ceroの2ndアルバム『My Lost City』があまりに素晴らしい。架空の都市を切り取ったエキゾティック・ミュージックという面では前作『WORLD RECORD』に連なるものだが、ここには、前作よりも一歩も二歩も踏み込んだダイナミックなドラマが、途方もないイマジネーションに満ちた超現実的世界が広がっている。いかにして本作はできあがったのか。ヴォーカルでソングライターの高城晶平と、ギタリストでミックスも担当した橋本翼の二人に話を訊いた。
異常に屈折しているのに妙にポップでエキゾチックなサウンド、そして野蛮なまでにキュート&すっとんきょうなヴォーカル。1978年から83年まで、わずか5年間ほどの活動(リリースされたアルバムは3枚)で幕を閉じたが、その強烈な個性によって伝説的存在となっている。 そんな日本のバンド、チャクラの未発表ライヴ音源が2枚組CDとして突然リリースされた。題して『アンリリースド・ライヴ・レコーディングス 1981-1983』。収録された計24曲(81〜83年、5ヵ所でのライヴ音源)のうち7曲は当時正式にレコーディングされることがなかったレア音源だ。加えて、ファン感涙のこのアルバムを制作 / リリースしたのがなんとチリ人の熱狂的マニアだというからさらにびっくり。恐るべし、時空を超えたチャクラ・パワー。
ついにこの時が来た。なんて煽り文句は大袈裟かもしれないが、控えめに言っても画期的な作品だ。小西康陽のソロ・プロジェクト、PIZZICATO ONEの新作『前夜 ピチカート・ワン・イン・パースン』は、2019年10月に東京と大阪のビルボードで行なわれたライヴを収録したもの。これまでPIZZICATO ONEのアルバムでは曲ごとにさまざまなヴォーカルをフィーチャーしてきたが、このライヴでは小西が全曲でヴォーカルを担当。5人編成のバンドを従えてマイク一本で自作曲を歌う。これは小西にとって初めての試みであり、そこからは小西の作家性が浮かび上がってくると同時に、シンガーとしての新たな一面を垣間見せてくれる。この興味深く、味わい深いアルバムについて、小西に話を訊いた。
坂本慎太郎とVIDEOTAPEMUSICのコラボレーション第2弾が、思いがけないかたちで実現した。坂本慎太郎「悲しみのない世界(You Ishihara Mix)」のMVをVIDEOTAPEMUSICが映像監督として手がけたのが2015年。今回2人は、共作名義の12inchシングル『バンコクの夜』をリリースする。しかもその題材は、2017年2月の公開決定で話題を呼んでいる映像制作集団「空族(くぞく)」最新作映画『バンコクナイツ』(富田克也監督)に対するトリビュート楽曲というもの。そして、坂本慎太郎、VIDEOTAPEMUSIC、そして『バンコクナイツ』。この最高な組み合わせの鍵となったのが、大阪を拠点に世界的に注目される音源発掘とリリースを続けるEM Recordsだった。 はたしてそのコラボレーションはどのように決まり、どうやって行われたのか。意外にも音楽で誰かと共同作業をすること自体が
今年1月にチャールス・ロイド&ザ・マーヴェルスの一員としてひさびさに来日したビル・フリゼールが、間を開けず6月にペトラ・ヘイデンらとともに自身のアルバム『星に願いを』をプレイするために再び来日する。『星に願いを』に関することは、「CDジャーナル」本誌2016年2月号で本人にたっぷりと語ってもらい、そこではペトラ・ヘイデンの声がまるで楽器のように響いていたことなどを丁寧に話してくれている。なので今回はアルバムから少し離れて、ビル・フリゼールという超個性的なギタリストが、どんなことを考えながらギターを奏でているかについて語ってもらった。抽象的な話だったからかもしれないが、じっくりと考えながら言葉を選び、ゆっくりと話しかけてくれる姿が印象的だった。その語り口もまた、ビル・フリゼールのサウンドそのものだ。 ――今日はあなたが普段どんなことを考えながら、その個性的な音を出しているのかを聞かせてほしい
