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ブックマーク / cruel.hatenablog.com (78)

  • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の最終講:存在の連鎖は破綻した無意味な思想 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の翻訳を始めた話はした。 cruel.hatenablog.com 素直に第2講を初めて、半分くらいはおわっているんだけれど、そもそもこの話がどこへ行くのか知りたくて (はい、推理小説もまず最後を読むタイプです)、最後の第11講をあげてしまいました。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第11講 (最終回) もちろん、このpdfを読むとそれなりにウダウダしい。だが、そこで言われていることは、第1講と同じでとてもシンプルではある。それはつまり、以下の通り: 「存在の連鎖」という観念は最終的に、二千年かけて詰めていったらボロボロでまったく整合性がないことが明らかになった。 だから破綻して、すると一気に忘れられてしまった。 思想そのものの現代的な価値はまったくない。 ただこういう変なものにハマる精神の働き (すでに蒸し返すバカも出てる) の記録という意味はあるかも。

    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の最終講:存在の連鎖は破綻した無意味な思想 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ラヴジョイは「冷笑系」:非ビリーバーの優位性 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』を勝手に翻訳している話をした。 cruel.hatenablog.com で、引き続きやっていて、第2講もいまのところ、なかなかおもしろい。まだ前半だけだけれど、言われていることはやはり単純だ。 頻出する観念として「異世界性」と「この世性」みたいなのがある。 異世界性は、来世の天国で処女が17人!とか、この世が気にわんから異世界転生するなろう小説みたいなもの欲しげな話とはちがう。そういう異世界転生って、この世の価値観のまま自分の都合のいい世界になるってことで、「この世性」の権化。 当の異世界性というのは、この現実は現実ではなく、永遠不変の絶対的な善の世界があるのよ〜みたいな話。 この手の論者はみんなインチキ。なんだけれど、西洋思想では圧倒的にこの異世界性が大きな影響を持つ。宗教なんてみんな神さまだのといったありもしないものを押しつけるという理屈で、この異

    ラヴジョイは「冷笑系」:非ビリーバーの優位性 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • オーウェル『1984年』全訳完成 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    Big Brother is Watching YOU!!! 2023年の年頭に宣言した通り、オーウェル『1984年』の全訳をあげました。 genpaku.org html版と、pdf版があるので、まあお好きに。当然、クリエイティブコモンズなので、自由にお使いください。個人的にはいま出版されているどの翻訳よりもいいとは思うが、それは趣味もあるでしょう。商業出版したいとかいうところはあるかなー。なければ自分で電子ブックでも作って売ろう。 追記:商業出版したいというところが出てきたので (まだ確定ではありません) 、いまのうちにダウンロードしたりあちこちにばらまいたりしておくといいと思うぞ。(11/28) ビッグ・ブラザーのポスターでもトップにかざろうかと思ったけれど、みんなおどろおどろしいものばかりで、小説の記述に即したニュートラルなものがあまりないので少しびっくり。 訳していて、いろいろ含

    オーウェル『1984年』全訳完成 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • オーウェル『1984年』序文からわかる、ピンチョンのつまらなさとアナクロ性 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    Executive Summary トマス・ピンチョンのオーウェル『1984年』序文は、まったく構造化されず、思いつきを羅列しただけ。何の脈絡も論理の筋もない。しかもその思いつきもつまらないものばかり。唯一見るべきは、「補遺;ニュースピークの原理」が過去形で書かれていることにこめられた希望だけ。だが、考えて見れば、ピンチョンはすべて雑然とした羅列しかできない人ではある。それを複雑な世界の反映となる豊穣な猥雑さだと思ってみんなもてはやしてきた。だが実はそれは、読者側の深読みにすぎないのかもしれない。そしてその深読みが匂わせる陰謀論が意味ありげだった時代——つまり大きな世界構造がしっかりあって、裏の世界が意味をもった60-80年代——にはそれで通ったのに、1990年代以降はもっと露骨な陰謀論が表に出てきてしまい、ピンチョン的な匂わせるだけの陰謀論は無意味になった。それがかれの最近の作品に見られ

