年末恒例の毎日新聞の「2010年この3冊」が12月12日と26日に掲載された。毎日新聞の書評執筆者35人が105冊の本を選んでいる。その中から私が興味を持った本を挙げてみた。*を付けた名前がその本の選者だ。 * *江國香織(作家) ●ラッタウット・ラープチャルーンサップ「観光」(ハヤカワepi文庫) 丁寧な手つきが印象的な1冊で、収められた7編すべてが楽しい。なかでもカンボジア人の少女の話「プリシラ」と、老人(アメリカ人男性)を描いた「こんなところで死にたくない」は忘れられない。 ●ウェルズ・タワー「奪い尽くされ、焼き尽くされ」(新潮クレスト・ブックス) その荒涼としたタイトルにもかかわらず、読んでいるうちに人間を好きになってしまう1冊。夜に戸外で、1本だけ灯されたろうそくの火を、ものすごく温かくあかるいと思う感じに似ている。現代のアメリカの、ごく普通(らしい)人々が描かれた9編。 ●ミラ