日本の「いま」は西欧とアメリカの「20年前」である。小熊英二はそういう。なぜ? という疑問の先には1968年がある……。 文:小熊英二 まんが:えだ雀 欧米との「ずれ」 欧米の学者と話していて、ずれを感じるのは、「68年」の位置づけが日本とちがうことだ。彼らのあいだでは、よきにつけ悪しきにつけ、「68年」は何らかの歴史的転機とされている。ところがよく聞いてみると、それは欧米と日本の学生叛乱そのもののちがいというより、それ以後の歴史的経緯のちがいによるところが大きいことがわかってくる。 西欧とアメリカは、73年と79年の石油ショックで、深刻な経済不況を経験した。とくに製造業の衰退は著しかった。OECD諸国は1979年から1993年までに、グローバル化と産業転換で、製造業の雇用が平均して22パーセント失われている。しかも製造業からサービス業・金融業への産業転換は、規制緩和や「自由化」をともな