デュルケムの『自殺論』は,社会学の古典中の古典として知られています。個々人の私的な事情は一切排斥し,自殺の社会的要因を手堅い統計分析で究明しています。 http://www.chuko.co.jp/bunko/1985/09/201256.html その基本的なトーンは,社会的連帯が弱まるほど自殺率は高くなる,しっかりとした集団につなぎ留められていない人ほど自殺しやすい,というものです。社会的存在としての人間の様が,データで示されています。「人は集団に属することなくして,自分自身を目的としては生きられない」とは,本書の名言です。 本書では,18~19世紀のヨーロッパの統計をもとに,属性別の自殺率が算出されています。原書が出たのは19世紀末で,コンピュータはおろか,電卓すらなかった時代です。統計局の友人タルドの協力を得たとはいえ,手作業であれだけのデータを揃えるのは,膨大な労力を要したことで