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ブックマーク / booklog.kinokuniya.co.jp (9)

  • 『国家と音楽家』中川右介(七つ森書館) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「”音楽家には国境がある”」 「音楽に国境はない」というのは真実だろうが、過去の歴史をひもとけば、「少なくとも、音楽家には国境がある」。これが、書(中川右介著『国家と音楽家』七つ森書館、2013年)の重要なメッセージのひとつである。書には、政治に翻弄された音楽家たち(フルトヴェングラー、カラヤン、トスカニーニ、カザルス、ショスタコーヴィチ、バーンスタイン、等々)がたくさん登場するが、「天下泰平」の世ならともかく、20世紀の激動の時代を生き抜いた音楽家たちの生涯を追うと、やはり「音楽家には国境がある」と言わざるを得ない。 著者はすでにこのテーマで何冊かを書いているので、ヒトラー政権とフルトヴェングラーの微妙な関係、当時ナチ党員でありながらワーグナーのあるオペラの演奏上のミスでヒトラーに嫌われたカラヤンの話などをよく知っている読者も少なくないかもしれない。

    『国家と音楽家』中川右介(七つ森書館) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG
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    shoji-no 2014/03/09
  • 『親族の基本構造』 レヴィ=ストロース (青弓社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 『親族の基構造』は1947年に刊行されたレヴィ=ストロースの主著である。レヴィ=ストロースの名を文化人類学の世界で一躍高めるとともに、構造主義の出発点ともなった。 日では刊行から40年もたった1987年になってようやく番町書房から最初の翻訳(以下「旧訳」)が出た。学問的に重要なであるのはもちろん、40年の間には二度の構造主義ブームもあったのに、これだけ時間がかかったのは『親族の基構造』がそれだけ難物だからだろう。 旧訳の翻訳にあたったのは日文化人類学の一方の中心である都立大の研究者たちで、書であつかわれる東シベリアからインドにいたる地域で実地調査した経験のある人も含まれていた。 学問的には申し分ないだろうが、旧訳は読みやすいではなかった。わたしは出た直後に読もうとしたが、第一部の手前で挫折した。 今回もう一度挑戦しようと思いたったが、2001年

    『親族の基本構造』 レヴィ=ストロース (青弓社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG
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    shoji-no 2013/11/29
  • 『国語教科書の闇』川島幸希(新潮社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「もう『羅生門』にはうんざりですか?」 教科書の闇! 国語教科書ビジネスに多少なりとかかわりのある筆者としては、ついドキドキしてしまうタイトルである。闇、暗部、腐敗、狂気、毒婦、猟奇的殺人……つい想像がふくらんでしまう。 そんなセンセーショナルな展開を期待した人は、こののテーマが「なぜ国語の教科書には、『羅生門』、『こころ』、『舞姫』が必ず載っているのか?」という、お世辞にも派手とは言えないものであるのを知って、やや拍子抜けするかもしれない。しかし、がっかりするのは早い。著者はこのタイトルに見合うだけの刺激的な文章で盛り上げてくれるし、調査も丁寧。何より「このことって、案外、重要では?」と立ち止まらせてくれる。途中、一握りのインタビューを根拠に話が進められるあたりは「どうだろうか?」と思わないでもなかったが、著者のメッセージが驚くほど明確なのは美点である。

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  • 『重版出来!』松田奈緒子(小学館) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 1巻も面白かったのです。を「売る」人々の熱い仕事ぶりが真摯に描かれていて、だからこそ重版がかかるシーンはとても感動的で、主人公もかわいくて、「面白いから読みなよ!」と人に勧めたりもしました。 しかし、2巻に、ここまで胸をえぐられるとは。 1巻でを「売る」喜びを知った主人公・新人編集者の黒沢。2巻はを「つくる」過程に重点を置いて物語が進行します。人気連載漫画家・高畑一寸の担当を引き継いだ彼女は、煽り文句を考えるのに四苦八苦したり、他誌からの引き抜きを心配したりしながら、高畑に面白い漫画を描かせようと奮闘します。 この高畑の心理描写がいい。同じ作家として感情移入して読んでいる部分もありますが、とにかく生々しいのです。 自分を人気連載漫画家に育ててくれた編集者に義理を感じている高畑。その一方で、ひとつの作品だけを描き続けていて当にいいのだろうか、という迷いも

    『重版出来!』松田奈緒子(小学館) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG
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    shoji-no 2013/10/11
  • 『隣人が敵国人になる日-第一次世界大戦と東中欧の諸民族』野村真理(人文書院) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 第一次世界大戦中に民族自決が唱えられ、帝国から解放された民族を中心とした近代国民国家が成立して「めでたしめでたし」、という国民教育のための近代史が単純に語れないことが、書からわかる。 オーストリア=ハンガリー二重帝国、ロシア帝国、オスマン帝国といった多民族社会のなかでマイノリティとして生きていた人びとのなかには、すぐに民族国家を思い描くことのできた人びともいれば、しばらくして思い描くことができた人びと、いつまでたってもまったく思い描くことができなかった人びとなどがいた。近代国民国家の形成に翻弄された人びとがいたにもかかわらず、EUの成立、グローバル化のなかで、その意味がなくなろうとしている。第一次世界大戦を契機として、近代とはなんであったのかを問うことのできる地域として東中欧があることを、書は教えてくれる。 著者、野村真理は、つぎのように「はじめに」で述べ