その方法論、音楽的な違いはあれど、“不良が作る音楽のかっこよさ”は間違いなく人を惹きつける。横紙破りと揶揄されたとしても、枠組みを壊し、暗黙のルールやマナーからはみ出すことを恐れず、“ヤバい”音を追及できるアーティストはやはり数少ない。“悪名高い”アーティストならではの熱や毒、正義感に満ちたギャングスタ・ラップ・アルバム『Z』をリリースしたKNZZに話を訊いた。 ――今回のアルバムでは、KNZZさんの無骨な魅力……素朴さだったり、不器用さだったりするような部分を、客演の方やトラックが際立たせているなと感じたんですが、その辺りは意図的なものでしょうか? 「そういう奴らが集まった結果、みたいな感じに近いすね。不器用なんだけど、やりたいことがある奴。やるべくして、使命を持ってやってる感じ。音楽的にはフェアにやってるつもりだから、年齢は関係なく年下でも俺よりヤバい、実力ある奴も周りにはいっぱいいて
ついにこの時が来た。なんて煽り文句は大袈裟かもしれないが、控えめに言っても画期的な作品だ。小西康陽のソロ・プロジェクト、PIZZICATO ONEの新作『前夜 ピチカート・ワン・イン・パースン』は、2019年10月に東京と大阪のビルボードで行なわれたライヴを収録したもの。これまでPIZZICATO ONEのアルバムでは曲ごとにさまざまなヴォーカルをフィーチャーしてきたが、このライヴでは小西が全曲でヴォーカルを担当。5人編成のバンドを従えてマイク一本で自作曲を歌う。これは小西にとって初めての試みであり、そこからは小西の作家性が浮かび上がってくると同時に、シンガーとしての新たな一面を垣間見せてくれる。この興味深く、味わい深いアルバムについて、小西に話を訊いた。
デビュー25周年を迎えるスチャダラパーが、通算12枚目のアルバム『1212』をリリース。前作『11』から、実に6年ぶりのオリジナル・アルバムだ。その間も、ライヴ活動を続け、ライヴ会場限定で作品を発表してきた。つまり彼らにブランクは一切なし。本作には、テレビ東京系ドラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』のオープニング・テーマ「中庸平凡パンチ」、チャットモンチーとのコラボ、“スチャットモンチー”名義の「M4EVER」、清水ミチコが参加した「Off The Wall feat. 清水ミチコ」などバラエティに富んだ楽曲が並ぶ。さらには、ANIがソロ・ヴォーカルを披露する「哀しみ turn it up」もインパクト絶大。世間一般の普通と自分たちの普通の隙間を巧みにラップする彼らに、新作にまつわる話を聞いていこう。 Bose 「そう。時代に合わせてというか、ライヴ会場だけで買えるとか面白いなと思って、そっち
KIRINJIの約1年半ぶりとなるニュー・アルバム『cherish』がリリースされる。今回は前作『愛をあるだけ、すべて』で示したダンス・ミュージック的指向をさらに押し進め、サウンドはいっそうグルーヴィになり、楽曲のムードは都会の夜の匂いが漂い、ヴォーカルはハイトーン主体のブラック・ミュージック・マナーを感じさせるものに変化。すなわち、昨今の国内シーンの主流といえるシティ・ポップ的スタイルで、そこに歌詞でヒネリの利いたユーモアやストレンジなラジカリズムが加わり、独自のセンスが際立つ攻撃的な傑作となった。作品ごとに異なる姿を見せている今の彼らはとてもスリリングな存在といえるだろう。中心人物の堀込高樹とベーシストの千ヶ崎 学に話を聞いた。
昨年、ウリチパン郡が活動停止を発表したときは言葉にできないほどの無念さを感じたものだったが、ここに届いたオオルタイチとしての新作ソロ『Cosmic Coco,Singing for a Billion Imu's Hearty Pi』を聴いて、もう彼は次なるステージに進んでいることを確信した。ここには享楽と快楽に行く末を委ねたような現代社会のオプティミズムを象徴したような、ある種のキラキラとした質感の音を纏ったダンス・チューンが多数収録されている。ビートは限りなくジャストでスクエア、音は限りなくハイ・ファイ。メロディで聴かせるのではなく、感覚や本能に訴えかけるようなフィジカリティ。それはオオルタイチからの新たなポップ・ミュージックの在り方を提案するものなのかもしれない。OOIOOのOLAibi、ユザーンらも参加。間違いなくこのアルバムは2011年最初のマスター・ピースである。
