによるHPV関連がん予防効果 3.2.3 HPVワクチンの安全性 3.3 日本におけるHPVワクチン接種の経緯・現状 3.4 HPVワクチン接種後の症状とその対応 3.4.1 HPVワクチン接種後に生じた症状:日本の事例 3.4.2 HPVワクチン接種後に生じた症状に関する診療
伊藤 創祐(生物普遍性研究機構 講師) Andreas Dechant(京都大学大学院理学研究科 特定研究員) 発表のポイント 熱力学的な観測量の変化速度と情報の抽象的な概念を結びつけることに成功した。 観測量の変化速度に関する情報による熱力学的な限界を新たに導出した。 有限の熱コストで機能している生体システムにおいて、この熱力学的な限界が情報処理速度に影響している可能性があるため、生体システムの熱力学的な理解が進むと期待される。 発表概要 近年、生体分子などの小さなシステムで、情報という抽象的な概念を考慮する必要性が盛んに議論されています。 代表的な例はMaxwellのデーモン(注1)とよばれる考え方であり、この考え方によると情報という概念も熱力学的なリソースとみなせるとされてきました。 一方で、この情報という概念が熱力学的な観測量とどう関連し影響しうるかについては、現在に至るまで深く考
ウシオ電機株式会社(本社:東京都、代表取締役社長 内藤 宏治)と、神戸大学大学院医学研究科内科系講座皮膚科学分野(錦織 千佳子教授、国定 充講師、山野 希 大学院生ら)の研究グループは、高い殺菌力を持つ222nmの紫外線(UV-C)を反復照射しても、皮膚がんが発症しないことなどを世界で初めて動物実験にて実証し、ヒトの皮膚や眼にも安全であることを報告しました。 今後、医療や日常生活においてヒトへの直接照射による消毒・殺菌の用途拡大など、幅広い応用が期待されます。 この研究成果は、3月29日に、Photochemistry & Photobiology にオンライン掲載され、6月28日に錦織教授がAmerican Society of Photobiology 2020 meeting(Chicago) で招待講演を行う予定です。 なお、本研究は、文部科学省科学研究費助成事業の支援を受けて行っ
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