    オーウェル『1984年』序文からわかる、ピンチョンのつまらなさとアナクロ性 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ピケティ『資本とイデオロギー』読書ガイド - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    目次: 目次: はじめに 1. 『資とイデオロギー』の概略 1.1 .『21世紀の資』のあらすじ: 1.2. 『資とイデオロギー』の全体的な話 1.3. 『資とイデオロギー』のあらすじ 第I~II部:歴史上の格差レジーム/奴隷社会&植民地 第III部:20世紀の大転換 第IV部(その1):政治的対立の次元再考——問題編 第IV部(その2):政治的対立の次元再考——対策案 (第17章) 第IV部(その3):政治的対立の次元再考——対策案 (その他随所) 2. 通読する必要はないと思う 3. タイプ別読み方 『21世紀の資』の続きとして読みたい人、つまり経済格差とその対応を知りたい人は…… 経済格差への対応を知りたい人は…… 世界各地の格差の変動プロセスの比較に興味ある人は…… 4. 最後に はじめに このたび、ついについに難産の子、ピケティ『資とイデオロギー』が出ました。 資

    ピケティ『資本とイデオロギー』読書ガイド - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ぼくは「モンティ・ホール問題」がよくわからない。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    10月24日に、Change to Hopeというイベントがあって、スティーブン・ピンカーが来日して基調講演をする……予定だったのがコロナで来れずオンラインになってしまったんだが、ぼくがその司会役、というか質問係をおおせつかったのでした。 www.change-to-hope.com で、これは新著『人はどこまで合理的か』をベースに最近のネタを散りばめる講演で、ぼくも付け焼き刃でざっと読んでみました。基は、人はいろいろ数学パズルみたいなものにごまかされて合理性を発揮しにくくなる部分があるのだ、という話や経済学的な合理性の話などで、あとは合理性がいかにしてこれまでの人類の発展を率いてきたか、これからも理性をちゃんと使ってがんばらないといけないよ、というもの。一般向けの講義をまとめたものだそうで、人によっては知ってる話ばかりでつまらないかもしれない。まったく知らなかった目新しい話はない。類書

    ぼくは「モンティ・ホール問題」がよくわからない。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』全訳終わった - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    Executive Summary タイトル通り、ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』の全訳がおわりました。 先日、半分まで終わったポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』 cruel.hatenablog.com 全部終わった。 カール・ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』(全訳、pdf 4.8MB) まあ、こうさ、訳してもさ、どうせだれも読みはしないんだよね。「スゲー」とか「感謝」とかコメントはつくんだけどさ。まあ君たちのためにやってるわけじゃないのでいいんだけど、ときどききょむかんはあるよな。でも、おもしろいよ。 書き方は下手クソで、おんなじ事何回も言っててアレだ。もう少し長生きしていればきちんと手直しできたのかも、でもなかなかおもしろいし、しょせんこの仕組みが一過性ではあったことは、ポランニーも認識しているんだね。現代世界でこんな仕組みが成り立たないのは、彼も知っている。その一方で彼は市場経

    ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』全訳終わった - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • プーチン本その1:朝日新聞『プーチンの実像』:ゴシップに終始して最後はプーチンの走狗と化す危険な本 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    Executive Summary 朝日新聞『プーチンの実像』(朝日新聞社、2015/2019) は、日のぶら下がり取材的にプーチンが日や自分たちと行った会見やその周辺人物のインタビューをあれこれ行っているが、明確な視点がないために、それが単なるゴシップのパパラッチに堕している。そのゴシップの価値にゲタをはかせようと、歪曲による祭りあげまで行ううえ、プーチンの軍事的な意図についてまったく触れず、このためプーチンは外国に対し、主権を持っているかとかいう抽象的な視点で判断を下しているという、ナンセンスな主張を行う。そしてそれは最終的に、日アメリカのイヌで主権がない、北方領土を返してほしければ日米安保を廃止して主権を回復せよ、という信じられない主張を暗に匂わせる、得たいの知れないプーチンの走狗と化している。 ぼくも人並み以上にミーハーなので、ウクライナ侵攻が始まってから、いろいろプーチ

