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ブックマーク / hiko1985.hatenablog.com (65)

  • 福澤克雄『VIVANT』 - 青春ゾンビ

    TBSドラマ『VIVANT』がおおいに盛り上がっている。個人的には心の1になるような作品ではないけども、“テレビドラマ”というジャンルを愛好するものとしてはテレビが巻き起こす、この熱狂がとてもうれしい。実際のところ、おもしろいのだ。ツッコミどころ満載ながらも、莫大な予算感の壮大なスケールで黙らされてしまう。このおもしろさと支持のされ方の秘訣は、『VIVANT』に息づく “浦沢直樹”感ではないだろうか。『MASTERキートン』『MONSTER』『20世紀少年』・・・モチーフやルック、謎が謎を呼び伏線を回収していく筋運びなどがどこか似ていて、この国のエンターテインメントの中道とでも言うべき浦沢直樹作品との相似が、『VIVANT』の圧倒的な大衆性を支えているように思う。*1 登場人物たちが常にマージナルな立ち位置を貫いているのもおもしろい。乃木(堺雅人)は、野崎(阿部寛)は、ノーゴン・ベキ(役

    福澤克雄『VIVANT』 - 青春ゾンビ
  • 道路交通看板「静かに」について - 青春ゾンビ

    夜が更けた帰り道、親の運転する車の窓から見上げる、「静かに」と書かれた青い看板が好きだった。お出掛けが終わってしまう“寂しさ”と、知っている場所に帰ってきた“安心感”がないまぜになったような感覚。幼心に芽生えたちょっとだけ複雑な感情が、あの看板に今でも宿っているような気がする。 そもそも、道路標識というものは、運転中にドライバーが目にするものだから、注意喚起するわりには情報量が少ない。じっくり読ませてしまったら事故を起こしてしまうから。「結局のところ、どういう意味なんだっけ?」と混乱することもあるが、効率や機能性を追い求めるこの情報社会において、あの“抜け感”がちょっと心地よいのだ。 個人的に「普通自転車等及び歩行者等専用」(得体の知れない物語性*1)とか「動物が飛び出すおそれあり」(シカ、タヌキ、サル、ウサギなどバリエーションがあるところかわいい)の標識あたりが好き。 そういった道路標識

    道路交通看板「静かに」について - 青春ゾンビ
  • 宮﨑駿『君たちはどう生きるか』 - 青春ゾンビ

    宮﨑駿による『不思議の国のアリス』(もしくは宮沢賢治の童話)とでもいうような、イマジネーションの破茶滅茶なまでの躍動。『千と千尋の神隠し』以降の作品に見られた傾向がさらに押し進み、ストーリー・テリングとしては、明らかに混乱している。しかし、それは宮﨑駿の“世界”に対する誠実な態度であるように思う。シンプルで明瞭なストーリーで語り切れるほど、この複雑で暗澹たる現代は生易しくないし、そもそも人間というのはそんなに簡単なものではない。たとえば、この映画における主人公の父親。彼にいい印象を持つ観客は多くないだろう。転校初日に車で学校に乗りつけたり、子どもの喧嘩に介入したりするさまなどは、まさにエーリッヒ・ケストナーが『飛ぶ教室』で書いた大人への批判がそのまま当てはまる。 どうしておとなはじぶんの子どものころをすっかり忘れてしまい、子どもたちにはときに悲しいことたみじなことだってあるということを、あ

    宮﨑駿『君たちはどう生きるか』 - 青春ゾンビ
  • 『かまいたちの知らんけど』濱家が涙…スーパー・イズミヤへ最後の挨拶 - 青春ゾンビ

    MBS製作『かまいたちの知らんけど』の9月12日放送の特別編「37年間通ったスーパー イズミヤへ濱家最後の挨拶」が実に素晴らしい内容だった。関西圏外にはあまり馴染みのない番組かもしれないが、今はTVerという素晴らしいメディアがありますのでぜひチェックして欲しい。 かまいたちの濱家の生まれ育った大阪市東淀川区にある上新庄という町で、彼が生まれる前から営業している大型総合スーパーイズミヤ。濱家にとって、幼少時代から家族や友人との思い出の詰まった大切な場所だ。そのイズミヤ上新庄店がこの8月末をもって47年間の歴史に幕を閉じるという。濱家はイズミヤに感謝と別れを伝えるべくロケを敢行する。 ショックすぎる…。 フードコートのチョコマーブルアイス、世界一美味いポテト。 おもちゃ売り場、ジャンケンのゲーム機、初めてCD買ったお店、横の屋さん。 たまに開催されるガラガラ福引き。 服もも全部イズミヤで

