模擬トンネル内のコンクリートをハンマーでたたき、ヘルメットに装着したビデオカメラと、周波数解析器でデータを収集する作業=静岡県富士市で2021年8月5日午後1時34分、後藤豪撮影 働く現場への人工知能(AI)の導入がさらに広がっている。従来は顧客相談窓口での自動応答など、単純作業が中心だったが、最近では経験と勘がものを言う「たくみの技」にもAIが進出し始めた。背景に何があるのか。職人の仕事が奪われる懸念はないのか――。研究や活用の最前線を取材すると、AIと人間が隣り合う近未来の姿が見えてきた。【後藤豪/経済部、松倉佑輔/デジタル報道センター】 AIが打音の違いを学習 「キン、キン」「ドン、ドン」。8月5日の昼下がり、静岡県富士市の研究機関につくられた模擬トンネル(延長80メートル)内で、高所作業車に乗った山口正毅さん(51)がコンクリートの壁をハンマーでたたいていた。山口さんはコンクリート