    プーチン本その1:朝日新聞『プーチンの実像』:ゴシップに終始して最後はプーチンの走狗と化す危険な本 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ロシア帝国300周年記念に寄せて (2022/02/04): ロシア停戦交渉団親分の「帝国バンザイ!」 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    我らが偉大なhicksian 様のこのツイートで紹介されていたブログ記事、とてもおもしろい。 broadstreet.blog この著者はMITのソ連ロシア史教授、エリザベス・ウッズ。プーチンは、ヒル&ガディの現時点ではベストなプーチン伝「プーチンの世界」で紹介されている、「プーチンは歴史の男だ」というまとめを敷衍して、その「歴史」というのがおとぎ話に近いネトウヨ妄想なのだ、という点を指摘している。 プーチンの世界―「皇帝」になった工作員― 作者:フィオナ・ヒル,クリフォード・G・ガディ新潮社Amazon このブログでは、その妄想ぶりについてかなり細かく指摘されているけれど、基的にはこれまでしょっちゅうお目にかかった、大ロシア帝国復活こそが歴史的必然であり、民族の悲願なのであり、それを西側がじゃましくさっておるのよ、という話。いやそれよりひどくて、ロシアは昔から、優しい民主的な共存共栄の

    ロシア帝国300周年記念に寄せて (2022/02/04): ロシア停戦交渉団親分の「帝国バンザイ!」 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ロシアの攻勢と新世界の到来 (2022/02/26): 侵略成功時のロシアの予定稿 全訳 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    訳者まえがき まちがって公開されたとおぼしき、ロシアウクライナ征服に成功していた場合のロシア国営通信 RIA予定稿の全訳。すぐに引っ込められたが、Wayback Machineにしっかり捕捉されていた。すごい代物。いくらでも言いたいことはあるが、読めば多くの人は同じことを考えるだろうし、ある100年近く前のドイツの人が書いた文章との類似も明らかだとは思う。 以下のツイート経由で存在を知った。ありがとうございます! 1 “The resolution of the Ukraine question.” A mistakenly published Russian article gives us a chilling insight into the neo-imperialist thinking in Russia that drives Putin’s decision to inv

    ロシアの攻勢と新世界の到来 (2022/02/26): 侵略成功時のロシアの予定稿 全訳 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • The Economist:「クソな仕事 (ブルシット・ジョブ)」はクソ理論 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    Executive Summary デヴィッド・グレーバーは、いまの資主義を批判するので人気があるが、最近の労働が実は無意味なものと化し、そこに従事している人びとが虚無と疎外感にとらわれているという『ブルシット・ジョブ』(2018) は、実際の人びとの労働意識を調べて見ると、まったく実態に即していない、ただの思いこみでしかない。それを述べたThe Economist記事を勝手に翻訳した。 デヴィッド・グレーバーは何やら一部の人にはえらく人気があって、お決まりのサヨク議論を何やらそれっぽい意匠で語ってみせるから、というのが普通の解釈だけれど、正直いってそれ以上のものだとは思わない。 で、彼のブルシット・ジョブ。ほとんどの人は読んでなくて、これが非正規のウーバー配達員とかそういう仕事のことだとおもっているんだけれど、実はちがう。オリンピック大臣の丸川珠代みたいな、何の技能もなく意味もないお飾

    The Economist:「クソな仕事 (ブルシット・ジョブ)」はクソ理論 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • キューバの経済 part 4: 社会主義/共産主義経済の全体像 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    1. キューバ再び:経済危機のさなか さて久々にキューバにきているのだけれど、キューバはいますごいことになっている。まず、アメリカの制裁がどんどん厳しくなり、各種の船はキューバに寄っただけで嫌がらせされ、キューバへのフライトもどんどん潰された。おかげで観光客は激減。FDIもやたらに支障をきたす状態。料やガソリンの不足はとんでもない状況だ。 さらにコロナ。2020年夏に、一時抑え込んで、われコロナに勝利せり、と叫んだらすぐに第二波がはじまり、さらに今年に入って爆発。人口一千万強のキューバで、一日千人規模……だったのが6月にさらに爆発して一日三千人の新規患者数だ。おかげでレストランはテイクアウトのみ。夜8時から朝5時まで外出禁止。 さらにトランプがイタチの最後っ屁で、今年一月にキューバをテロ支援国認定してしまったので、特に銀行のドル送金ルートがほぼ完全に断たれてしまった。キューバ相手のドル取