    『かまいたちの知らんけど』濱家が涙…スーパー・イズミヤへ最後の挨拶 - 青春ゾンビ
  • 坂元裕二『大豆田とわ子と三人の元夫』1話 - 青春ゾンビ

    <A面> オレンジ色の上下のジャージを身に纏った大豆田とわ子(松たか子)が、オレンジ色の布で囲われた公園を歩いている。このはじまりが象徴的なのだけど、この『大豆田とわ子と三人の元夫』というドラマにはあまりにも“オレンジ”に満ちているのだ。大豆田とわ子が入店するお洒落なパン屋の軒先、大豆田とわ子の住む部屋のカーテンとソファーと照明、大豆田とわ子が拾うパスタ、大豆田とわ子が出席した従兄弟の結婚式会場の照明、大豆田とわ子の娘が飲むオレンジジュース、大豆田とわ子の3番目の夫の髪色、2番目の夫の着るアウターの切り返し、1番目の夫の名前の響き(ハッサク*1)、大豆田とわ子の履くサンダル、大豆田とわ子の持つバッグ、大豆田とわ子の同僚の洋服、シロクマハウジングのオフィスの証明、ミニチュアの家の屋根、大豆田とわ子のiPhoneの背景トーン、大豆田とわ子が焦がれるカレーパン、大豆田とわ子の履く、大豆田とわ子

    坂元裕二『大豆田とわ子と三人の元夫』1話 - 青春ゾンビ
  • PIZZICATO ONE『わたくしの二十世紀』 - 青春ゾンビ

    菊地成孔が率いたSPANK HAPPY(第2期)の活動の成果に、煌びやかなピチカート・ファイヴの中から、小西康陽のクリエイトの源をわかりやすい形で(それもフェティッシュに)曝け出した、というのがあるのではないだろうか。それは凡庸な言葉で説明してしまえば、資主義の街に漂う静寂な孤独。そして、諦念と憧れが織り交ざった倒錯した死生観。タナトス、エロス、ポップミュージック。 私の声が聴こえる? という問いかけから始まるPIZZICATO ONE『わたくしの20世紀』は、ピチカート・ファイヴのゴージャスな装飾に隠されたその”ヴォイス”に焦点を当てた作品である。2015年を『わたくしの20世紀』という掛け値なしの傑作がポップミュージック史に刻まれた年として記憶したい。ピチカート・ファイヴ後期の楽曲を中心に、これまでのキャリアの中で今、改めて聞かれて欲しい楽曲を選び抜き、西寺郷太、小泉今日子、甲田益也

    PIZZICATO ONE『わたくしの二十世紀』 - 青春ゾンビ
  • プロフェッショナル仕事の流儀「 生きづらい、あなたへ~脚本家・坂元裕二~」 - 青春ゾンビ

    「私 この人のこと好き 目キラキラ」みたいなのは そこには当はない気がするんですよね バスの帰りで雑談をして バスの車中で「今日は風が強いね」とか 「前のおじさん寝ているね」「うとうとしているね」とか そんな話をしながら 「じゃあね」って帰って行って 家に着いて 一人でテレビでも見ようかなって思ったけどテレビを消して こうやって紙を折りたたんでいるときに 「ああ 私 あの人のこと好きなのかもな」って気が付くのであって 小さい積み重ねで 人間っていうのは描かれるものだから 僕にとっては大きな物語よりも 小さい仕草で描かれている人物をテレビで見るほうが とても刺激的だなって思うんですよ 番組で発されたこの言葉に、坂元裕二の書くテレビドラマの魅力が端的に言いまとめられている。何の意味も、何の価値もないように見えることに、“当のこと”は詰まっている。それを教えてくれるのが坂元作品だ。このドキュ

    プロフェッショナル仕事の流儀「 生きづらい、あなたへ~脚本家・坂元裕二~」 - 青春ゾンビ
  • 芝山努『ドラえもん のび太と夢幻三剣士』 - 青春ゾンビ

    『ドラえもん のび太と夢幻三剣士』(1994)という映画がある。決して出来のいい作品ではない。1980~90年代におけるドラえもん映画の黄金期と照らし合わせてみると、そのストーリーテリングには雲泥の差があると言っていい。おそらく今後もリメイクの対象になることはないだろう。原作者である藤子・F・不二雄も「失敗作」とはっきりと語っているほどで、作品は構成力に欠け、物語の細部の繋がりは曖昧だ。しかし、その不明瞭さが故、今でもカルト的人気を呼び続けてもいる作品でもある。個人的にも妙に心惹かれるものがあって、折に触れて観返している。 現実の世界は、どうしてこんなにつらくきびしいのだろう・・・。 こんな、あまりにもブルージーなのび太の嘆きから物語は始まる。寝坊や遅刻でママや先生に怒鳴られ、ジャイアンとスネ夫にバカにされる。大好きなしずかちゃんにすら冷たくあしらわれてしまう。夢の中では完璧な自分、しかし

