YENTOWNに所属するラッパーのkZmがリリースした2ndアルバム『DISTORTION』は、間違いなく今年上半期の日本のラップの話題作だろう。前作『DIMENSION』も十八番のダークでエネルギッシュなトラップからメロディックなフロウまでデビュー作とは思えないクオリティの作品だったが、今作ではダンスミュージックやトラップに対する考え方の変化により、サウンド面でも幅が広がっている。 さらに前作から変化した部分はゲスト陣の充実だろう。前作はYENTOWNのメンバーが中心となっていたが、今作では楽曲のテイストに合わせたラインナップとなっており、前作にも参加していたBIMや5lackに加え、下の世代のTohjiやLEXも名を連ねている。新世代への葛藤からも抜け出して傑作を作り出したkZmに話を訊いた。 取材・構成 : 和田哲郎 - まずはリリースおめでとうございます。アルバムの制作自体はいつか
2018年末、いつものようにFNMNLのプレイリストからチェックした曲を個別に調べていく中で、出会ったのがOdunsi (The Engine)『rare.』という折衷的で風変り、そして幻想的なアルバムで、その作品が私とAlté(オルテ)シーンとの邂逅だった。後に彼がリリースしたシングル『Better Days / Wetin Dey』は私を虜にし、彼は今月待望の新譜を出したばかりである。 2016年のDrakeによる"One Dance"やWizkidの世界的成功で、アフロビーツが世界中に伝播していく中で、2017年ごろから私の中で明らかに音質や細かい表現の部分で、外への発散ではなく内面的に蠢くような作品を出していたアフロビーツの一団が気になりだした。Newagemuzik、Ceeza Milli、Runtown、One Acen、WSTRN等がそうだが、前述のOdunsi (The E
featured 【特集】岡田拓郎 + duenn 『都市計画(Urban Planning)』| 2人が選ぶCOVID-19以降の都市の音楽 先日ソロアーティストとしての2ndアルバム『Morning Sun』のリリースをアナウンスした岡田拓郎と、Merzbow、Nyantoraと共に活動するエクスペリメンタルユニット3RENSAや多くの美術館、美術展への音楽提供などで知られるサウンドアーティストのduennによるコンセプトアルバム『都市計画/ Urban Planning』が本日5/20(水)に発表となった。 これまで王舟&BIOMAN、Jim O'Rourke、Ana Da Silva & Phewの電子音楽作品を発表してきたNEWHERE MUSICからのリリースとなった本作は、岡田とduennのディスカッションで生まれたキーワード「都市の音楽」から始動。「現代において、生活の中に
昨今世間を何かと賑わせているローファイヒップホップ。チルかつメロウなメロディとシンプルなドラムパターンを特長とし、その聴きやすさから人気を不動のものとしつつある。 ローファイヒップホップというジャンルは2016年ごろより流行し、YouTubeの生配信という独特のフォーマットで主に聴かれている。日本のアニメのアートワークを用い、また楽曲自体もアニメのサウンドトラックをサンプリングしたものが多かったために、日本のインターネットでも徐々に知名度を上げていった。 ローファイヒップホップの音楽的な起源は一般的にNujabesに代表されるジャジーヒップホップにあるとされる。またShigetoやTeebs といったビートシーンのプロデューサーたちのサウンドの影響もあるだろう。 あるいは、2012年頃よりインターネットで爆発的な広がりを見せたVaporwave、さらにはその源流となったチルウェイヴからの影
人気ゲーム『フォートナイト』上で開催され、全世界から1000万人以上のアクセスを集めたTravis Scottによるライブイベント『Astronomical』。巨大なTravis Scottがゲームの中を暴れ回るなど、ビジュアルの世界観の完成度は音楽好きもゲーマーも興奮させたのは間違いない。ゲームとラップシーンにとって画期的な出来事だったのは間違いないが、しかしこれ以前にもラップとゲームを繋げる出来事は起こっており、長い間の蜜月関係が結晶化したのがTravis Scottの『Astronomical』だったのだ。 今回FNMNLではラップとゲームの両方に精通するzcay氏に、極私的なラップとゲームを巡る14の印象的な出来事をピックアップしてもらった。記載されているのは、あくまで一例だが、これを読めばラップとゲームを巡る関係性の一助にはなると言えるだろう。 1. DrakeとNinjaと『フ
featured 【対談】audiot909 & mitokon | 南アフリカ発の新たなダンスミュージック「Amapiano」の魅力とは? 南アフリカでは現在、「Amapiano」という新たなダンスミュージックが爆発的な流行を見せている。南アフリカのダンスミュージックといえばダークで呪術的なサウンドを特徴とするGqomがベースミュージックのファンを中心に流行を見せたことも記憶に新しいが、AmapianoはGqomとはまた異なる独特のドラムパターン、「ログドラム」なる独自のパーカッションやシェイカー、またメロウなキーボードを用いた浮遊感のあるサウンドを特徴とする。 この全く新しいダンスミュージックについて、今回は日本でいち早くAmapianoについての情報を発信し幡ヶ谷Forest Limitでパーティ『TYO PIANO』を開催、Free Soulで知られる橋本徹や水曜日のカンパネラのケ