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  • トマス・ペイン『土地をめぐる公正』Agrarian Justice 元祖ベーシックインカム! - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    トマス・ペインのAgrarian Justice、よく題名の直訳で、「農民の正義」とか紹介されているので、農地改革のすすめかなんかだろうと思って読みはじめたら、ぜんぜんちがいました。 なんと1795年の段階で、ベーシックインカムの必要性を実に明解に訴えた先駆的なパンフレット。そして、その論理はきわめて明解。創ったり相続したり買ったりしたものが私有財産というのは認めよう。でも、土地ってだれも作ったものじゃないよね。だから土地私有っておかしいよね。土地に対して、耕作して付加価値つけたら、その分は当然ながら、あんたの働きによるものだから私有できる。でも、いまの土地私有って、その改良を土地そのものと分離できないからって、来あんたのものじゃない土地自体まで私有してるよね? だったらその部分、相続税の形で社会に還元して、それを土地という共有財産を奪われた人たちに、ベーシックインカムとしてあげようぜ、

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  • ピケティ『21世紀の資本』: r>g は格差の必要 or 十分条件か? - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    21世紀の資 作者:トマ・ピケティ発売日: 2015/04/27メディア: Kindle版 新年仕事始め前の小ネタ。ツイッターでこんなのみかけたのよ。 このツイ主は、浅田論文を読んでおくことでどういう知見を得るべきなのか、ここで採りあげているネット番組の問題提起に対してそれがどう関係してくるのかは明記していない。けれど、文脈から判断して、これは日で r>g が顕著になってきたことなんか重視すべきじゃない、それで格差なんか増えない、こんなんで騒ぐやつは煽りだ、と言いたいのだろうとぼくは判断する。 さて、この人がツイートないで言及している論文はこれだ。 core.ac.uk ちょっと待った、これ、COREか! ワタクシが座興で訳していたら「金払わないと訳しちゃダメ」と言ってそれを潰しやがった……まあいいや。勝手にやってたことだから仕方ないんだけど。が、閑話休題。 (なんか別物らしい。とばっ

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  • コロナなんかどうでもいいから石岡瑛子展に行きなさい。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    Executive Summary この展覧会を前にしてどうでもよくないと思う人は、豚に真珠もいいとこだから観に行かないほうがいいよ。 はじめに 先日、無料券をもらったので石岡瑛子展にでかけてきたのです。 www.mot-art-museum.jp ぼくは石岡瑛子は昔からとても好き、というか崇めていて、『風姿花伝』も持っているし、『私デザイン』も持っていて、何度も見ている。 石岡瑛子風姿花伝―Eiko by Eiko 作者:石岡 瑛子求竜堂Amazon 私 デザイン 作者:石岡 瑛子講談社Amazon だから別に今回の展覧会で何か新しい発見があるとは特に思っていなかった。いろんな衣装の実物があるというのは聞いていて、それは楽しみだったかな。でもまあ、知っていることのおさらいだろうと思っていた。 ちがった。すげえ。みなさんも是非行きなさい。 いまなお衝撃力を保つバブル期広告作品 まず入ると、

    コロナなんかどうでもいいから石岡瑛子展に行きなさい。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • フロイト『夢判断』:フロイトの過大評価をはっきりわからせてくれる見事な新訳 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    新訳 夢判断 (新潮モダン・クラシックス) 作者:フロイト新潮社Amazon 古典をきちんと読まなければ、みたいな強迫観念は、昔は強かったけれど、いまはあまり残っていない。が、フロイトは高校時代に岸田秀に入れ込んだこともあり、またいろんな人がフロイトはすごい、フロイトにかえれ、みたいなことをしきりに言うので、いずれ読まねば、という気持はあった。そして高橋義孝のギクシャクした金くぎ翻訳をなどを読んで挫折し、いやこれはぼくの理解力が足りないのか、これをきちんと理解すると、何かすごい世界が広がるのか、と思っていた。いつの日か、ちゃんと読もう…… そしてその「いつの日か」がやってきた。フロイト『夢判断」新訳だ。 そしてこれは、すばらしい。訳は実に明快でわかりやすい。これまで読んで挫折したのは、何よりも翻訳がダメだったせいだ、というのがはっきりわかる。が、同時にもう一つわかったことがある。フロイトは