    芝山努『ドラえもん のび太と夢幻三剣士』 - 青春ゾンビ
  • 坂元裕二『anone』2話 - 青春ゾンビ

    <社会の理からはみ出す> 1話のエントリーで孤児とも天使とも形容した今作の登場人物たちは、つまりは社会というシステムからの追放者である。ネグレクトされ”家なき子”としてネットカフェで寝泊まりする辻沢ハリカ(広瀬すず)。フランチャイズチェーンに加盟した結果、父から受け継いだ土地を企業に奪われてしまう持舵(阿部サダヲ)。丸の内の商社に努めるキャリアウーマンであったが、男性社会において出世街道を外された青羽るい子(小林聡美)。そして、血の繋がりを理由に家族という共同体を除外された林田亜乃音(田中裕子)。誰もが社会から居場所を奪われ、傷ついている。スーパーの3割引されたパックの総菜を、椅子に座ることもなく立ったまま発泡酒で胃に流し込む亜乃音の姿は、花房(火野正平)が言うところの、”人様の秘めた哀しみ”というのを体現している。だが同時に、そういった社会性から逸脱したふるまいの放つ生々しさが、妙に胸

    坂元裕二『anone』2話 - 青春ゾンビ
  • 坂元裕二『anone』3話 - 青春ゾンビ

    突然の拳銃の介入、3話はこれまで以上にダーティーで穏やかではない。しかし、シリアス一辺倒というのでなく、細部のやりとりはコミカルさで彩られてもいる。川瀬陽太が演じる西海隼人という複雑な人間の存在が、物語を混乱させているのだ。モデルガンを改造した拳銃で、上司を撃ち殺した凶悪な犯人。であるはずなのに、3話を通して印象に残るのはその残虐さよりも、人間としての”可愛げ”だ。犯罪行為の真っただ中であるにも関わらず、嬉々として銃についての知識を語り、子供番組に癒され、「だって可哀想じゃん」と迷いフェレットを飼い主の元に届けてあげる。人質であるはずの持(阿部サダヲ)との会話は、一丁の拳銃さえなければ、幼馴染との他愛のないそれにしか聞こえない。この西海という男の在り方を、青羽(小林聡美)の言葉通り「頭が悪いだけ」と切り捨ててしまうことも可能だが、この善/悪のスイッチのシームレスな切り替えこそ、”人間その

    坂元裕二『anone』3話 - 青春ゾンビ
  • 野木亜紀子『アンナチュラル』1話 - 青春ゾンビ

    うおー。思わず声が出てしまうほどにおもしろいではありませんか。脚、役者、演出、編集、劇伴、衣装・・・あらゆる要素が90点越えを叩き出す超優等生の登場である。脚は野木亜紀子。『空飛ぶ広報室』(2013)、『重版出来!』(2016)、『逃げるは恥だが役に立つ』(2016)などで高い評価を得た、原作もののスペシャリストがついにオリジナル脚テレビドラマを手掛けるということで、期待値は高かったのですが、その予想の遥か上をいく完成度。ここ20年のテレビドラマの軌跡と叡智の結晶というような感触を覚える。そう考えると、”遺体解剖”という作品のモチーフはあまりにもはまっている。野木亜紀子は相当のテレビドラマフリークであると聞く。 テレビドラマの過去のアーカイブス(≒死体)を暴き出し、「このドラマは何故おもしろいのだろう?」というのを徹底的に究明し、未来へと繋げた成果が、この『アンナチュラル』なのであ

    野木亜紀子『アンナチュラル』1話 - 青春ゾンビ
  • 坂元裕二『anone』1話 - 青春ゾンビ

    坂元裕二の新作ドラマ『anone』の放送がついに開始された。ジャンルレスゆえに、現段階ではまだまだ漠然とした印象だが、イメージを織り重ね、ストーリーを形作っていくその筆致はやはり郡を抜いている。1話における白眉は、偽札を巡る歪なカーチェイスで3つの群像劇が交差していくスペクタクルだろうか。その果てに、「が脱げてしまう」という情けないアクションで人物たちがひっそり結びついてしまうという描き方には、「坂元作品を観ている」という興奮を覚えた。序盤で「名言っていい加減ですもんね」と自虐的に言及しているにも関わらず、やっぱり坂元裕二のドラマは名言でまとめられてしまう。坂元裕二の名言砲、坂元裕二ドラマは名言の癖がすごい・・・気持ちはわからないでもない。「お金じゃ買えないものもあるけど、お金があったら辛いことは減らせるの」も「大丈夫は2回言ったら大丈夫じゃない」も確かに良いのだけども、やはりその真骨頂

