オタ議論におけるフレーズとして「ひとそれぞれ」「いいものはいい」は強力だ。けどこれらのフレーズが持っている機能は、どの段階においても一定というわけではなくて、むしろ逆の意味を持ってくることがあって、ちょっと厄介。 新参オタ議論の場合なら、これらが果たす役割はリセットボタンだ。つまり、あれがいいとかこれがいいとか喧々諤々議論をして、ひととおりの意見が出揃ったかなと思ったら、「でもやっぱり価値観はひとそれぞれ」とか「いいものはいい、というシンプルな話です」みたいなお定まりの台詞で場の収拾に入る。けど熟練オタの場合には、ひとがそれぞれであるとかいいものがいいというのは前提にしかならないわけなので、リセット効果が無い。つまり「ひとはそれぞれだが、価値観を共有しない他者との関係上で、どこまでなら交歓接点を拡げることができるのか」とか「いいものはいいが、その良さはどこまでがユニークなパッションで、どこ