「私の体験ではこうだった」「昔はこうだった」…。個人の経験談や信念による発言が横行し、社会的地位のある人間や、現在教育にかかわる人の体験や価値観で施策が決まっていく日本。だが世界を見渡せば、政策のオプションにしろ教育法にしろ、成功例、失敗例、統計的な実証分析に基づいた知見の蓄積が豊富にある。 教育政策にももっと、信念や価値観だけでなく実証分析に根差したKPI(重要業績評価指標)が必要ではないか。数々の国家的な改革に携わってきた竹中平蔵・慶応義塾大学教授に、竹中ゼミの教え子である気鋭の教育経済学者、中室牧子氏がざっくばらんに聞いた。 (構成は片瀬京子) 実は私は竹中先生の教え子なのですが、これまで教育についてしっかりと話を伺ったことはありませんでした。今日は政策の視点から、教育に対するお考えをお聞きしたいと思います。 竹中:そもそも、教育の話をするのは難しいことだと思っています。なぜかという