    坂元裕二『anone』1話 - 青春ゾンビ
  • ミツメ『エスパー』 - 青春ゾンビ

    なんでもわかりあえてしまう2人。そんな”誰か”と出会ってしまうこと、それは生きる喜びを見つけたに等しい。しかし、そんな関係を「エスパー」と名付けた瞬間に、世界はなにやら不穏な気配を帯び始める。『ストレンジャー・シングス』への明確なオマージュが捧げられたミュージックビデオに引っ張られ、そんなフィーリングを想い描いてしまう。暗く邪悪な世界は、平穏な日常を薄皮一枚隔てところに広がっている。それは荒唐無稽なSFのようでいて、あまりにも正しく世界への「居心地の悪さ」を体現している。 止まらない砂を かき集めるような 季節をいくつも 通り過ぎて すべてのことが上手くはいかない。そんな時間を、我々は”青春”と呼ぶのだろうか。MVにおけるメンバーと少女のように、やっと見つけた”誰か”と互いに向き合いながらも、決して交わることはできない。*1「わかりあえた」と触れ合おうと思った瞬間に全てがわからなくなってし

    ミツメ『エスパー』 - 青春ゾンビ
  • 『表現×FALSETTOS×cero』 in Super deluxe - 青春ゾンビ

    『表現×FALSETTOS×cero』in六木Super deluxeを目撃。余談だが、この六木 Super deluxeはチェルフィッチュの『三月の5日間』で登場するライブハウスのモデルなのだそう。出演者である3バンドはなんでも高校生の頃から親交があるそうで、その3バンドが再び一同に会した事への祝祭感に溢れたライブだった。また、その当時から彼らの写真を撮り続けている鈴木竜一郎氏の写真展示も併設、とかなりいいムードだったのですが、内輪感が強くて、肩身狭かったのも正直な所です。しかし、3バンドとも素晴らしい演奏だった。FALSETTOSは漫画のようなバンドで、女子校のクラスメイト4人が組んで、音楽室でせーのででたらめに音を鳴らしたようなかっこよさがずっと持続してきている。ルーズなドラムとその間を埋めるニューウェーブ感ある鍵盤が特に良い。 表現の演奏には度肝を抜かれた。どうやったら日から

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  • 『happy voice vol.2』山下達郎×空気公団 - 青春ゾンビ

    今はそんな事ないのだろうけど、ある時期までは空気公団というバンドを紹介する際に必ずと言っていいほど「あの山下達郎も絶賛」という文字が躍っていた。「なるほど、そうなのか!」とは思っていたものの、実際の所、達郎さんがどういう風に空気公団を評していたのかは謎のままでした。しーかし、ついに先日、重要な文献を入手する事に成功したのです。2000年(14年前!)に刊行された『happy voice』という雑誌のvol.2でございます。こちらに山下達郎×空気公団の対談が掲載されているのです! 不勉強で『happy voice』というこの雑誌の存在すら知らなかったのですが、なんでも新宿ロフトで開催されている同名イベントの為に発行された雑誌だそうで、ロフトのスタッフとコアグラフィックというデザイン会社が共同で刊行していたようです。編集やデザインの中心はデザイナー兼Spangle call Lilli lin

    『happy voice vol.2』山下達郎×空気公団 - 青春ゾンビ
  • 新しい地図『72時間ホンネテレビ』 - 青春ゾンビ

    毎日みんなで口にするのは「ああ あいつも来てればなぁ」って 当に僕も同感だよ それだけが残念でしょうがないよ スチャダラパー「彼方からの手紙」 そこに”いない”と感じるってことは、実はむちゃくちゃ”いる”ということなのだ。『72時間ホンネテレビ』は3人としてスタートを切る番組ではなく、どこまでも5(6)人を諦めない、という意志のように思えた。ちなみに、上に引用したスチャダラパーの「彼方からの手紙」という曲はこう締めくくられる。 ぼくはすべてを把握した ここにこなけりゃぼくは一生 わからずじまいで過ごしていたよ あんがい桃源郷なんてのは ここのことかなってちょっと思った 君もはやく来たらと思う それだけ書いて筆を置く まさに桃源郷のような3日間だった。もちろん、72時間の内、8割方は既存のテレビ番組の冴えない企画の焼き増しで、「地上波放送じゃできない」という謳い文句は決して適切ではない(地

