コンセプチュアル・アートの創始はデュシャンに由来する。クールベ以来の絵画を「網膜的」と批判したデュシャンは、既製品の便器を逆さにして展示し、芸術の成立する条件を最小限の形式で示すことにした。作品物から美的な厳めしさを丁寧に排除し、単なる物(オブジェ)であらしめることによって、その美的な意味の空白に意味深長な疑念を抱かせ、観者のコンセプション(構想力)を喚起させたのだ。有名なあの便器には元々は花が添えられるはずだったが、それでは花の美しさに観者は低俗な美的関心を寄せてしまうだろうために、花を添えるコンセプト(意図)は放棄された。パイプを取り外して有用性を無くした何の変哲もない便器、このオブジェの性質についてある批評家は「まさに、つつがない(筒がない)」とくだらない冗談で評するが、的確ではある。マルジェラもまた1997年のコレクションではあたかも未完成で袖の付いていない服、袖に腕を通せない服を