デビューアルバムとなる『スチャダラ大作戦』のリリースから幾星霜。J-POPに日本語ラップの存在を知らしめた小沢健二との大ヒット作“今夜はブギー・バック”や、「1にビート、2にベース、3、4がなくてあと余談」という名キャッチを生み出した『5th Wheel 2The Coach』、ソリッドなビートとラップに展開した『FUN-KEY LP』、BUDDHA BRANDとのドファンキーなコラボ“リーグ・オブ・レジェンド”、90年代音楽シーンのヒーロー(鬼子?)同士がタッグを組んだ電気グルーヴ×スチャダラパー……挙げていけばキリが無さすぎるほどの、作品やムーブメント、カルチャーを生み出してきたスチャダラパーが、デビュー30周年を迎えた今年、アルバム『シン・スチャダラ大作戦』をリリースする。 ……と、大上段に振りかぶってみたが、今作でもSDPの「いつも通り」感は、もはや感動すら覚える。ナンセンスに見せ
再燃するUKガラージ/2ステップとは何か? ここ数年、UKガラージ/2ステップの何度目かのリバイバルが来ている。そしてUKイギリスではPrince Of UK Garageことブリストル出身で西ロンドンを拠点とする新鋭DJ/プロデューサーConductaがプロデュースしたAJ Traceyの”Ladbroke Grove”が新世代のUKガラージ/2ステップサウンドで2019年10月UKシングルチャートの3位を記録、いよいよUKガラージ/2ステップの復活は本物になってきたと言えそうだ。 2019年には、そんなUKガラージ再燃の象徴的存在Conductaが初来日、東京〜大阪をツアーした。ここ日本でもそんなUKGリバイバルに刺激を受け、新世代のDJ/プロデューサー達が、刺激的なコラボレーションを生み出しつつある。先日リリースされたJUBEEの”JOYRIDE feat. SARA-J”やDaic
韓国で生まれ育ち、現在は大阪を拠点に活動している移民ラッパーのMoment Joonが、3月に1stアルバム『Passport & Garcon』をリリースした。外から見られるラッパー・外国人としての自分(Passport)と、その姿の裏にある子供っぽい自分(Garcon)の両面を描いた本作は、ビザ、アルバイト、差別、舞台、ヒップホップなどMoment Joonを取り巻く世界を物語にしている。 1人のアーティストの様々な顔を見せてくれる本作について、著書『ミックステープ文化論』などで知られる、当代一のヒップホップ批評家・小林雅明がMoment Joonにメールインタビューを敢行した。 質問・構成:小林雅明 写真 : 小原泰広 - ご自身以外のヒップホップ作品で、最近興味深く思われたものを教えてください。 Moment Joon - モーメント・ジューンというアーティスト知ってますか?最近ア
“Welcome To The Party”の大ヒットによって一躍スターとなったPop Smokeを筆頭に、現在のヒップホップシーンの中で一つの大きな波となったブルックリンドリル。シカゴ、UKに続き新たに生まれたブルックリン独自のムーブメントは、一体どのようにして発展したのだろうか? そもそも「ドリル」というジャンルは2010年前後、Chief Keef、Lil Reese、G Herboらシカゴのラッパーたちの登場によって成立した。Young Chopに代表されるプロデューサーたちによる凶悪な雰囲気が際立ったビートの上で、極度に暴力的な内容をリアルかつ詳細にラップするスタイルは衝撃的であり、その流れはロンドンへと波及。1011、67といった匿名性の高いグループ名、グライムのビートやフロウとの合流などを経て、独自の「UKドリル」シーンが形成されている。 そして、2017年にブルックリン出身
2019年も終わりを迎え、上半期に引き続き2019年リリースされたアルバムの中からFNMNL編集部によってベストアルバムとして厳選した40枚をコメントと共に紹介していく。登場順序は作品名のA~Z順となっている。 1. African Giant - Burna Boy 2010年代下半期の大きなトピックといえばアフロビーツシーンの台頭。従来のアフロポップにR&Bやヒップホップなどの要素をフュージョンさせたサウンドはナイジェリアを中心に、多くのアフロディアスポラが住むUKをはじめ、USシーンにも普及。USからのアフロビーツへの回答ともいえるGoldLinkのアルバムも記憶に新しい。アフロビーツを巡る状況がこれまでにないものとなった時にリリースされたのが Burna Boyのアルバム『African Giant』だった。Burna Boyは、2016年ごろから世界的な注目を集め始めた唯一無二の
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