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  • ラジオ「ハライチ岩井 フリートーク集」の凄味 - 青春ゾンビ

    突然ですが、2017年にリリースされた音源のベスト1が決定いたしました。「ハライチ岩井 フリートーク集」である。「ハライチのラジオがおもしろい」というのは何度も目にする文言でしたが、すでに放送が開始されているラジオ番組を新規で聞き始めるというのは、かなりのリテラシーが求められる。ラジオ番組の特有のグルーヴというか、ルールのようなものを飲みこまねばならないからだ。その点において、この「ハライチ岩井 フリートーク集」は、まさに導入にうってつけなのである。番組内の岩井フリートークのみが編集され、トークをトラックで区切りタイトルで管理、更にはトップ画にタイムスケジュールまで記載してくれている。まるで1枚のアルバムを聞くようにして楽しめる。 1曲目の「電車」を試聴さえすれば、それ以降のトラックに耳をふさぐのは難しいだろう。岩井の淀みのない流暢な喋りとその声質の良さ、巧みな情景描写とオチに向けての緻密

    ラジオ「ハライチ岩井 フリートーク集」の凄味 - 青春ゾンビ
  • 宮藤官九郎『監獄のお姫さま』1話 - 青春ゾンビ

    TBSの「火曜ドラマ」枠に、満を持して宮藤官九郎が登場。出演女優陣の豪華さはもちろんのこと、企画・編成に磯山晶、メインチーフに金子文紀、とテレビドラマファンであればクレジットだけで涎をダラダラと垂らさずにはいられまい。あの『木更津キャッツアイ』(2002)からちょうど15年、「あの伝説よ、再び」と願うのがファン心理というもの。多用されるプレイバック、何やらイリーガルなチームプレー、森下愛子(ローズ姉さん)に塚高史(アニ)・・・『木更津キャッツアイ』の記憶を振動させる様々なモチーフ。「おばさん版木更津キャッツアイだ」なんて声も挙がっていますが*1、この1話の段階ではあの鮮烈さには遠く及ばないというのが正直なところではないでしょうか。プレイバックも冗長で野暮ったい。爆笑問題を登場させての疑似『サンデージャポン』のOPも、『木更津キャッツアイ』での哀川翔、『マンハッタンラブストーリー』(200

    宮藤官九郎『監獄のお姫さま』1話 - 青春ゾンビ
  • PUNPEE『Modern Times』 - 青春ゾンビ

    オープニングトラックの舞台は2015年。年老いたPUNPEEが、40年前にリリースされた自身のファーストアルバムを振り返るところから始まる。未来から過去への眼差しでもって、現在を紡ぎ出す。その構造は、サンプリングという過去の遺産を掘り下げる手法で花開いたヒップホップミュージックの構造そのものをトレースしている。ミサイル、水爆、原発・・・極めて不安定なこの世界情勢であるが、2057年というやつは確かに存在し、それはどうにも穏やかな未来らしい。卓での振る舞うビーフシチューを楽しむような*1。この「未来はそんな悪くないよ」とでも言うようなポジティブなフィーリングは、不安な現代を生きるわたしたちをひどく勇気づける。しかし、そうでもしなきゃ、たかだか40年先の未来にすら希望を抱けない世界なんて・・・実にクソったれだ。 はいはい まぁご存知の通り 見た目も中身もまぁ覇気がない はしにも棒にも引っか

    PUNPEE『Modern Times』 - 青春ゾンビ
  • 水曜日のダウンタウン「寝たら起きない王決定戦」 - 青春ゾンビ

    2017年10月11日放送の『水曜日のダウンタウン』の衝撃から抜け出せないでいる。PUNPEEの『MODERN TIMES』発売記念バージョンのOPもグッときてしまうし、冒頭の新企画「リアルスラムドッグミリオネア」もギャラクシー賞候補間違いなし。企画の発想力もさることながら、「見ること」「聞くこと」の”不確かさ”を、重層的に問う構成に痺れた。しかし、その衝撃を吹き飛ばしたのが、「寝たら起きない王決定戦」でのクロちゃん(安田大サーカス)だ。クロちゃん回はいつも凄いが、今回はとびきりだった。あまりに観たことない映像のオンパレードである。泥酔したクロちゃんが眠りにつくまでの姿を収めたドキュメンタリーなのだけども、とにかくおぞましい。「ば、化け物・・・!」「こんな事って・・・」「大チャンス!」といちいち気の利いたコメントを残す仕掛け人小宮浩信(三四郎)の”かわい気”との対比も相まって、クロちゃんの

    水曜日のダウンタウン「寝たら起きない王決定戦」 - 青春ゾンビ