宇宙が始まる前には何があったのか? / ローレンス・クラウス(青木薫 訳) / 文藝春秋 このタイトルは、人類にとって究極の問いだな。いかにしてこの宇宙は誕生したのか。言い方を変えれば「なぜ何もないのではなく何かがあるのか」。この問いに対して、絶対に真実を確かめることはできないけれど、こうあるはずだという答えがどうやらわかってきたらしい。原題がその答えとなっている。『A Universe From Nothing』、そう私たちが住むこの宇宙は無、空間も時間もない状態から現れたらしいのである。 無から何かが、それも宇宙ができるなんてバカげてる。なまじ科学をかじった人はそう考える。エネルギー保存則はどうなるんだ、何も無い状態からエネルギーが生じるはずがない、と。しかしここ数十年で劇的な進歩を遂げた宇宙論の最前線では、そんな生半可な常識は通用しないらしい。相対性理論と量子論と観測結果を総合すれば