大学のパンフレットから消えた「複眼的」「学際的」 【内田】最近よく聞く言葉に「深掘り」というのがあります。僕はこの言葉をジャーナリストや学者の口から聞くたびに、微妙な違和感を抱きます。もともと日本語にそんな言葉はないのに、最近みんな実によく口にする。たぶん、それがとても上質な知的作業だという思いがするからでしょう。 ひとつの論件の本質は地中深くに埋められていて、石油や温泉をボーリングするように、「ここ」と掘るところを決めて、そこに垂直にドリルを立てていけば、やがて本質的な情報や知見を掘り出すことができる……そういうイメージを僕はこの言葉から感じるのです。もちろん、「ここ一点」を決めて、そこに垂直に掘り下げることも必要ですけれども、それだけでは足りない。 かつては「複眼的」という言葉がよく使われました。「学際的」というのもよく目にしました。ひとつの問題を多面的に捉え、複数の立場から立体視して
