サブタイトルに「書きことばが揺れた時代」とあります。これを見ると、百年前≒明治期に、それまで安定していた日本語の書きことばが「揺れた」という本なのかと思います。しかし読んでみると話は少し違っていて、そ…れまで揺れ続けていた日本語表記が標準化に向かったのが明治期だったということです。 明治より前の日本語では、漢語は外来語であると(今よりかは)強く意識されていました。それがますます和語に溶け込んでいくのが明治期以降の流れで、ほかにも印刷物の普及や、学校教育による標準化で、現在の書きことばが出来上がっていく様子が描かれています。むかしは崩し字の活字まであったとか、トリビア的な要素も多くて楽しめます。 本書で少し気になるのは、とにかく事例が多く取り上げられているのですが、それらを総括して大きな流れを考察したりするところが少ない点。著者もあとがきで、自らの研究スタイルを「虫瞰」と称しています。ワタク