濱瀬元彦。この固有名は新しいものではない。それはすでにあった。「来日したジャコ・パストリアスが濱瀬に会いたいと指名した」。「ミリオンヒットを連発するあるバンドのベーシストは濱瀬に師事していた」。エピソードは無数にある。あの濱瀬が17年ぶりに新作『“The End of Legal Fiction”Live at JZ Brat』を発表する。これも往年のファンにとっては新しい大きなエピソードだろう。だが、彼の率いるバンドの名前はこう示唆する。“End of Legal Fiction”(擬制の終焉)。新奇さや話題など、音楽のスペックをこぞって消費する“擬制”は終わった。我々は、“音楽のスペック”ではなく、“音楽”を聴くのだ。 濱瀬元彦 「E.L.Fは、“End of Legal Fiction”のイニシャル。これは高校生のときに読んだ、吉本隆明さんの『擬制の終焉』(62年)という著作タイトル
BIGYUKIの新作『リーチング・フォー・ケイローン』には彼がUSのシーンでア・トライブ・コールド・クエスト(ATCQ)やJ.コール、ビラルといったアーティストから重用される理由が詰まっている。それは軽やかにトレンドを取り入れる彼のセンスだけの話ではないし、技術の高さだけでもない。ここでBIGYUKIは自分が先端のシーンで戦っていけている理由を明解に語ってくれている。それはテラス・マーティンにもテイラー・マクファーリンにも言えることだし、同じようなエピソードをロバート・グラスパーも以前、語っていた。それはBIGYUKIが彼らと同じ地平にいるということを意味する。そしてその能力はこのアルバムのレコーディングでも発揮されていた。
2000年代後半から2010年代前半にかけて、おもにニコニコ動画を中心に盛り上がったネットラップ/ニコラップのシーンは、DAOKOを筆頭にぼくのりりっくのぼうよみ、電波少女、Jinmenusagiなどなど多くのアーティストを輩出してきた。媒体資料に“ネット・ラップ叩き上げの異能MC”と記される野崎りこんもそのひとりだ。 電波少女の初期メンバーで、2009年に『Love Sweet Dream EP』をフリーDLで発表してソロ活動を開始。2014年の『コンプレックス EP』を経て、2017年には術ノ穴からファースト・アルバム『野崎爆発』をリリースして話題を集めた。 このほど発売されたセカンド・アルバム『Love Sweet Dream LP』は10年前のEPの続編だという。Shaka Bose、RhymeTube、神尾けいらが提供するトラックに乗せて、ある曲ではストーリーの一断片を切り出し、
2011年の震災以降、Budamunk、ISSUGI(from MONJU)と結成したSICK TEAMでの活動やOlive Oilとのコラボ作『5 O』など、精力的に作品リリースを重ねてきたラッパー / トラックメイカーの5lack。しかし、そうした作品の数々には、人気アーティストとして注目されるようになったことで生じた戸惑い、震災以降の混沌とした社会状況やSNSに象徴されるネット・カルチャーとのほどよい距離感に腐心する彼の心境がエモーショナルな作風に投影され、どこか息苦しさを覚えた。 しかし、その後、生まれ育った東京と福岡を行き来し、置かれている状況を客観視することで、彼の最大の魅力である「テキトー」なバランス感覚を徐々に取り戻し、住まいを福岡に移すと、前作『5 SENCE』から1年8ヵ月ぶりとなる新作アルバム『夢から覚め。』を完成。研ぎ澄ませた五感を駆使して、音と言葉を巧みに乗りこな
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