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  • スターリン閣下はお怒りのようです:インタビューの読み方説明 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    付記:なんか多くの人が、これを2020年10月の学術会議がらみの一件に対する批評的な意図を持ったものだと読んでいるようなんだが、ぼくは実はまるでそんなことを考えていたわけではないのだよ。ホント、たまたま出てきただけなのよ。が、もちろんそういう解釈があり得ることはわからなくはない。そして、それが決して的外れな解釈ではないのも事実。でも、それだけですませてしまうにはもったいない。中身の理解と、その時事的な応用は分けないと。山形がある意味でのさばっているのも、一方であり得るほどはのさばっていないのも、実はある種の文書化された状況や力関係の解読は結構うまい一方、まさに以下で書いたような現実の場でのガンつけに異様に鈍感な部分があるからで、そういう時事的な話にヘタに乗れない/乗らないから、なのだ。そしていまの日の環境ではそうした空気の読まなさ/読めなさが、すぐに寒いところ送りにはつながらないどころか

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  • 偉大なる首領スターリン閣下のありがたきインタビューでも読み給え。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    最近さまざまなメディアにおける人民諸君の発言を見るにつけ、であるな、多くの者が堕落し、あるべき革命精神を忘れ、軽視し、捨て去っているように見えるのだよ。特にへっぽこリベラルえせ知識人どもよ。そうした反革命分子どもにも、更正の機会を与えてやろうではないか。偉大なる首領、我らが指導者スターリン閣下のありがたきインタビューを読んで、あらためて社会における己の卑しき役割を再認識したまえ。 H・G・ウェルズによるスターリンのインタビュー、1934年7月 pdfが嫌な人は、この下に全文貼り付けてあるのでこのまま読み進めたまえ。 というわけで、H・G・ウェルズによるスターリンのインタビュー。大恐慌真っ最中の1934年にソ連を訪れたイギリスの大知識人たるウェルズは、もう資主義は終わりだ、社会主義の時代がすぐにやってくると、当時の (そして今の) 軽薄なリベラル知識人ぶりを全開にしてスターリンにインタビュ

    偉大なる首領スターリン閣下のありがたきインタビューでも読み給え。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • レッシグ新刊で知ったアメリカ政治二極化の力学 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    久しぶりにレッシグの翻訳をしているんだけれど、なかなかおもしろい(部分もある)。 かつてのインターネット法や著作権法からレッシグの関心は大きく逸れて、ここしばらくのレッシグのは、アメリカの選挙献金制度の改革がテーマになっていた。何度か、翻訳の打診もきたし相談も受けたんだけれど、話があまりにアメリカの選挙制度に偏りすぎで、翻訳しても日人が関心持ちようがないと判断したので、申し訳ないんだがずっと見送りを奨めていた。 さらにその後、レッシグ自身が大統領選に出馬とかして、人的には真面目なんだろうけれど、端から見るとスタンドプレーにしか思えないことをやったりしたため、言っては悪いんだが、キワモノ的な雰囲気が高まっていたこともあって、もう最近のやつは読んでもいなかった。 それが、まあいろいろあって最新作を訳すことになって手をつけ始めている。おおむね関心は変わっておらず、アメリカ政治の根的な改革

    レッシグ新刊で知ったアメリカ政治二極化の力学 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ハーバート・A・サイモン『人間活動における理性』(1982) 改訳終わった。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    はい、コロナ戒厳令開始前に、サイモン『意思決定と合理性』の改訳を始めました。 cruel.hatenablog.com で、終わった。まあ読みなさい。 ハーバート・A・サイモン『人間活動における理性』(1982) pdf版 ハーバート・A・サイモン『人間活動における理性』(1982) epub版 右クリックでダウンロード 読者のみんなは、ぼくに深く感謝するがよいのだ。これはそれだけの価値がある、すごいだからだ。 この短いに収められた叡智のすごさは、ちょっと比類がない。第1章は、彼の限定合理性理論のまとめであると同時に、自分でその限界をバシバシ指摘したおっかない部分。2章は、進化論について一般人の知るべき事を、とんでもなく高度な話まで含めて網羅している。第3章では、1982年の時点で地球温暖化の話にすでに目配りしてあるのに驚くし、また最後に出てくる各種経済学派のちがいは唯一、期待形成のあ

    ハーバート・A・サイモン『人間活動における理性』(1982) 改訳終わった。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」