    『隣人が敵国人になる日-第一次世界大戦と東中欧の諸民族』野村真理(人文書院) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG
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    shoji-no 2013/10/02
  • 『カント先生の散歩』 池内紀 (潮出版社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 カントというと謹厳実直な哲学者を思い浮かべる人が多いだろう。毎日規則正しく散歩したので時計がわりになったという逸話がいよいよ気難しそうなイメージを強める。 しかしカントを直接知る同時代人の書簡や回想によると、実際は座をとりもつのがうまい社交好的な人物だったらしい。 当時の大学の教師には黒ずくめで通したり、身なりに気をつかわない人が多かったようだが、カントは流行に敏感でお洒落だった(表紙の黒服のカントはおかしい。もっと派手な服を着ていなければ)。通いの召使には白と赤のお仕着せを着せていた。白と赤が好きだったからだ。 授業も形而上学、論理学、神学、倫理学といった難しそうな科目だけではなく、自然地理学と実用的人間学という「通俗的」な科目も担当していた。この二つはたいそうな人気で、学生以外も聴講にきていた。 書は一般向けのではあまりふれられてこなかった社交的なカン

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    shoji-no 2013/09/25
  • 『人類20万年 遙かなる旅路』 アリス・ロバーツ (文藝春秋) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 2009年にBBCで5回シリーズとして放映された「The Incredible Human Journey」の書籍化である。異なる立場の意見も丁寧に紹介されており、現時点で人類のグレート・ジャーニーものとしてはもっとも内容豊かで信頼できるだと思う。 著者のアリス・ロバーツは医師でバーミンガム大学で解剖学を教えるかたわらサイエンス・コミュニケーターとして活躍している。彼女のサイトを見ればわかるように大変な美人で、宣伝文句風にいえば美しすぎる解剖学者である。 解剖学と関連の深い古人類学の学位をもち、最近河出書房から翻訳の出た『人類の進化大図鑑』(以下『大図鑑』)も彼女の編著である。『大図鑑』を見ればわかるが、サイエンス・コミュニケーターとしての実力は第一級である。 「The Incredible Human Journey」では案内役として世界各地の現場に飛び、

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  • 『[銀河鉄道の夜]フィールド・ノート』寺門 和夫(青土社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「謎解き[銀河鉄道]」 宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」はややこしい作品だ。読むによって印象が変わる。というか、内容が変わる。 学生時代、「銀河鉄道の夜」でレジュメを書くことになり、参考のため『「銀河鉄道の夜」とは何か』(村瀬学著、大和書房)というを読んだ。著者の村瀬氏が「(賢治によって)最終稿では削られてしまった」と書いていた部分、「セロの声」や「ブルカニロ博士」に関する記述になぜか見覚えがあった。 おっかしいなあ、と思いつつ手元にあった角川文庫版『銀河鉄道の夜』(平成3年7月30日改版66版。改版の初版は昭和44年発行)を見てみると、やはり「セロの声」も「ブルカニロ博士」も登場していた。で、書店に行って新潮文庫版を見てみると、セロも博士も登場しないのだ。当時の書店には、内容が微妙に違う「銀河鉄道の夜」が同時に並んでいたのだ。 以来、私にとって「銀河鉄道の夜」

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    shoji-no 2013/06/28
  • 『韓国が漢字を復活できない理由』 豊田有恒 (祥伝社新書) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 親韓派による韓国の漢字廃止批判である。 豊田有恒氏は『宇宙戦艦ヤマト』の設定者として有名だが、ヤマトタケルを主人公にしたヒロイック・ファンタジーを手がけたあたりから日の古代史や朝鮮半島の歴史に関心を広げ、そちらの方面の著作が多くなった。軍事政権という暗いイメージしかなかった1970年代から韓国を50回以上も訪れ、学ぶ人がまだあまりいなかった韓国語をマスターして交友関係を広げてきたという。昨今の韓流ファンとは年季のはいり方が違うのだ。 豊田氏は朝鮮半島の人々と文化を敬愛するがゆえに韓国の漢字廃止政策を大変な損失と嘆き、年々過激化していくハングル至上主義に警鐘を鳴らしている。 漢字廃止が文化の継承を危うくし人々の思考を浅くしているという批判は呉善花氏の『漢字廃止で韓国に何が起きたか』でもみられたが、呉氏の批判の要諦は漢字を使わないと同音異義語が判別できなくなることと、関

    『韓国が漢字を復活できない理由』 豊田有恒 (祥伝社新書) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG
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