◆PART1:バルトーク、理知的に思考するオカルト世界 ◆吉松隆の左脳(談)「バルトークの音楽について考えると、いつも右脳と左脳とのバトル・トークになるんですよね。 どうしてかと言うと、この人の音楽って多面体なんですよ。知的で晦渋だと思ってると結構明るくて脳天気だし、真面目一辺倒かと思ってると意外に皮肉屋で遊び心がある。根底にあるのは祖国ハンガリーの土着の民族音楽なんですけど、それにR=シュトラウスやドビュッシーの近代和声とストラヴィンスキーの原始主義的リズムの味付けが加わり、さらにシェーンベルクの十二音に対抗するかのような知的作曲法がその上にかぶさってる。 この、まるっきり異質で本来は混じり合いっこない素材3つに固執した挙げ句の個性こそが、バルトークの面白さであり、わけの分からなさなんですよね。 それに、この人、語法が民族的と純粋思考的との間を揺れているわりには、文学的には結構オカルト趣