<議会発祥の地イギリスの混乱はヨーロッパの長い苦難の歴史の始まりなのか> 議会制民主主義は多数決のゲームである。利害対立を殴り合いや殺し合いにしないために、多数を取ったほうが「勝つ」ルールを皆が受け入れて成り立っている。 しかし、何が「多数」であるかは、実はそれほど明白ではない。上下院の票が逆転することもあるし、大統領と議会が対立することもある。それでも何が「多数」であるかを、人為的に決めるための仕組みを各国の政治機構は持っている。最古の議会制を持つイギリスでも、崩壊したワイマール議会制の反省の上につくられたドイツでも、それぞれ違う仕組みながら、それは他国がモデルとするほどに機能してきたはずだった──つい昨日までは。 欧州における統治機構が機能不全に陥っている。筆頭はイギリスだ。2016年に国民投票でEU離脱を選んで以来、イギリス政治は漂流を続けている。2019年9月、イギリス議会はその憲