すごいいい本だったのでみんな読めばいいと思います。 『多読術』というタイトルから、ありがちなノウハウ本を想像するのは誤り。読書と編集に関わりながら半世紀を生きてきた著者・松岡正剛さんの、読書という"営み"に対する濃密な思想がみっちりと詰まった一冊です。それだけでも読み物としてとても面白いですし、本読みを趣味とする者として感化されるところも非常に多くありました。 本を単なる情報と見るのではなく、「嗜好品」として見るだけでもなく、「本を読む」という行為自体を意識する視点が語られているのだと思います。自分の「本の読み方」がどれだけ固定化していたかを、読中何度も思い知らされました。読者に変化を及ぼす示唆がいっぱいです。 たとえば、「本を綺麗に保存するか/書き込んだり折り目付けたりするか」問題に関して。「本は装丁全体でひとつの作品なのだから、汚さずに大事にする」という人と、「本は情報の容れ物にすぎな